Yahoo!ニュース

新ルール導入で打者大谷翔平は更に覚醒する?!日本人初のトリプルスリー達成に期待

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
新ルール導入は打者大谷翔平選手にとって有利に作用しそうだ(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【新ルール導入で投打ともに適応が求められる大谷選手】

 エンジェルスの契約延長に合意しなければ、今シーズン終了後にFAとなる大谷翔平選手。すでに各所で報じられているように、仮にFAになった場合MLB史上最高額の年俸総額になることが期待されているだけに、契約交渉に大きな影響を及ぼすだろう今シーズンの成績にも注目が集まっている。

 そんな状況下で大谷選手の成績に大きく影響しそうなのが、今シーズンから導入される新ルール(もしくはルール変更)だろう。二刀流の大谷選手の場合、投打ともに新ルールへの適応が必要になっているだけに軽視することはできない。

 特にピッチクロックに関しては、大谷選手はMLBの中でもピッチテンポが遅い投手に分類されるので、シーズン開幕前までにルーティンを確立することが求められそうだ。

【走者の有無にかかわらず大谷選手のピッチテンポは20秒以上】

 ちなみにMLB公式サイトによれば、昨シーズンの大谷選手のピッチテンポは、走者無しの場合で21.7秒、走者ありの場合で26.9秒と、ピッチクロックの設定時間(走者無しで15秒、走者ありで20秒)を大幅に超過している。

 ただしMLB公式サイトでは、このピッチテンポは実際に用いられるピッチクロックと同じタイミングで計測しているものではないとしているので、参考程度に考えておくべきだが、それでも大谷選手のピッチテンポが遅いのは明らかだ。

 大谷選手は現在スプリングトレーニングで、ブルペン投球を行う際にピッチコム(バッテリー間で球種を交換する通信機器)を利用しながら自ら球種を決め捕手に伝達する方式を試みている。これが効果的ならば、かなりの時間短縮が期待できそうだ。

 ちなみにこうした確認作業はチーム内でしかできないので、やはり侍ジャパンの早期合流は難しかったのではないだろうか。

【打者大谷選手も短いピッチテンポへの適応が必要】

 一方で打者としての大谷選手も、ピッチクロックの適応が必要になりそうだ。

 こちらもMLB公式サイトに掲載されているデータによれば、昨シーズンの大谷選手に対する相手投手の平均ピッチテンポは、走者無しの場合が18.3秒で、走者ありの場合が23.7秒と、ある程度時間をかけて大谷選手と対峙していた。

 そのため大谷選手としても、打者としてのルーティンも多少テンポアップする必要があるため、当面はピッチクロックを確認しながら打席に立つことになりそうだ。

【昨シーズンは大谷選手全打席の88.3%がシフト守備】

 ここまではあくまでピッチクロックのみに関してだが、その他の新ルール(牽制回数の制限、シフト守備の制限、ベースサイズ拡大)は、各自に打者大谷選手に多大な利益をもたらしそうだ。

 まずシフト守備の制限で、大谷選手の打率が大幅に上昇する可能性がある。

 これまで大谷選手のシーズン最高打率は、2019年シーズンの.286で、MVPを受賞した2021年シーズンは.257、昨シーズンも.273に止まっている。

 そこで注目をしてほしいのだが、大谷選手に対する相手チームのシフト守備率だ。まだ大谷選手のデータが不足している2018、2019年シーズンは、シフト守備率が5割未満だったのに、2021年シーズンは75.2%で、昨シーズンに至っては88.3%まで跳ね上がっている(別表参照)。

(筆者作成)
(筆者作成)

 例えば昨シーズンの大谷選手のxOBA(1打席当たりの得点増加の貢献度を表す指標)を見てみると、シフト守備の場合が.365だったのに対し、シフト守備でなかった場合だと.403まで上昇している。

 つまりシフト守備が制限されることで、大谷選手の打撃はより効果的になってくるし、当然打率アップも期待できるわけだ。ただし相手チームもシフト守備なしの状態で大谷選手を抑えることを研究してくるので、これまでと違った攻め方をしてくることになるだろう。

【牽制回数の制限で自慢のスピードを遺憾なく発揮できる?】

 さらに牽制回数が制限されることで(牽制及び軸足をプレートから外せるのが1打席当たり2回まで)、大谷選手を含めたスピードのある選手たちが、より盗塁を狙いやすい環境になった。それに伴いベースサイズも拡大されたので、接触プレーを回避しながらスピードを維持したままスライディングできるのも大きい。

 すでにMLBでは広く知られるように、大谷選手の一塁到達スピードはMLBでもトップクラスだ(昨シーズンは4.08秒でMLB5位。ただしスプリントスピードは秒速28.3フィートで同136位タイ)。2021年シーズンには自己最多の26盗塁を記録しており、今シーズンは更なる上乗せも期待できるかもしれない。

 ただしフィル・ネビン監督の構想では、今シーズンの大谷選手は3番を打つ可能性が高そうなので、どれほどの盗塁機会を得られるかも多少影響することになるだろう。

 あくまで希望的観測の域を超えていない結論ではあるが、新ルール下での打者大谷選手には、日本人初のトリプルスリー(3割、30本塁打、30盗塁)達成を期待していいのかもしれない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

菊地慶剛のスポーツメディア・リテラシー

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3、4回程度(不定期)

22年間のMLB取材に携わってきたスポーツライターが、今年から本格的に取材開始した日本プロ野球の実情をMLBと比較検討しながらレポートします。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

菊地慶剛の最近の記事