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三冠王獲得がさらに現実味?!今季飛躍的に改善している大谷翔平の三振率と空振り率

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
いよいよ打撃好調状態に入った感がある大谷翔平選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【いよいよ打撃好調状態に入った大谷翔平選手】

 ドジャースの大谷翔平選手が現地時間4月7日のカブス戦に先発出場し、雨天による2時間51分の中断をものともせず、試合再開後の2打席で三塁打、二塁打を放ち4試合連続でマルチ安打を記録している。

 同試合を中継したスポーツネットLAで解説を務めたオーレル・ハーシハイザー氏も「正式に(大谷選手のバッティングが)ホットになった」と、大谷選手が打撃好調状態に入ったことを認める発言をしている。

 この日の長打2本で大谷選手のOPS(長打率+出塁率)は通常モードの.944まで上昇(大谷選手の通算OPSは.923)。これでムーキー・ベッツ選手(1.359)とフレディ・フリーマン選手(.924)とともに、MLB最強と謳われる“ビッグ3”がいよいよ本領発揮する状況が整った。

 ちなみにここまでドジャースは12試合を戦い、すべての試合で1番ベッツ選手、2番大谷選手、3番フリーマン選手が固定される中、まだ初回に3人が3者凡退に終わったことは一度もない。果たしてこの記録がどこまで続くのかも興味深いところだ。

【大谷選手のバッティングがデータ的に大きく変化】

 大谷選手が打撃好調状態に入ったのは、やはり4月3日のジャイアンツ戦で今シーズン初本塁打を放ったことが大きかったのではないだろうか。

 北米プロスポーツ史上最大の10年総額7億ドルでドジャース入りし、しかも今シーズンは打者に専念することになり、否応なしに本塁打を量産することが義務づけられる環境に置かれた。

 ところが開幕早々に元通訳のスキャンダルに巻き込まれ、精神的なショックは計り知れなかったと思う。そんな中でようやく生まれた本塁打だけに、試合後の大谷選手の表情は明らかに安堵に包まれていた。

 もちろん今後の本塁打量産に期待したいところだが、個人的に本塁打が打てなかったシーズン開幕当初から、大谷選手のバッティングにデータ上で明確な変化が生じていることを確認しており、今シーズンは本気で三冠王を狙えるのではと考えていた。

【三振率と空振り率が飛躍的に改善される】

 大谷選手が三冠王を狙う上で、最もネックになってくるのが打率だろう。

 本塁打は状態さえ維持できれば普通にタイトル争いに加われるだろうし、打点に関しても、MLB屈指の強力打線に支えられ走者を置いた場面での打席が増えると想定され、エンジェルス時代より容易に増やせそうだ。

 だが打率は、大谷選手本人が安打を量産しない限り率を上げることができないし、過去6年間で打率3割を超えたのは昨シーズンの1回だけという厳しい現実がある。

 ところが今シーズンの大谷選手は、これまで以上に打率を上げられそうなバッティングをしている。

 本欄で何度も取り上げている、各選手の詳細データを紹介しているMLB公式サイト「savant」によると、今シーズンの大谷選手は開幕からずっとK(三振)率とWHIFF(空振り)率が飛躍的に改善されているのだ。

【これまでMLB最低レベルだったが今季は平均超え】

 実はこれまで大谷選手のK率とWHIFF率は、どのシーズンもMLB平均をかなり下回っていたのをご存じだろうか。

 例えば最初のMVPを受賞した2021年シーズンを例にとると、K率は29.0でMLB全体の下位9%に含まれ、WHIFF率35.0も下位3%に属する状態だった。

 また初めて打率3割を突破した昨シーズンにしても、K率は23.9で下位35%に属し、WHIFF率も32.3で下位12%に入っている状態だった。

 ところが今シーズンの大谷選手は、ここまでK率19.6、WHIFF率22.9と、ともにMLB平均を上回り上位49%に属している。明らかな変化が見られるのだ。

【ドジャース解説者が「80%の完璧なスイング」と絶賛】

 この大谷選手のバッティングの変化を読み解くには、今シーズン初本塁打にその秘密が隠されているように思う。

 やや高めに浮いた速球(同サイトによると93.2mphのシンカー)を捉えた打球は、打った瞬間誰もが本塁打と分かる会心の当たりだった。打球速津105.6mph、打球角度32度と文句無しの「バレル打球(打球速度が95.0mph以上で打球角度が8~32度の打球)」だった。

 だが大谷選手のスイング自体は決して強振しているわけではなく、あまり力感を感じられないものだった。

 試合後に行われたスポーツネットLAの「ポストゲームショー」で解説を務めたドントレル・ウィリス氏は、この大谷選手のスイングを「(力加減)80%で振った完璧なスイングだった」と絶賛している。

 4月5日のカブス戦で放った第2号本塁打も、明らかにフルスイングではなかったし、前述の2本の長打に関してもフルスイングというよりもミートを重視したスイングのように見える。

 それを裏づけるかのように、K率とWHIFF率が飛躍的に改善されているのだ。こうしたデータを確認してしまえば、誰もが大谷選手の打率アップに期待してしまうだろう。

 まだまだシーズンは始まったばかりだが、密かに大谷選手の三冠王獲得に期待を寄せ始めている。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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