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大谷翔平に影響なし?!MLBが新DH制度を独立リーグで試験導入へ

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
マイナーリーグに続き独立リーグでの新ルールを試験導入するMLB(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【MLBが新ルールの試験導入を発表】

 MLBは現地時間の4月14日、公式リリースを発表し、将来的なルール変更を睨み2つの新ルールを提携リーグのアトランティックリーグで試験導入することを明らかにした。

 2つの新ルールは、“Double-Hook(ダブルフック)”と呼称された新DH制度と、ホームとプレート間の距離を延長するというもの。

 新DH制度はシーズン開幕から導入され、距離延長はシーズン後半戦から採用される予定だ。

【先発投手交代でDH制度が全面解除】

 DH制度については、今シーズン開幕前にMLBと選手会の間で実施案が協議され、選手会側は昨シーズン同様にナ・リーグでも引き続きDH制度の採用を求めていたが、最終的に例年通りア・リーグのみでの採用で決着していた。

 だが現場の選手たちからDH制度導入を求める声は今も強く、将来的な両リーグでのDH制度導入が検討課題の1つになっていた。

 そんな中、今回MLBが試験導入する新DH制度は、まさにア・リーグとナ・リーグの折衷案といえるものだ。

 試合開始時はDHを起用することができるが、先発投手が交代するのと同時に、DH制度が全面解除され、それ以降はリリーフ投手が打席に立つか、代打を使わなければならなくなるというものだ。

 MLBはこの新ルール導入について、以下のように説明している。

 「2020年シーズンに関して、先発投手のほぼ90%が7イニング未満で交代している。先発投手とDHをリンクさせることで、先発投手の価値を高め、より長いイニングを投げられるようにすることで、終盤の戦術面での多様化に繋がる」

 米メディアの中には、この新ルール導入で、最近MLBで頻繁に採用されるようになったオープナーやブルペンデーが使いにくくなるだろうと予想しているところもある。

【距離延長で投高打低傾向の改善】

 ホームとプレート間の距離を延長することに関しては、単純に現在の“投高打低”傾向を改善するための措置だ。

 従来の距離は60フィート6インチ(約18.44メートル)だったのを、今回は1フィート伸ばし、61フィート6インチ(約18.75メートル)に延長されることになる。

 これについても、MLBは以下のように説明している。

 「テクノロジーの進化と投手の球速アップで、MLBの三振率が15年連続で上昇しており、2005年シーズンの16.4%から2020年シーズンは23.4%まで上がっている。

 ホームとプレート間の距離を延長することで、2020年シーズンの速球の平均球速93.3マイル(約150.2キロ)に対する打者の対応時間が、2010年シーズンの平均速度91.6マイル(約147.4キロ)並みに変更される。

 また1フィート延長は投手の安全面も考慮しており、投手は投球フォームの変更を必要とするものではなく、故障を引き起こす要因になるというデータもない」

 今回の新ルールはあくまで試験導入であり、これが将来的にMLBに正式採用されるこというわけではない。

 ただ新DH制度が導入されたとしても、現在の大谷翔平選手の二刀流にまったく影響はなさそうなので、そこは一安心といったところだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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