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登板直後に契約合意!21歳のニカラグア代表投手がWBCの舞台で掴んだ夢物語

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
WBCは若手有望選手にとってアピールできる絶好の舞台だ。(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

【無名のニカラグア代表投手が試合直後にタイガースと契約合意】

 第5回WBCはプールA、Bが全日程を終了する中、遅れてスタートしたプールC、Dでは連日熱戦が繰り広げられている。

 特にドミニカ代表、プエルトリコ代表、ベネズエラ代表という強豪国が揃うグループDは、会場となっている「ローンデポ・パーク」にほぼ満員の3万5000人以上のファンが集結。かつてないほどの盛り上がりを見せている。

 ところで以前本欄で、MLBにとってWBCは世界中の若手有望選手を確認できるショーケース的な意味合いがあると説明していたが、まさにプールDでそれを証明するような出来事が起こった。

 現地時間の3月13日に行われたニカラグア代表対ドミニカ代表戦で、同試合に登板したニカラグア代表の21歳投手が、試合終了わずか1時間後にタイガースと契約合意したというのだ。

 すでにSNS上でも、このニュースが拡散されている。

【ドミニカ代表の最強力打者たちから3三振を奪う】

 この快挙について、ニカラグア野球協会も即座に報告ツイートをしている。

 選手の名前は、デュケ・エベルト投手。米メディアによればこれまでニカラグア以外ではまったく無名の存在だったようだが、昨シーズンは国内リーグで新人王を獲得している若手有望選手だった。

 エベルト投手は1対6で迎えた9回表に、6番手としてマウンドに立った。1番から始めるドミニカ代表の強力打線を相手に、2死からマニー・マチャド選手に左翼越えの二塁打(ただ捕球してもおかしくない打球だった)を許したものの、フアン・ソト選手、フリオ・ロドリゲス選手、ラファエル・デバース選手というMLB屈指の強打者たちから空振り三振を奪い、見事無失点で切り抜けている。

 最速は90マイルだったものの、キレのあるチェンジアップ、スライダーを低めに投げ分け、ストライクゾーンからボールになる球でドミニカ代表選手たちから空振りを奪い続けた。

 投球後にベンチに戻ったエベルト投手は、ホルヘ・デパウラ投手コーチから言葉をかけられハグされると、次々にチーム関係者から祝福された。

【WBC終了後は帰国せずタイガースのマイナー・キャンプに合流】

 この試合を中継していたJスポーツで解説を務めていたマック鈴木氏が「これで人生が変わるかもしれませんよ」と語っていたが、その予想は見事に的中した。

MLB公式サイトによると、この試合を現地で観戦していたタイガースでスカウトを務めるルイス・モリーナ氏は、試合終了後すぐにエベルト投手と接触し、その場でマイナー契約を提示し合意に至ったという。

 エベルト投手はWBCが終了した後もニカラグアに帰国せず、そのままタイガースのマイナー・キャンプに参加する予定だ。

 エベルト投手にとって、まさに人生を変えるような1イニング、19球の投球となった。

 今後侍ジャパンの若手選手たちも、MLBチームから熱い視線を集めることになりそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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