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新人王は確定的?!シーズン開幕前の各種予想オッズから見えてくる米国における山本由伸の現在地

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
韓国シリーズ第2戦の先発が決まった山本由伸投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【韓国シリーズ第2戦の登板が決まった山本由伸投手】

 3月20、21日の日程で、史上初めて韓国で公式戦を開催するMLBは現地時間3月11日、2試合に登板予定の先発投手を発表し、パドレスのダルビッシュ有投手が第1戦に、ドジャースの山本由伸投手が第2戦に先発することが決まった。

 山本投手はMLBデビュー戦に備え、韓国遠征前にキャンプ地でもう1試合オープン戦に登板予定だが、これが山本投手にとってオープン戦3試合目の登板となる。前回の登板で59球を投げており、今度の登板では70~80球程度の球数に抑えられることが予想される。

 MLBでは先発投手に球数とイニング数を増やしながら最低4試合程度オープン戦に投げさせ、シーズン開幕に備えさせるのが通例となっている。それを考えると、公式戦とはいえ韓国シリーズの登板は、山本投手にとって米国に戻ってからの本格的なシーズン開幕に向けた最終調整の意味合いが強いように思う。

【シーズン開幕前から山本投手への評価・期待は上々】

 MLB未経験ながら投手として史上最高額の12年総額3億2500万ドルの大型契約でドジャース入りした山本投手は、チームメイトになった大谷翔平選手とともに、否応無しにスプリングトレーニングから注目を集め続けた。

 だがすべての選手が調整段階にあるオープン戦の投球内容だけで、山本投手の今後を推し量るのは不可能だし、今後登板を重ねる中で各チームの山本投手に対するスカウティング活動が活発化していくことになる。山本投手がどれほどMLBで活躍できるのかを判断するのは、もうしばらく時間を要することになるだろう。

 ただ現時点における米国内での山本投手への評価及び期待は、相当に高まっているのは確かだ。それを確認する指標として、今回は各種予想オッズを紹介してみたい。

【新人王レースではナ・リーグでダントツの1位予想】

 まず新人王レースに関してだが、各社の予想オッズでは他の追随を許さない存在になっている。

 5社の予想オッズを総括して紹介している「SPORTSBOOK REVIEW」の最新版(3月11日更新)によれば、ナ・リーグの新人王争いでは、山本投手が完全に一歩抜きんでた存在になっている。

 5社の山本投手に関する予想オッズは+150~+175(数値が低ければ低いほど本命ということになる)で推移しているが、2番人気となっているジャイアンツのイ・ジョンフ選手でも+400~+700と、大きく引き離されている状況だ。

 ちなみにア・リーグの予想オッズを見てみると、オリオールズのジャクソン・ホリデー選手、レンジャーズのエバン・カーター選手、同じくレンジャーズのワイアット・ラングフォード選手が+250~+600の中で三つ巴の様相を呈している。

 こうした状況を踏まえても、山本投手の圧倒的な人気ぶりが理解できると思う。

【サイヤング賞レースでもナ・リーグで4番人気に】

 新人王レースに限ったことではない。サイヤング賞レースにおいても、山本投手の人気は相当に高い。

前述サイトのサイヤング賞の予想オッズ一覧(3月5日更新)をチェックしてみると、ナ・リーグでは、ブレーブスのスペンサー・ストライダー投手、フィリーズのザック・ウィーラー投手が+500~+1000の中でトップ2を形成。その後にジャイアンツのローガン・ウェブ投手(+900~+1200)と山本投手(+1000~+1300)が続いている状況だ。

 それら以外ではダイヤモンドバックスのザック・ギャレン投手(+1200~+1400)、ブレーブスのマックス・フリード投手(+1200~+1400)、ドジャースのタイラー・グラスナウ投手(+1500~+2000)らも名を連ねている。

 ちなみに昨シーズンのサイヤング勝を受賞したブレイク・スネル投手の同シーズン開幕前の予想オッズは+3500だった。また2021年の同賞受賞者、コービン・バーンズ投手で+3500、2018年の同賞受賞者、ジェイコブ・デグロム投手は+2500と、トップ人気ではないながらもサイヤング賞の獲得に成功している。

 つまり山本投手の+1000~+1300の予想オッズは決して低いものではなく、むしろMLB未経験投手に対し破格の人気が集まっていると考えるべきだ。

 こうしたシーズン開幕の予想オッズから紐解けることは、米国において現在の山本投手は、1981年のフェルナンド・バレンズエラ投手以来となる史上2人目の新人王&サイヤング賞のダブル受賞者になり得る投手だと考えられているわけだ。

 今後シーズンが開幕して山本投手が登板を積み重ねていく中で、この予想オッズがどんな変化をしていくのかにも注目してみたいところだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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