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MLB球団が歌手ビリー・ジョエルと“契約”。過去にはコメディアンや国民的歌手も

菊田康彦フリーランスライター
年齢を重ねても精力的にコンサート活動を続けているビリー・ジョエル(写真:Shutterstock/アフロ)

 メジャーリーグのフィラデルフィア・フィリーズが、名曲『ピアノマン』や『素顔のままで』などで有名な歌手のビリー・ジョエル(68歳)と“名誉契約”を結ぶことを発表した。ジョエルはこの夏、史上初めてチームの本拠地であるシチズンズバンク・パークにおいて、5年連続(通算7度目)のコンサートを開催するのだが、今回の契約はそれを称えてのものだという。

 ジョエルの「大ファン」を自認するマット・クレンタックGMが行った会見には、現役時代には読売ジャイアンツでもプレーしたゲイブ・キャプラー新監督が同席。同GMが契約書にサインし、キャプラー監督と共に背番号「5」に「JOEL」の名前が入ったユニフォームを披露する動画も、公開されている

コメディアンのW・フェレルは1日で10球団!

 異例とも思えるニュースだが、実はこうした芸能人との“契約”はメジャーリーグでは稀にある。2015年春にはコメディアンで俳優でもあるウィル・フェレル(当時47歳)が、がん患者支援のためのチャリティー企画で、アリゾナ州でキャンプを張る10球団と契約。オークランド・アスレチックスを皮切りに、次々にトレードされていく形でオープン戦が開催されている5球場を回り、10球団すべてのユニフォームで出場した。

 今から10年前の2008年のオープン戦では、やはりコメディアンで、俳優としても映画『恋人たちの予感』などに出演しているビリー・クリスタルが、60歳の誕生日を翌日に控えた3月13日にニューヨーク・ヤンキースと契約。ニューヨークで生まれ育ち、熱狂的なヤンキースファンとして知られるクリスタルは、当日に行われたピッツバーグ・パイレーツとのオープン戦に出場。背番号「60」、一番・DHで先発したものの空振り三振に終わり、1打席で退いた。この試合には、先ごろ日本の野球殿堂入りを果たし、当時はヤンキースに在籍していた松井秀喜も出場している。

国民的カントリー歌手G・ブルックスはOP戦通算2安打

 この手の話で最も有名なのは、かつては米国で国民的な人気を誇ったカントリー歌手のガース・ブルックスかもしれない。彼は36歳だった1998年にサンディエゴ・パドレスとマイナー契約したのをはじめ、1999年パドレス、2000年ニューヨーク・メッツ、2004年カンザスシティ・ロイヤルズと、4度にわたって春季キャンプの招待選手として、メジャーリーグの球団と契約を結んだ。

 1998年のオープン戦は代走のみの出場だったが、翌1999年はシカゴ・ホワイトソックス戦で、左のエース格だったマイク・シロッカから初安打を記録。2004年にもヒットを打っている。もっとも安打はその2本のみで、オープン戦通算成績は42打数2安打(打率.048)というものだった。

 俳優のトム・セレックも、映画『ミスター・ベースボール』の撮影中だった1991年に、デトロイト・タイガースの名将スパーキー・アンダーソン監督の計らいで、オープン戦の打席に立ったことがある。また、『フィールド・オブ・ドリームス』など野球をテーマにした映画への出演も多いケビン・コスナーは、2002年にシアトル・マリナーズ傘下のマイナー球団の一員として、親球団であるマリナーズとの練習試合に出場。打ってはノーヒットに終わったものの、最後はマウンドに上がって、当時のマリナーズ監督だったルー・ピネラと対戦する機会を得た。

 1986年にシングル『ザ・ウェイ・イット・イズ』が全米NO・1になり、翌年のグラミー最優秀新人賞に輝いたブルース・ホーンズビー(当時はバンド名義)も、1997年にアナハイム(現ロサンゼルス)・エンゼルスのオープン戦に代走で出場している。これも後にオリックス・バファローズでも指揮を執った、テリー・コリンズ監督の計らいによるものだった。

 ジョエルの場合は彼らと違い、あくまでもコンサートのプロモーションという意味合いが強く、また公演が行われるのがシーズン真っ盛りの7月27日ということもあって、選手として試合に出場することはなさそうだ。意外だったのは、生粋のニューヨークっ子で大のヤンキースファンでもあるジョエルがフィリーズと契約するという事実だが、野球ファンであればそれがどの球団であれ、うれしいことに違いない。

フリーランスライター

静岡県出身。小学4年生の時にTVで観たヤクルト対巨人戦がきっかけで、ほとんど興味のなかった野球にハマり、翌年秋にワールドシリーズをTV観戦したのを機にメジャーリーグの虜に。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身した。07年からスポーツナビに不定期でMLBなどのコラムを寄稿。04~08年は『スカパーMLBライブ』、16~17年は『スポナビライブMLB』に出演した。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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