マーくん渡米! 史上2人目の「日米連続王座」なるか
東北楽天ゴールデンイーグルスからポスティングでメジャーリーグ(MLB)のニューヨーク・ヤンキースに移籍した「マーくん」こと田中将大投手が、間もなく始まる春季キャンプに向けて渡米。日本時間の12日午前3時過ぎから本拠地のヤンキー・スタジアムで入団会見を行いました。
「ワールドシリーズで勝つことです」
メジャーリーグ公式サイトでも生中継されていたこの会見で、ヤンキースでの一番の目標を問われた田中投手は、そう力強く答えました。新たな黄金時代を築いた1990年代後半から19年間で17度のプレーオフ進出を果たし、ワールドチャンピオン(以降、便宜上「世界一」も併用します)に5度輝いたヤンキースにとって、地区3位に終わってプレーオフにも届かなかった昨年は屈辱のシーズンでした。それだけに今年にかける意気込みには並々ならぬものがあり、田中投手に提示した7年総額1億5500万ドル(約160億円)という破格の契約もその表れのひとつ。田中投手もそれをよく分かってるのでしょう。
「日米連続王座」は過去に岡島だけ
1998年の伊良部秀輝投手(ヤンキース、ただしシリーズ登板はなし)を皮切りに、2005年の井口資仁選手(シカゴ・ホワイトソックス、現千葉ロッテマリーンズ)、2006年の田口壮選手(セントルイス・カージナルス、2008年にフィラデルフィア・フィリーズでも世界一)、2007年の松坂大輔投手(ボストン・レッドソックス、現ニューヨーク・メッツ)と岡島秀樹投手(レッドソックス、現福岡ソフトバンクホークス)、2009年の松井秀喜選手(ヤンキース)、そして昨年の上原浩治、田澤純一両投手(ともにレッドソックス)と、これまでメジャーリーグで世界一に輝いた日本人選手は8人います。そのうち伊良部投手と、日本からプロを経ずに渡米した田澤投手以外は、すべて日本一を経験した後にメジャー入りしていますが、日本シリーズを制した翌年にワールドチャンピオンになった選手というと岡島投手しかいません。
2006年の開幕直前に読売ジャイアンツから北海道日本ハムファイターズにトレードされた岡島投手は、新天地で中継ぎとして55試合に登板して2勝2敗4セーブ、防御率2.14の成績を残し、日本シリーズでも4試合に投げるなど日本ハムの44年ぶりの日本一に貢献。翌年はフリーエージェント(FA)でレッドソックス入りすると、66試合の登板で3勝2敗5セーブ、防御率2.22と、ここでもセットアッパーとしてチームのワールドシリーズ制覇を支えました。つまり、田中投手が今年ヤンキースでいきなり世界一になれば、この岡島投手に次いで史上2人目の快挙ということになります。
もちろん、投手としては総額でメジャーリーグ史上5番目の高額となる超大型契約を結んだ田中投手だけに、個人としての成績も求められます。2009年に7年総額1億6100万ドルでヤンキース入りしたCC・サバシア投手は、移籍1年目に19勝を挙げて最多勝を獲得し、ポストシーズンでも3勝してチームを9年ぶりの世界一に牽引しました。8年連続2ケタ勝利の実績を引っさげてFA移籍してきたサバシア投手と違い、田中投手はメジャーではまだ実績ゼロですが、契約の大きさを考えるとこのぐらいの活躍を期待されていると言ってもけっして過言ではないでしょう。
「出来高」は一切なし
ちなみにその破格の年俸のみならず、3万5000ドル(約360万円)の引越し費用や年間10万ドル(約1020万円)の住居手当、さらに年間8万5000ドル(約870万円)の通訳報酬といった付帯条件も注目された田中投手ですが、いわゆる「出来高払い」や賞に対するボーナスなどは一切つきません。これはヤンキースがこうしたインセンティブを契約に盛り込むことを原則的に認めていないからです。
2004年にトレードで移籍してきたアレックス・ロドリゲス選手(禁止薬物の使用により今季は全試合出場停止)は、2008年にヤンキースと新たに10年契約を結ぶまでは「MVP受賞で50万ドル」「MVP投票2~5位で20万ドル、同6~10位で5万ドル」などのボーナスが盛り込まれていましたが、これは移籍に伴ってそれまで在籍していたレンジャーズとの契約を引き継いだたためです。現在のロドリゲス選手の契約には、こうしたボーナスは含まれていません(ただし、球団との「マーケティング協定」により、通算本塁打4位までの記録に並ぶたび、そしてバリー・ボンズが持つ最多記録762本を抜いた場合、それぞれ6万ドルが支払われることになっています)。
ニューヨークでの会見を終えた田中投手は、既にキャンプ地のフロリダ州タンパに移動しているとのこと。投手陣の集合日になっている現地時間15日には、ついにメジャーリーガーとしての第一歩を歩み始めます。