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MLB公式サイトが特集!週間MVPを獲得した鈴木誠也の好調を支える卓越した選球眼と幅広い打撃ゾーン

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
周囲の不安とは裏腹に開幕から打撃好調の鈴木誠也選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【鈴木選手が打撃主要部門すべてにランクイン】

 カブスの鈴木誠也選手が、シーズン開幕から試合に出場する度にその評価を上昇させている。

 長期化したロックアウトの影響で契約の遅れ、スプリングトレーニングの短縮と準備不足が否めない状態でMLB1年目のシーズンに臨んだ鈴木選手だったが、周囲の不安を吹き飛ばす活躍を続け、すでに日本でも報じられているように、現地時間の4月18日に堂々ナ・リーグの週間MVPを受賞した。

 ここまでの個人成績も突出しており、4月19日時点で打率.429(MLB4位)、本塁打4本(同4位)、打点11(同4位)、出塁率.575(同1位)、長打率.929(同2位)、四球10(同3位)──と、ほぼすべての主要打撃部門でランクインしているほどだ。

 まさにロケットスタートと呼ぶに相応しい活躍といえる。

【MLB公式サイトが鈴木選手の打撃をデータで分析】

 これまでMLBに挑戦してきた多くの日本人野手たちが、環境の違いから移籍1年目に苦労してきた過去があり、多くのメディア(自分の含めて)は、開幕当初の鈴木選手がMLBに適応するまで苦労するだろうという見方をしていた。

 にもかかわらず、なぜ鈴木選手はここまでの活躍ができているのだろうか。その答えになりそうなのが、MLBの中でも卓越した選球眼と打撃ゾーンにありそうだ。

 MLB公式サイトでデータ関連専門の記事を担当しているサラ・ラングス記者が4月18日に、データを元に鈴木選手の打撃を分析する特集記事を公開している。

【チェイス率が規定打席以上の打者の中でMLBトップ】

 ラングス記者によると、ここまでの鈴木選手は、規定打席に達している打者の中でスイング率(全投球に対しバットを振っている率)が29.8%で、MLB3番目に低いという。しかもスイングしたバットの空振り率は20.0%で、MLBの平均以下に止まっているそうだ。

 これが何を意味するのかといえば、カブスのTV解説者の言葉を借りれば、鈴木選手が「自分のゾーンを持っている」証左であり、自分のポイントでしっかりバットを振っているからに他ならない。

 それを物語るように、投手が多用する投球術である「ストライクゾーンから外れる球」を振らされてしまうチェイス率に関しては、鈴木選手は規定打席以上の打者の中で堂々1位の8.4%に止まっているのだ。

 同じくラングス記者によれば、このストライクゾーンから外れる球に手を出した場合、2021年シーズンはMLB全体で打率.149、長打率.207に止まっている。つまり現在の鈴木投手は、MLB特有の投球術にまったく惑わされていないわけだ。

【しかも鈴木選手の打撃ゾーンはかなり広い?!】

 さらに鈴木選手は、自分の打撃ができるゾーンがかなり広いようだ。MLB公式サイトで公開されているスタッツキャストによる打撃データの1つ「スイング&テイク」によると、鈴木選手は現在MLB2位にランクしている。

 この「スイング&テイク」とは、ゾーンを「中心(ストライクゾーンの中心部分)」、「シャドウ(ストライクゾーン内外の周辺部分)」、「チェイス(シャドウから外れ完全にボールになる部分)」、「ウェイスト(手を出してもまったく無駄なエリア)」──の4つに分け、それぞれのゾーンにおけるスイング状況とボールをどこまで捉えられたか(テイク)を数値化したものだ。

このデータによると、まず鈴木選手は中心ゾーンのスイング率がMLB平均(26%)を上回る29%である一方で、シャドウ・ゾーンとチェイス・ゾーンのテイク率がそれぞれ67%(MLB平均が48%)、100%(同78%)と、大幅にMLB平均を上回っている。

 つまり中心ゾーンを高確率でスイングしている一方で、多少ストライクゾーンから外れたボールに対しても、現在の鈴木選手はしっかり対応できているということなのだ。

【平均打球速度は昨シーズンのトップ10入り】

 幅広い打撃ゾーンを有しているということは、それだけしっかりボールを捉えられる確率も増してくる。

 再びラングス記者の記事に戻ると、鈴木選手のスイートスポットのコンタクト率は、MLB平均(平均値は記事に記載されず)をはるかに上回る50.0%に達しているという。

 そのため平均打球速度は時速93.4マイルで、これは2021年シーズンでもトップ10に入る値だそうだ。

 まさにデータ上でも素晴らしい打撃を披露し続けている鈴木選手だが、今後相手チームも躍起になって鈴木選手の攻略法を考案してくるはずだ。

 とりあえずシーズンはまだ始まったばかりだ。今後も鈴木選手の打撃に注目していきたい。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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