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ドジャース担当解説者が指摘する山本由伸の投球に垣間見られた気になるポイント

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
レンジャーズ戦で素晴らしい投球を披露した山本由伸投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【上々のMLBデビューを飾った山本投手】

 MLBでの実績が皆無にもかかわらず、投手として史上最高額の12年総額3億2500万ドルでドジャース入りした山本由伸投手が、現地時間2月28日のレンジャーズ戦で実戦初登板に臨み、2回を投げ1安打無失点3奪三振を記録する上々のMLBデビューを飾った。

 MLB公式サイトが早速「花形スターのオープン戦デビューで完璧に近かったヤマモト」というタイトルで報じているように、米国でも山本投手の投球に称賛が送られている。

 昨年ワールドシリーズを制覇した強力打線を圧倒する投球を披露し、山本投手に対する注目と期待が今後さらに高まっていくことになりそうだ。

【試合中にドジャース解説者が気づいたこと】

 山本投手のデビュー戦を中継していた「スポーツネットLA」の放送ブースでも、オリックス時代の輝かしい戦績を紹介するとともに、驚きと称賛を繰り返し続けた。

 少し例を挙げると、「デーブ・ロバーツが語っていたElectric Fastball(わくわくさせられる速球)だ」、「投球フォームがまったく変わらない」、「あのフォームだと多くの盗塁を与えることはないだろう」、「カーブは12時から6時(真っ直ぐ)に落ちる」、「2種類のスプリットを使い分けているようだ」、「次から次へとストライクを投げ続けることができる」──といったところだ。

 だが同局で解説を務めているリック・マンデイ氏が、先頭打者のマーカス・セミエン選手と対峙していた際に、多少気になる発言をしている。

 「あることに気づいたのだが、投球ポジションに入り捕手のサインを確認する際に、センターカメラからグローブ(の中)が見えている。先ほどスプリットを投げるのが分かっていた」

【映像によるサイン盗みに厳格になったMLB】

 マンデイ氏が指摘しているように、捕手のサインを確認するとき山本投手は顔とほぼ同じ高さにグローブを構えるため、センターカメラからグローブの中が確認できる状態になっていた。ボールを挟むようにして投げるスプリットなら、センターカメラの映像でも指の動きが確認できたようだ。

 ただマンデイ氏がさらに指摘していることだが、アストロズによるサイン盗み騒動以来、MLBでは映像を映し出せる電子機器のベンチへの持ち込みは禁止されているし、ベンチ裏でサインを確認しそれを伝達する行為も禁止されている。

 また球場によってセンターカメラの位置が変わるので、すべての球場でグローブの中を確認できるか定かではないので、これが山本投手にとってどれだけ影響を及ぼすのか判断しにくい面がある。

【今もサイン盗みを警戒する各チーム】

 それでも理解しておいてほしいのは、MLBがサイン盗みに厳格な姿勢を見せる一方で、今も各チームはサイン盗みを相当に警戒しているという点だ。

 例えば2022年のエンジェルスでは、大谷翔平選手をはじめとする多くの投手たちが二塁に走者を置いた場面になると、サイン交換をピッチコムに切り換える対策をとっていた。

 また大谷選手自身も、2018年のデビュー当時から構えるグローブの位置を変更し、後方からグローブの中が見えないような工夫をしている。それらの行為は、まさにサイン盗みを警戒しているからに他ならない。

 繰り返しになるが、マンデイ氏の指摘したことが、山本投手の投球に明確な影響を及ぼすのかまでは分からない。ただMLB1年目のシーズン開幕を迎えるまでに、少しでも不安要素は取り除いておきたいところだろう。

 ドジャースは今後、何らかの対策を講じていくことになるのだろうか。そんな意味からも、次回の山本投手の登板に注目していきたい。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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