3人とも四球率がMLB平均以下なのに大谷翔平と千賀滉大ができていて藤浪晋太郎ができていないこと
【開幕から連敗スタートとなった藤浪投手】
アスレチックスの藤浪晋太郎投手が、現地時間4月8日のレイズ戦に今シーズン2度目の登板に臨み、4.1回を投げ3安打5失点を喫し敗戦投手になった。MLBデビューを飾ったエンジェルス戦も敗戦投手になっており、苦しい連敗スタートとなった。
前回は3回に集中打(二塁打1本を含む5安打)を浴びての早期降板となったが、今回は失点された4回に単打2本、そして途中交代した5回に打たれた単打1本の計3本だった。
試合後藤浪投手は米メディアに対し、「今回は打たれたというよりもフォアボールが絡んだ失点だったので、そこが勿体なかったですね。フォアボールがなければもう少ししっかり投げられたと思うので、そこですね」と話している。
【四球率は藤浪投手同様MLB平均以下の千賀投手と大谷選手】
藤浪投手が指摘するように、失点された場面は四球、もしくは死球で先頭打者を出してしまっており、今後の課題になりそうだ。
たった2試合の登板から確かな答えを導き出すのは困難なことだが、MLB公式サイトによれば、現時点での藤浪投手の四球率は20.0%で、MLB最低クラスに位置している。
もちろん今後修正が必要になってくるのは間違いないところだが、そこまで悲観視するべきではないと考えられる。
というのも、藤浪投手とは裏腹に連勝スタートを飾った千賀滉大投手の四球率は14.3%だし、今やエンジェルスの大黒柱になった大谷翔平選手の四球率も14.6%と、MLB平均からかなり劣っている状況だからだ。
ちなみに千賀投手に関しては、メッツと契約合意した当時から地元メディアから制球難が不安視されており、チームもこの四球率はある程度織り込み済みなのかもしれない。
にもかかわらず千賀投手は、チームの期待通り三振の山を築くとともに、防御率1.59と安定感溢れる投球を披露し、また大谷選手も登板2試合で7四球を与えながら防御率0.75と安定している。
【実は走者無しの場面で最も安定している藤浪投手】
それでは藤浪投手と千賀投手、大谷選手の差は何なのだろうか。
そこで下記の表をチェックしてほしい。それぞれ2試合の登板を終えた藤浪投手、千賀投手、大谷選手の走者無しの場面と走者を得点圏に置いた場面の投球データを表示したものだ(資料元:MLB公式サイト)。
如何だろう。藤浪投手は走者無しの場面においては、むしろ千賀投手、大谷選手よりも安定した投球を披露しているのに、得点圏に走者を置くとまったく別人になってしまっているのだ。
得点圏の場面で著しく四球が増えているわけではないのだが、明らかに被安打数が増えてしまっている。もちろん得点圏に走者を置いて安打を許してしまえば、適時打になる可能性が極めて高い。
一方で千賀投手や大谷選手は得点圏に走者を置いても極端に崩れることはなく、WHIP(1イニングあたりの平均被安打数+与四球数)も大きく変化していないのが理解できるだろう。
つまり藤浪投手が崩れる契機になっているのは、走者無しの場面で与えている四球ということになる。そしてセットポジションからの投球が安定していないことが理解できるだろう。
【もう1つ気になる点が平均打球速度とハードヒット率の悪さ】
さらにもう1つ、藤浪投手が千賀投手、大谷選手と大きく異なる点がある。それは、平均打球速度とハードヒット率(打球速度が95m/h以上の割合を示す)だ。これらの数字が高ければ高いほど、しっかり打者にボールを捉えられていることを意味するものだ。
まずここまでの千賀投手の平均打球球速は93.5m/hで、ハードヒット率は50.0%となっている。実はこの数値もMLB平均からかなり劣っている状況だ。それでも伝家の宝刀フォークが威力を発揮し続けているため、大きなダメージを受けていないと考えられる。
また大谷選手の平均打球速度は88.2m/hで、ハードヒット率は33.3%に止まっている。ちなみに大谷選手の数値が、ほぼMLB平均となっている。
ところが藤浪投手の平均打球速度は99.1m/hであり、ハードヒット率も87.7%とかなり高くなっているのだ。これだけ相手打者に的確に球を捉えられてしまえば、自ずと被安打数も増えてしまうわけだ。
繰り返しになるが、3選手ともまだ2試合しか登板していないし、今後データも徐々に変化していくことになるので、ここから明確な答えを導き出せるとは思わない。
ただ現段階で、藤浪投手と千賀投手、大谷選手に明確な違いがあることは理解してもらえたかと思う。