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「野球が最優先事項になったことはない」チーム合流初日から早くも物議を醸すアンソニー・レンドンの危うさ

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
チーム合流初日から物議を醸す発言をしているアンソニー・レンドン選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【野手組の集合日を迎えたエンジェルス】

 現地時間2月19日は、エンジェルスにとって野手組の集合日だった。いよいよ20日から本格的なスプリングトレーニングを迎えようとしている。

 この日はマイク・トラウト選手ら主力組がチームに合流したため、メディア・セッションが行われたようだが、今オフに自らの発言で騒動を起こしていたアンソニー・レンドン選手もセッションに登場し、早くもエンジェルス・ファンを失望させるような発言を行っている。

 2019年オフに7年総額2億4500万ドルの大型契約を結びエンジェルスに移籍して以来、毎年のように負傷を繰り返し、過去4年間で200試合の出場に止まっているレンドン選手に対し批判の声が挙がったりもしたが、今回の発言が新たな騒動の火種になってしまう可能性を秘めている。

【レンドン選手「野球が最優先事項になったことはない」】

 レンドン選手は今オフにポッドキャスト番組に出場し、レギュラーシーズンを短縮すべきだと発言し物議を醸していた。またこの発言を受け、ナショナルズ時代のチームメイトだったジョナサン・パペルボン氏が反応し、「文字通り彼は野球を嫌っている」とX上に投稿し、騒動に発展していた。

 こうした背景があったこともあり、メディア・セッションで野球に対する熱意について尋ねられたレンドン選手は「(2011年に)ドラフト指名されてから熱意はずっと変わっていない。試合に臨む姿勢もずっと同じだ」とする一方で、「経歴を重ねながら結婚し、4人の子どもを持つ中で、自分の優先順位は昔とは違ってきている」と話し、さらに「野球が自分にとって最優先事項になったことはない。これは仕事であり、生計を立てるためにしている。自分の家族や信仰を超えることはない」と答えている。

 レンドン選手の話を総合すると、野球を「仕事としての優先事項の1つ」だとしているが、それ以上の存在ではないと考えているようだ。つまり野球が好きではないとする前述のパペルボン氏の投稿内容を、暗に認める発言だと捉えられかねないものだ。

 この質疑応答についてMLB公式サイトが動画付きで記事を公開しているので、気になる方はぜひチェックしてほしい。

【気になるチームメイトに与える影響】

 またレンドン選手は「自分が家族を最優先にするタイプの人間だと理解したいのなら、自分はそれで構わない。彼らは自分を理解していないし、表面的な部分しか知らない。人それぞれに意見があるだろうし。すべての人を幸せにすることはできない」と話し、周囲の反応に意を介さない姿勢を示している。

 今回のレンドン選手の発言を受け、ロン・ワントン監督は「何が重要なのかと聞かれ、家族と信仰だと答えただけ。野球を軽視するとは発言していない」と擁護している。またMLBでは、シーズン中でも夫人の出産に立ち会える等のルールがあるほど、皆が家族を優先する文化が確立されているのも確かなことだ。だがエンジェルス・ファンが、レンドン選手の発言をポジティブに受け入れるとは考えにくい。

 レンドン選手は以前から、独特の感性の持ち主だと言われてきた。メディアとも一定の距離を置いており、彼の個性や性格が世間で正しく認識されているか難しい部分もある。

 ただ2019年にワールドシリーズを制覇し、内側でレンドン選手と接してきた元チームメイトから前述のような投稿をされてしまうことを考えると、チームメイトとの結束や和を重要視しているタイプではなさそうだ。

 大谷翔平選手を失いエンジェルスは新たなスタートを切ろうしている矢先に、主力選手の1人であるレンドン選手の今回の発言は、チームメイトにどのような影響を及ぼすことになるのか気になるところだ。

 スプリングトレーニングから不安含みのスタートになってしまったように思えて仕方がない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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