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やはり厳冬のオフシーズンだった!30チーム中23チームの年俸総額が前年比割れという事実

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
エンジェスルヘのトレードが報じられたアレックス・コッブ投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【オリオールズが年俸1500万ドルのコッブを放出へ】

 米メディアが報じたところによると、オリオールズが、先発右腕のアレックス・コッブ投手をエンジェルスにトレードすることで合意したようだ。現在はMLBからの認可を待っている状況で、まだ正式発表には至っていない。

 エンジェルスのペリー・ミナシアンGMは、FAのホゼ・キンタナ投手を獲得した際に、更なる先発投手の補強を示唆していたが、レイズ時代にジョー・マドン監督の下で安定した先発陣の1人だった、コッブ投手を選んだというわけだ。

 コッブ選手は2017年オフに、4年総額5700万ドルの大型契約でオリオールズに移籍。今シーズンは契約最終年で、年俸1500万ドルが保証されているが、米メディアによれば、年俸の半額以上をオリオールズが負担するようだ。エンジェルスにとっては、低予算で先発投手を補強できたかたちになった。

【クリス・デービス選手以外は年俸500万ドル未満に】

 コッブ投手の見返りとして、オリオールズは昨年MLBデビューした23歳の内野手、ジャーマイ・ジョーンズ選手を獲得したが、MLB在籍日数はわずか14日間と最低年俸クラスの選手なので、大幅な年俸総額削減に成功している。

 この結果オリオールズの陣容は、年俸2300万ドルのクリス・デービス選手を抱えているものの、彼を除くとトレイ・マンシーニー選手の475万ドルが最高額で、40人枠の選手の中で100万ドルを超える選手も、上記の2選手を除くと4人しか存在しない状況になっている。

 元々オリオールズはここ数年、MLB30チームの中でも平均以下の年俸総額で推移していた。MLB関連の情報サイトの『FAN GRAPHS』によれば(これ以降に紹介するデータはすべて同サイトからの引用)、昨シーズン終了時点での年俸総額は約6300万ドルだったが、すでに年俸350万ドルが保証されていたホゼ・イグラシアス選手を同じくエンジェルスにトレードしており、今回のコッブ投手とのトレードと合わせて、約5000万ドルまで絞り込んでいる。

【年俸総額が昨年比増はわずか6チーム】

 今更説明する必要もないが、今オフは本欄を含め多くのメディアが、新型コロナウイルスの影響で多くのチームが補強策で慎重姿勢を貫き、FA市場が稀に見る停滞状況にあったと報じてきた。

 実際スプリングトレーニングを目前に控えながら、今オフFA市場でトップランクと言われてきたトレバー・バウアー投手、マルセル・オズーナ選手、ジェイク・オドリッジ投手らの所属先が今も決まっていない状況だ。

 そこで改めて各チームの現時点での年俸総額をチェックしたところ、明らかに厳冬傾向だったことが浮き彫りになった。

 例えば昨シーズン終了時点の年俸総額と比較して、現時点の年俸総額が上回っているのは、たった6チームしか存在しない。ア・リーグは、ブルージェイズ、レッドソックス、エンジェルス(ただしコッブス投手のトレードが認可された場合)。ナ・リーグがフィリーズ、ナショナルズ、パドレスの3チームだ。

 しかもその上昇率を見てみると、2桁台の伸び率になっているのはブルージェイズ(26.9%増)とレッドソックス(10.3%増)のみ。残り4チームはほぼ微増に留まっている。

 ただ今日(日本時間の2月2日)になって、今シーズンの年俸が3500万ドルの、ノーラン・アレナド選手がカージナルスにトレードされることが正式発表されており、カージナルスは前年比減から前年と同額の約1億6400万ドルに戻している。

 だが基本的に見て、ほとんどのチームが潤沢な補強資金を得ていないのは間違いないところだ。

【2桁台の下げ率は半数の15チーム】

 これを反対に年俸総額が前年比減のチームを見てみると、厳冬の傾向がさらに顕著になってくる。微減に留まっているチーム以上に、大幅減にシフトしたチームの方がはるかに多いのだ。

 2桁台の下げ率になっているチームは、46.8%減のレンジャーズを筆頭に、クリーブランド(38.4%減)、パイレーツ(30.6%減)、マーリンズ(29.4%減)、タイガース(27.4%減)、ブレーブス(23.4%減)、アスレチックス(20.0%減)、マリナーズ(19.8%減)、ヤンキース(18.7%減)、ブルワーズ(16.7%減)、レイズ(15.2%減)、アストロズ(14.8%減)、カブス(14.4%減)、レッズ(12.0%減)、ダイヤモンドバックス(11.4%減)と、半数の15チームに上る。

 さらにロッキーズがアレナド選手を放出したことで、やはりこのグループに加わることになるだろう。

 中でも金満球団と言われ続けてきたヤンキースが、低予算チームと変わらない大幅削減にシフトしたのは、やはり今オフを象徴しているのではないだろうか。

 またパイレーツに至っては年俸総額が5000万ドルを下回り、約4300万ドルまで削減しているのだ。現時点で年俸総額トップのドジャース(約2億500万ドル)と4倍近い開きがあり、ますますチーム格差が広がっている。

 まだ各チームの補強は終わったわけではないが、これからも厳冬傾向で推移していくことに変わりはないだろう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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