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キュラソー、行ってみたらこんな島だった! ~バレンティンの故郷訪問記~

菊田康彦フリーランスライター
(courtesy of the Curacao Tourism Board)

今や「でっきるかなぁ~?」のCMでもおなじみの東京ヤクルトスワローズのウラディミール・バレンティン選手。そのバレンティン選手や、東北楽天ゴールデンイーグルスのアンドリュー・ジョーンズ選手(AJ)の故郷であるキュラソーを、駆け足で訪れてから早1カ月。カリブ海に浮かぶ、この人口約15万人の島国はいったいどんな場所だったのか、改めて振り返ってみたいと思います。

かつてはオランダ領アンティル諸島の一部、現在は単独でオランダ王国の構成国になっているキュラソーですが、地理的には南米大陸北部のベネズエラから60キロほどの沖合にあり、まさに「ラテンアメリカ」です。気候的にはいわば常夏で、筆者が訪れた期間も日中は連日30度を超える「夏日」。それでいて朝晩は少し気温が下がって過ごしやすく、夏が大好きで寒がりの筆者にとっては快適そのもの。部屋にいても冷房は要らないくらいでした。

印象的な「青さ」と「パステルカラー」

白い砂浜の向こうに青々と広がるキレイな海はこの島の「売り」の一つ
白い砂浜の向こうに青々と広がるキレイな海はこの島の「売り」の一つ

現地で印象的だったのは「青さ」です。毎朝、滞在していたホテルのカーテンを開けるたびに目に飛び込んでくる空の「青さ」、そして海の「青さ」。あの鮮やかな色は、今も鮮明に脳裏に焼き付けられています。特に白い砂浜の向こうに見渡す限り青々と広がっているキレイな海はこの島の「売り」の一つで、スキューバダイビングやシュノーケリングを楽しむためにやってくる観光客も多いそうです。そこで筆者も仕事の合間を縫って、ホテルに面した海で十数年ぶり(!)に泳いでみました。時間的に夜の7時近かったこともあり、海の色はそこまで堪能できませんでしたが、久しぶりの海は実に気持ちよかった! 「朝晩は少し気温が下がる」と言ってもそれは昼間と比べての話で、その時間帯でも水に浸かっている間はもちろんのこと、海から上がっても肌寒さを感じるようなことはありませんでした。

もう一つ、この島を代表する色が「パステルカラー」です。首都ウィレムスタットの中心地は「歴史地区」としてユネスコの世界遺産に登録されており、プンダと呼ばれる地区に立ち並ぶパステルカラーに彩られたアンティーク風の建物は、この島のランドマークにもなっています。そのキュートな町並みには、歩いているだけでどことなくウキウキさせられますが、そのせいかすれ違う人すれ違う人、誰もが幸せそうな表情をしていたのが忘れられません。

誰も彼もがフレンドリーな島

それにこの島の人々は、誰も彼もがとにかくフレンドリーなのです。たとえばどこかの店員さんだったり、食事の席で隣り合わせになった人だったり、あるいは道端ですれ違う人にしても、みんな実に気さくなんですね。もちろんアメリカなどでもフレンドリーな人は多いですが、それでも気難しそうな人や不機嫌そうな人もよく見かけます(ファストフードの店員さんなどでも、そういう人はいますから…)。キュラソーにはオランダ系の白人やアフリカ系の黒人だけでなくさまざまな民族が住んでいるそうですが、人種を問わず遭遇した人がほぼ100%フレンドリーな国というのは初めてでした。

久しぶりの故郷でくつろいだ様子のバレンティン
久しぶりの故郷でくつろいだ様子のバレンティン

また、時間の流れも実にゆったりとしていて、およそ「世知辛い」という言葉とは無縁に思えました。みんな気さくなだけでなく、とても穏やかなのです。先述のAJにしても、メジャーリーグで通算434本塁打を放ってホームラン王や打点王にもなった選手ですからスターらしいオーラはあるのですが、話してみると本当に穏やか。ファンに対しても、尊大な態度を取るようなところは少しも見られませんでした。バレンティン選手などは、時折気を抜いたようなプレーで批判されることがありますが、こういう土地で生まれ育ったらある程度のんびりというか、おおらかな性格になるのも仕方ないのかなと思いましたね。

ちなみにキュラソー観光局(CTB)のステファン・ポマーリオ氏によると「犯罪がないと言ったらウソになるが発生率は低い」とのことで、島全体の治安も良いようです。実際、短い滞在ではありましたが、パトカーのサイレンを聞くようなこともありませんでした。ただし、それもほぼ種子島と同じくらいの面積で、人口もおよそ15万人という規模なればこそかもしれません。

「人が多くなりすぎると、それに連れて問題も多くなる──」

かつてそんな歌があったと思いますが、おそらくはそういうことなのでしょう。

心残り(?)は「イグアナ料理」

今回の訪問で残念だったのは、バレンティン選手お薦めのイグアナ料理が食べられなかったこと。ポマーリオ氏によると、現在イグアナ料理を提供しているお店は島に1軒しかなく、それもランチのみだそうです。うまく時間が合えば・・・と思っていたのですが、これは次回のお楽しみに取っておくことにします。日本から米国経由でトータルおよそ24時間の移動は決して楽ではないですが、それでも機会があればぜひまた訪れてみたいと思う島でした。

ということで、今回は肝心の野球にはほとんど触れていませんが、キュラソーの野球事情についてはコラムとしてスポーツナビに寄稿していますので、よろしければそちらもご覧ください。

バレンティン、AJを生んだ島国の秘密 なぜキュラソーからHR王が誕生したのか

最後になりますが、今回の訪問でお世話になったポマーリオ氏をはじめ、CTBの皆さんには心から感謝したいと思います。Danki(現地語で「ありがとう」)!

フリーランスライター

静岡県出身。小学4年生の時にTVで観たヤクルト対巨人戦がきっかけで、ほとんど興味のなかった野球にハマり、翌年秋にワールドシリーズをTV観戦したのを機にメジャーリーグの虜に。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身した。07年からスポーツナビに不定期でMLBなどのコラムを寄稿。04~08年は『スカパーMLBライブ』、16~17年は『スポナビライブMLB』に出演した。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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