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前回は先輩から“歴史的”一発、今度は後輩から…? 3年ぶり開幕スタメンに臨む燕・西浦

菊田康彦フリーランスライター
ヤクルトは明日、本拠地の神宮球場で2017年シーズンの開幕を迎える(ペイレスイメージズ/アフロ)

2017年のプロ野球は3月31日、全国の6球場で開幕する。現在、セ・リーグは2シーズン前の上位3チームに開幕戦の主催権が与えられるようになっており、2015年にリーグ王者となった東京ヤクルトスワローズは、3年ぶりに本拠地・神宮球場で開幕を迎える。

3年前は史上初の「開幕戦プロ初打席初球本塁打」

そのヤクルトでウラディミール・バレンティンとともに、3年ぶりに開幕スタメンに名を連ねるのが、西浦直亨(25歳)である。ヤクルトが前回、神宮で開幕戦を行った2014年、西浦は法政大からドラフト2位で入団したばかりのルーキーながら、八番・遊撃でスタメンに抜てきされている。1回裏、1死一、三塁の場面でいきなり回ってきたプロ初打席。横浜DeNAベイスターズの先発で、大学の先輩にあたる三嶋一輝の初球を思い切りよく引っぱたくと、打球はレフトスタンドに飛び込む3ランとなった。

開幕戦プロ初打席初球本塁打──。プロ野球史上でも過去に例のない歴史的な一発に、「いいスタートが切れたので、勢いに乗っていきたい」と顔をほころばせた西浦だが、勢いに乗ることはできなかった。その後はバットからなかなか快音が聞かれず、4月26日に二軍落ち。プロ1年目は14試合の出場で打率.156、本塁打も開幕戦の1本だけに終わった。

「つかみは良かったんですけど、その後が続かなかったんで……。プロって一発目だけじゃダメなんだなってわかりました。そんなに簡単にはいかないなって」

西浦自身そう振り返るとおり、一軍に定着するのは簡単なことではなかった。それでも、昨年はプロ3年目にしてスタメン62試合(遊撃38試合、三塁24試合)を含む自己最多の72試合に出場。正遊撃手の大引啓次、正三塁手の川端慎吾ら、故障者の穴を埋めながら打率.255、いずれも自己最多の7本塁打、28打点、9盗塁をマークした。これでようやくレギュラーへの挑戦権を得たといっていい。

前回は大学の先輩・三嶋、今度は後輩の石田と対戦

「やっぱり自分が圧倒して大引さんを超えていかないと、ショートのポジションでは試合に出られないと思う。まずはショートでレギュラーを獲りたい」

昨年の契約更改の際にそう話していたように、今シーズンは大学の7年先輩にあたる大引に、レギュラー争いを挑むつもりだった。ところが春季キャンプ中に、川端が椎間板ヘルニアで離脱。正三塁手不在の状態となり、オープン戦後半は三塁でスタメン起用され続けた西浦が、明日の開幕戦でも最初から三塁を守ることになった。

奇しくも今年の開幕戦は、舞台が3年前と同じ神宮球場なら、相手も同じベイスターズ。前回は法政大の1年先輩の三嶋が先発したが、今度は1学年後輩の石田健大が先発マウンドに上がる。オープン戦でも2本のアーチを架けたとはいえ、ホームランにこだわるつもりはないだろうが、同じ舞台で、今度は後輩を相手にどんなバッティングを見せるのか。そして、今度こそ“つかみ”だけに終わらず、勢いに乗っていけるのか──。

川端は3月28日にファームで実戦に復帰しており、早ければ4月1日の開幕第2戦から一軍に合流する可能性もある。そうなれば西浦にも、どれだけチャンスが与えられるかはわからない。レギュラー獲り、いやプロの世界での生き残りをかけ、まずは明日の開幕戦でしっかりと結果を残すしかない。

フリーランスライター

静岡県出身。小学4年生の時にTVで観たヤクルト対巨人戦がきっかけで、ほとんど興味のなかった野球にハマり、翌年秋にワールドシリーズをTV観戦したのを機にメジャーリーグの虜に。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身した。07年からスポーツナビに不定期でMLBなどのコラムを寄稿。04~08年は『スカパーMLBライブ』、16~17年は『スポナビライブMLB』に出演した。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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