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SNS上に投稿された1枚の画像から見えてくる大谷翔平が度々捕手打撃妨害を受ける理由

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
MLBダントツトップの5個の捕手打撃妨害を記録している大谷翔平選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【SNS上にデータ解析者が投稿した大谷選手の画像】

 SNS上でMLB投手を中心としたデータ解析などを投稿している「Codify Baseball」が現地時間5月13日、大谷翔平選手に関する興味深い画像を投稿している。

 まずはその画像をチェックしてほしい。同日に行われたガーディアンズ戦における大谷選手の打撃シーンだが、投稿でも解説されているように、ボールはベース上にあるにもかかわらず、大谷選手のバットはまだ身体からほとんど離れていない状態にある。

 この画像から、皆さんは大谷選手がどんな結果に終わったと予想されるだろうか。一般常識から考えれば、大谷選手はかなり振り遅れているように見えるのではないだろうか。

【画像の場面は左翼線に放った適時打二塁打だった】

 実は前述の投稿者はその正解も投稿しているのだが、この打席は大谷選手が3回の第2打席で左翼線に適時二塁打を放った場面なのだ。この時相手先発のカル・クアントリル投手が投げた球種は、94.1mph(約151.4km/h)のフォーシーム(いわゆる真っ直ぐ)だった。

 その速球がベース上に到達していたにもかかわらず、回りから見れば振り遅れだと思われるスイングから、大谷選手はフェンスに到達する見事なライナー打球を放っているというわけだ。

 つまり現在の大谷選手は、150km/hを超える真っ直ぐでもギリギリまでボールを見極めた上で、しっかりボールを捉えて長打にする技術を有しているということに他ならない。

 それは類い稀なバットコントロールとスイングスピードを兼ね備えているからこそ、大谷選手らごく一部の選手たちができる打撃技術なのだと思う。

【捕手目線から考える大谷選手の打撃スイング】

 ところで日本でも各所で報じられているように、5月12日のガーディアンズ戦にDHとして先発出場した大谷選手は、5回の第3打席でキャッチャー・インターフェアランス(捕手打撃妨害)でこの日2度目の出塁を果たしている。

 大谷選手にとって捕手打撃妨害で出塁するのは今シーズン5度目で、現時点でMLBダントツトップになっている(ちなみに2位は2個)。

 この要因については様々な意見があると思うし、大谷選手が常にバッターボックスの一番後ろに構えているのもその1つだと思う。だが今回はちょっと目先を変え、先ほど紹介した打撃スイングを捕手目線から考えてみたい。

 打者がほとんどスイングする動きを見せないまま、150km/hを超える真っ直ぐがほぼ捕球位置に到達しているとしたら、捕手はどのような心理状態にあるだろうか。打者は見逃したと予想して、捕球に専念しないだろうか。

 そしてその状況からいきなりバットが出てきたとしたら、キャッチャーは即座に対応するのは困難だし、バットを回避できずミットと接触してしまったとしても何ら不思議ではないだろう。

 あくまで想像の域でしかないが、そんな状況が大谷選手と相手キャッチャーとの間で繰り返されているため、度々捕手打撃妨害が起こってしまうのではないだろうか。

【日本人捕手を驚かせた日米野球のバリー・ボンズ選手】

 今回の大谷選手の打撃スイングを見て、日米野球に参加したバリー・ボンズ選手のことを思い出してしまった。

 筆者が現場取材していた2000年と2002年の日米野球のどちらかまでははっきり記憶していないが、NPBオールスター選出捕手がボンズ選手と対戦し、彼が見逃したと思っていたのにいきなりバットが出てきて特大本塁打を打たれ、度肝を抜かれたと話していたのを今でも記憶している。

 こうしたエピソードから想像されるのは、現在の大谷選手はMLB捕手たちにとっても、彼らの想像を超えるレベルでバットが出てくる打者だということではないだろうか。

 たった1枚の画像ではあるが、大谷選手の現在の打撃レベルとその進化を推測する上で素晴らしい資料ではないだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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