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大谷効果に期待?!今やドジャースしか達成できない球団史上初の観客動員数400万人という金字塔

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
大谷翔平選手のボブルヘッド人形配布試合チケットが高騰化している人気ぶりだ(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【今シーズンのドジャースは何勝できるのか?】

 大谷翔平選手と山本由伸投手をはじめとする今オフの大型補強で、これまで以上に注目を集めているドジャースだが、まさに選手層の厚さは球界屈指(中には球界随一との声もある)といっていい。ドジャースと再契約し同一チームで17年目のシーズンを迎えるクレイトン・カーショー投手が「これまででベストな布陣だと思う」と話している通りだ。

 過去11年間で10度の地区優勝を飾り、2017年以降は新型コロナウィルスによる短縮シーズンだった2020年を除くと、2018年以外はすべてシーズン100勝を達成している常勝軍団が、今オフに更なる進化を遂げたのだ。どうしても人々の関心は、今シーズンのドジャースが何勝を挙げ、そしてワールドシリーズを制覇できるのかに向いているように思う。

 ただ米国では「Baseball Prospectus」のように30チーム中最多の102勝(正確には101.8)すると予想するところもあれば、「Fan Graphs」のようにブレーブス(97勝)を下回る92勝だと予想するところもあるように、評価は一定していない。

 あくまで個人的ではあるが、2022年に1906年のカブスと2001年のマリナーズが樹立した年間最多勝記録116にあと5に迫る勝ち星を重ねていただけに、今シーズンのドジャースにも記録更新を狙えるような快進撃を期待している。

【観客動員数で9年連続トップを誇る人気チーム】

 ご承知の方も多いとは思うが、MLB屈指の常勝軍団として君臨する現在のドジャースは、その人気ぶりにおいても球界随一を誇っている。

 例えば年間観客動員数では、他のチームが減少傾向にある中(2023年はピッチクロックなどのルール変更があった影響か30チーム中26チームが前年比増となっている)、ドジャースは無観客試合で実施した2020年以外、2013年から9年連続でMLBトップであり続けている。

 しかもシーズン途中まで入場制限をしていた2021年を除くと、2013年以降はすべてのシーズンで年間370万人をクリアしており、現在MLBで最もファンを集められるチームといっても過言ではない。

 そんな人気チームが今オフの大型補強で、チームへの注目をさらに集めているのだから、今シーズンのドジャー・スタジアムにはどれほどのファンが集まるのだろうか。この辺についても個人的な関心事になっている。

【まだ年間400万人を達成したことがないドジャース】

 現在MLB随一の人気チームとはいえ、まだドジャースが達成できていない金字塔があるのをご存じだろうか。

 それは、観客動員数400万人超えだ。これまでドジャースの年間観客動員記録は2019年に樹立した397万4309人で、あと一歩のところで届いていない。

 これまでMLBでは、年間400万人をクリアしたチームが4チーム存在している。1993年のロッキーズ(このシーズンは現在のクアーズ・フィールドではなく、NFLブロンコスのマイルハイ・スタジアムを使用)、1991~1993年のブルージェイズ、2005~08年のヤンキース、2008年のメッツだ。

 ロッキーズの場合は球団創設1年目だったことが影響し、ブルージェイズとヤンキースの場合は当時チームが黄金期を迎えていたことが観客動員に繋がっていると考えられる。またメッツの場合は、2008年前後で多数のスターFA選手たちを獲得していた時期だった。

 ちなみにホーム試合81試合で年間400万人を突破するためには、1試合当たりほぼ5万人ペースを維持しなければならないわけだが、1990年代中盤から始まったボールパーク型新球場の建設ラッシュ以降、収容人員が5万人を超える球場はドジャー・スタジアムしか残っておらず(一応オークランド・コロシアムも5万人以上収容できるが、基本的にすべての席を開放していないので除外)、現在のMLBで年間400万人を達成できるチームはドジャースしか残っていない。

【大谷効果で平日開催試合の集客力がアップ?!】

 年間400万人を達成するのは、いかなドジャースでも容易なことではない。昨シーズンの観客動員数は383万7079人(1試合平均4万7371人)だったことを考えると、約3000人近い上乗せが必要になってくる。

 しかも今シーズンは韓国での開幕シリーズ2試合の内1試合分がドジャースのホーム試合扱いとなるため、ここで2万人弱の観客動員しか見込めない。金字塔を樹立するには、残り80試合でどれだけファンを集められるかがカギを握ることになる。

 ただ集客面においても、すでに大谷効果が現れているのだ。すでに日本でも報じられていたと思うが、大谷選手のボブルヘッド人形が無料配布される試合のチケットが高値で取引されている。

 当該試合は5月16日のレッズ戦なのだが、現時点(2月12日現在)でMLB公式サイトをチェックしても、最低価格は125ドルと表示されるほどの人気ぶりだ。

 他の人気選手と比較してみても、ムーキー・ベッツ選手のボブルヘッド人形が配布される5月21日のダイヤモンドバックス戦で最低価格は51ドル、山本投手のボブルヘッド人形が配布される6月13日のレンジャーズ戦では61ドルで取引されている状況だ。

 ちなみに今シーズンのドジャースの最低チケット販売価格は20ドルなので、大谷選手のみならず、山本投手やベッツ選手もなかなかの高価格で取引されているのが理解できる。

 また大谷選手の場合5月16日のみならず、8月28日のオリオールズ戦でもボブルヘッド人形の配布が予定されているのだが、実はこの3選手のボブルヘッド人形配布日はすべて平日の試合に設定されている。これこそがドジャースの営業戦略だ。

 昨シーズンのドジャースは5試合だけ3万人台の集客に止まっているのだが、いずれも平日の試合(月曜2回と水曜3回)。逆に5万人を突破した試合が26試合あったが、平日は6試合のみだった。

 つまりドジャースは、大谷選手らスター選手関連のグッズ配布を平日の試合に設定することで、より安定的な集客を目指そうとしているのだ。そしてチケットの販売状況をみれば理解できるように、その効果はしっかり出ているわけだ。

 大谷効果を得たドジャースは、球団史上初の観客動員数400万人に到達することができるだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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