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2年後の二刀流完全復活を後押ししてくれそうなロバーツ監督の徹底的なシーズンマネージメント

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
ドジャース監督就任以来毎年ポストシーズン進出を果たしているデーブ・ロバーツ監督(写真:Splash/アフロ)

【キーマン条項にこだわった大谷選手の真意】

 ドジャースは現地時間12月14日、契約総額としては全スポーツ界最大の10年7億ドルでの契約合意を発表していた大谷翔平選手の入団会見を実施し、大谷選手が写真ではなく初めてドジャースのユニフォームに袖を通す姿を披露した。

 この入団会見は日本でも多くの放送局が生中継しており、多くの日本人が大谷選手の姿を見守り続けたはずだ。

 大谷選手の代理人であるネズ・バレロ氏の戦略により、契約交渉期間中はすべて秘密裏に進行していたが、契約合意が発表されてからは契約内容の詳細が徐々に明らかになっていき、様々な付帯条項が盛り込まれていることが判明した。これについては、すでに日本でも報じられている通りだ。

 中でも、マーク・ウォルター筆頭オーナーもしくはアンドリュー・フリードマン編成担当社長のいずれかがチームを去ることになれば、そのシーズン終了後にオプトアウト(契約解除)できる「キーマン条項」が入っていたことに驚かれた方もいるのではないだろうか。

 大谷選手が会見で「ロサンゼルス・ドジャースに入団すると同時にメインの二方と契約するというかたちですし、そこが崩れるのであれば、この契約自体も崩れることになる」と説明しているように、過去11年間で10度の地区優勝を飾っている現在のドジャースを支える球団経営責任者と編成担当責任者を、大谷選手が重要視しているからに他ならない。

【常勝チームとしてシーズンマネージメントに徹する指揮官】

 ただ2025年から二刀流復活を目指す大谷選手にとって、彼の起用法を任されている存在は、2025年まで契約が残るデーブ・ロバーツ監督だ。そして彼こそが、大谷選手に常勝チームの戦術、起用法を納得させる人物でもある。

 大谷選手が会見冒頭で契約交渉にかかわった5人の名前を挙げ謝意を述べたが、その中にロバーツ監督の名前も含まれており、すでに起用法についても両者の間である程度情報共有できているのではないだろうか。

 2016年に就任して以来、一度もポストシーズン進出を逃していないロバーツ監督は過去の起用法から理解できるように、選手の個人記録以上にワールドシリーズ制覇という最終目標のため、明確なシーズンマネージメントを行うことで知られている。

【完全試合目前のカーショー投手を7回で交代させた過去】

 最も端的な例はチームプランに徹し、ノーヒットノーランもしくは完全試合を継続中の投手を何度も途中交代させている点だろう。

 直近では、2022年4月13日のツインズ戦だ。この日シーズン初登板となったクレイトン・カーショー投手は、立ち上がりからツインズ打線を圧倒。7回を投げ13奪三振を記録し、完全試合を続けていた。

 これまでノーヒットノーランを達成していたものの、完全試合を成し遂げたことのないカーショー投手の球数はわずか80球。まさに絶好のチャンスだと思われたが、ロバーツ監督は7回で交代させている。

 実はカーショー投手は前年のシーズン終盤で左腕を負傷し、ポストシーズンを含め長期離脱を余儀なくされていた。つまりこの日の登板がカーショー投手にとって復帰登板であり、それを考慮しての交代だった。

 試合後カーショー投手は「続投したかったが、もっと大きなビジョンがある。正しい判断だったと思う」と、ロバーツ監督の采配に納得している発言をしている。

 カーショー投手に止まらず、2016年4月8日のジャイアンツ戦に先発したロス・ストリップリング投手、2016年9月10日のマーリンズ戦に先発していたリッチ・ヒル投手、2018年5月4日のパドレス戦に先発していたウォーカー・ビューラー投手も全員ノーヒットノーランもしくは完全試合を続けながら、チームの判断で交代させられている。

 こうした交代についてロバーツ監督は、「まったく迷いがなかった」と断言しているのだ。

【明らかに大谷選手に無理をさせたエンジェルスの起用法】

 少し昨シーズンのエンジェルスに目を転じてほしい。

 史上初めて2度目の満票でMVPを獲得した大谷選手だったが、その活躍を象徴するシーンとして7月27日のタイガースとのダブルヘッダーが度々取り上げられている。だが冷静に考えると、このダブルヘッダーを境にして投手として疲労が目立つようになり、悪夢の右ヒジ内側側副靱帯損傷へと繋がっている。

 当時エンジェルスはまだポストシーズン進出の可能性を残している中(地区首位に6ゲーム差の3位)、第1戦はリリーフ投手を温存させたいという考えから自ら直訴して試合を投げ切り、マイク・トラウト選手とアンソニー・レンドン選手が戦線離脱する打線を支えるため第2戦も先発出場したのだ。

 大谷選手の勝ちたいという気持ちが全面的に出たことによる結果だったと思うが、彼の「大丈夫、いける」という言葉を信じたエンジェルス首脳陣のシーズンマネージメントの欠如とも捉えられるはずだ。

 エンジェルスとは比較にならない選手層を誇るドジャースに移籍し、大谷選手の個人的負担はかなり軽減することになる。ちょっと先の話ではあるが、さらにロバーツ監督の采配の下、ポストシーズンまで二刀流として活躍する大谷選手の姿を想像するだけでワクワクしないだろうか。

 とりあえず米メディアによると、ロバーツ監督は大谷選手の右ヒジの回復が順調に進めば、来シーズン終盤で左翼として起用したいプランを明らかにしたようだ。これも楽しみにしたいところだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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