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エンジェルスと食い違い?!ドジャース入りしたアルバート・プホルスが語った偽りない思い

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
入団発表後オンライン会見を行ったアルバート・プホルス選手(筆者撮影)

【ドジャースがプホルス選手の獲得を正式発表】

 すでに米メディアが報じていたように、ドジャースは現地時間の5月17日、エンジェルスから40人枠を外された後FAになっていたアルバート・プホルス選手の獲得を発表した。

 入団と同時に公式戦可能な26人枠に入ったプホルス選手は、早速ダイヤモンドバックス戦に「4番・一塁」で先発に名を連ねている。

 今シーズンのドジャースは、主軸打者のマックス・マンシー選手を主に一塁で起用してきたが、今回は彼を二塁に回し(今シーズンは二塁で3試合に先発出場の経験あり)、プホルス選手の先発出場機会を創出している。

 デーブ・ロバーツ監督は今後もマンシー選手の二塁での出場機会が増えると示唆しており、当面の間一塁は、プホルス選手とマンシー選手の併用になっていくことになりそうだ。

【プホルス選手「チームが求めることを何でもやる」】

 入団発表後にオンライン会見に臨んだプホルス選手の表情は、実に晴れ晴れとしていた。そしてFAになって以降、数チームからオファーがあったことを明らかにした上で、ドジャース入団までの経緯を説明している。

 「自分とエージェントは、アンドリュー(フリードマン球団社長)らと素晴らしい話し合いができた。

 チームとしてのプランも素晴らしかったし、何といっても彼らが自分を迎え入れることを非常に喜んでくれていた。それが自分の決断に繋がったし、このチームの手助けができることを嬉しく思っている」

 さらに「ドジャースでの役割は?」との質問に対し、以下のように答えている。

 「何でもだ。すでにチームにも伝えているが、一塁であれ、代打であれ、チームが自分に求めていることを何でもやるつもりだ。

 とにかく今回ドジャースのユニフォームを着る機会を得たことを喜んでいるし、最高の仲間たちが自分を歓迎してくれている」

【エンジェルスでも役割変更を受け入れていた?】

 オンライン会見がさらに続く中、つい最近になってエンジェルス担当からドジャース担当に変わった『The Athletic』のファビアン・アルダヤ記者とのやりとりの際、プホルス選手が気になる発言をしている。

 以下に、その箇所を抜粋する。

 「ここ数年の自分の目標は、毎日一塁手として出場することではなかった。スプリングトレーニングの時にも記者の人たちに伝えていたように、どんな役割を与えられようとも、それを全うすることだった。

 その上でエンジェルスがチームとして、ビジネスとして決断を下した。それについては理解しているし、何ら特別な感情もない。彼らから(DFAの)話が届いた。それだけだ。あとは前に進むだけだった。

 巷では『もっと出場時間が欲しかった』とか『毎日出場したかった』などといわれているようだが、そんな考えは全くなかった。実際(エンジェルスで)80打席以上貰えていたし、出場時間にも満足していた」

【エンジェルスとプホルス選手の間に生じた食い違い】

 エンジェルスがプホルス選手をDFAにした際、ペリー・ミナシアンGMはその理由について、以下のように説明している。

 「我々には毎日起用したい若手の一塁手とDHがいる。アルバートをベンチに置くのは、チームにとっても、彼にとっても有益ではない」

 だがプホルス選手は前述したように、エンジェルスでもどんな役割でも受け入れる姿勢を示していたようだ。これが事実とするならば、両者の言い分に明らかな食い違いが生じてしまうことになる。

 もしミナシアンGMやマドン監督がプホルス選手の考えを認識していたのなら、DFAをしなくてもペンチ選手として起用しながらエンジェルスでシーズンを全うさせられたはずだ。

 逆に彼らがプホルス選手の考えを知らなかったということになれば、間違いなくプホルス選手との間でコミュニケーションが不足していたことになる。

 ただ両者に食い違いがあり、それを掘り起こしたところで過去が変わるわけではない。プホルス選手が話すように、特別な感情をもつことなくビジネスと割り切り、前に進むだけなのだろう。

 だがプホルス選手とエンジェルスの決別が、決して円満でなかったことが明らかになったのは、今後に尾を引くことになるかもしれない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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