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30日間それとも10日間?!米敏腕記者が解説する鈴木誠也に与えられた微妙な交渉期間

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
遂に契約交渉がスタートした鈴木誠也選手(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

【契約交渉がスタートした鈴木誠也選手】

 広島からポスティングシステムを利用してのMLB挑戦が認められた鈴木誠也選手だが、すでに各所で報じられているように、現地時間の11月22日にMLBから各チームに公示された。

 これにより鈴木選手は、同制度に則り30日間の契約交渉期間(12月22日の中部時間午後4時まで)が与えられることになり、期限内に契約合意できれば正式にMLB移籍が実現する一方で、できなければ来シーズンも広島に在籍することになる。

 ただしそれはあくまでポスティングシステムのルール上の話であって、今オフはやや事情が異なりそうな状況にあるのをご存知だろうか。

【実しやかに囁かれるロックアウトの実施】

 すでに本欄でも度々指摘しているように、現行の労働協約が12月1日で期限切れを迎える中、MLBと選手会の間で新たな労働協約の協議がまったく進展していない。このまま協議が平行線のまま12月1日を迎えた場合、大方のメディアはMLBがロックアウトを実施することになると予測している。

 また先週開催されたオーナー会議でメディアに対応したロブ・マンフレッド・コミッショナーは、「12月1日までに合意することが最優先事項」としながらも、ロックアウトを匂わせる発言をしているようだ。

 仮にロックアウトが実施されると、MLB各チームはトレードを含めた契約交渉がすべて禁止されると見られており、その場合はFA市場が完全に凍結してしまうことになり、鈴木選手の契約交渉も影響を受けることになる。

 ただロックアウトの対象が選手会とそこに所属する選手たちだと解釈すると、まだ選手会に所属していない鈴木選手は対象外になる可能性も考えられ、こちらとしては何とも判断しづらい状況にあるのだ。

【米敏腕記者がツイートした衝撃的な内容】

 そこで鈴木選手が正式にMLB挑戦を表明した直後に、この件についてMLBに直接問い合わせてみたところ、残念ながら彼らの回答は「憶測(ロックアウト)の質問には答えられない」というものだった。

 前述のコミッショナーの発言からも分かるように、現在のMLBは、あくまで期限内に新しい労働協約に合意することを目指している。その立場からすれば、ロックアウトを前提とした質問に回答するのはやはり無理があった。

 そんな中、MLBネットワークにも出演し、球界でも情報通として知られるニューヨークポスト紙のジョエル・シャーマン記者が、以下のようなツイートを公開した。

 その内容は、ポスティングシステムを利用した場合でも海外FA選手として扱われる鈴木選手も、ロックアウトで契約交渉が打ち切られた場合の対象になるとしているのだ。

 ただしシャーマン記者は別の内容もツイートしており、ロックアウト中は鈴木選手の契約交渉も一旦打ち切られるが、ロックアウトが解除されれば、そこから残りの契約交渉期間が復活するとしている。

【確実な交渉期間はたった10日間】

 シャーマン記者のツイートが正しいのならば、MLBが12月2日からロックアウトを実施した時点で、とりあえず鈴木選手の契約交渉期間も一旦打ち切られてしまうことなり、ロックアウトの解除を待つしかなくなる。

 そこで問題になってくるのが、ロックアウトの解除時期だ。メディアの中にはロックアウトの長期化を予想しており、決着するのは来年2月になるとの指摘もあるほどだ。そうなれば鈴木選手は交渉期間が復活するまで、ずっと宙ぶらりんの状態に置かれてしまうことになる。

 つまり鈴木選手が不安なく確実に契約交渉できる期間は、12月1日までのたった10日間ということになるわけだ。

 もちろんロックアウト実施は、現時点で憶測の域を超えていない。12月2日以降もロックアウトは実施されず、鈴木選手はルール通りに30日間の交渉期間を与えられることになるかもしれない。だが決して楽観視できるような状況にないことだけは確かだ。

 やはりリスクを回避するには10日間でのスピード合意が求められるところだが、果たして鈴木選手はこの局面にどう対峙していくのだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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