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MLB最強左腕と同じ成長過程を歩んだ山本由伸が目指すエースとしての独り立ち

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
自主トレで納得のいく調整をしてキャンプに臨む山本由伸投手(球団提供)

【田中フィーバーに沸きそうな今年のキャンプ】

 いよいよ明日2月1日から、NPB全12チームが一斉にキャンプインする。とはいえ、新型コロナウイルスの影響により無観客で実施されるなど、厳しい状況下での始動となる。

 それでも海の向こうのMLBでは、アリゾナ州に15チームがキャンプ施設を置く市長らがMLBに対し、キャンプ開始の延期を要請しており、今も予定通りに開始できるかも見通せない状況が続いている。それを考えると、NPBの方がはるかに恵まれた環境にあると言えるだろう。

 そんな中、田中将大投手の8年ぶりの楽天復帰が決まり、日本中が歓迎ムードに包まれ、球界に明るい話題が届いたのは嬉しい限りだ。田中投手のキャンプ合流は少し遅れるようだが、当面は田中フィーバーで盛り上がることになりそうだ。

【これまで以上に注目すべき山本由伸投手】

 個人的にも今シーズンの田中投手がどんな投球を披露してくれるのかを楽しみにしている1人だ。

 ただ入団会見で田中投手自身が指摘しているように、メディアを含めた人々の期待値のハードルがあまりに高いのが心配でならない。MLBとNPBは環境面で、歴然とした違いがある。やはりNPBに適応する時間が必要だと思うので、あまり期待をかけすぎないで欲しいと願ってもいる。

 期待値という点では、田中投手以上に楽しみにしているのが、オリックスの山本由伸投手だ。もうすでに誰もが認める、球界を代表する先発投手になっているのは明らかだが、あくまで彼は成長過程の投手だと考えるべきだ。

 昨シーズンも防御率と奪三振のタイトルがかかりながら、上半身の不良と疲労のため登録抹消されていた山本投手を、オリックスは最後まで登板させなかった。その方針に疑問の声が挙がったりもしたが、彼が成長過程の投手だからこそ、将来を見据えて彼を守ったわけだ。

 それだけに、今シーズン山本投手がエースとして一本立ちできるかに、どうしても期待と関心を寄せてしまう。

【ここまでの成長過程はクリス・セール投手に類似】

 NPBでは田中投手や松坂大輔投手のように、高卒1年目から1軍で活躍する投手たちが存在するが、長年MLBを取材し、MLB流の育成システムに馴染んできた自分にとって、山本投手の成長過程は、まさに理想的なものといえる。

 プロ1年目は2軍でモニタリングした後で、シーズン後半から1軍に昇格し5試合に先発すると、2年目は開幕1軍こそ逃したものの、4月下旬に1軍に呼ばれ、そのシーズンは中継ぎ投手として過ごした。

 シーズン3年目から晴れて開幕から先発陣に加わり、自身初となる防御率のタイトルを獲得。そして4年目となった昨年は、千賀滉大投手ともに奪三振のタイトルを分け合っている。着実に成長の階段を上がってきているのは、誰もが認めるところだろう。

 実はMLBでも、将来的な先発候補をまず中継ぎ投手として起用して成長過程を確認した上で、先発投手に回したケースがある。現在レッドソックスの大黒柱の1人、クリス・セール投手だ。

 彼は大学3年時の2010年にホワイトソックスから1巡目指名を受け、プロ入りする。そしてまず中継ぎ投手としてマイナーに回され、その年のシーズン途中でMLB初昇格を果たしている。

 翌2011年はMLBで1年間中継ぎを務めた後、2012年から先発に転向。そしてその年に17勝を挙げる活躍を見せ、一躍MLBで名を馳せる存在になった。当時セール投手は23歳だった。プロ入りしたのは大学と高校と違いはあるものの、山本投手の成長過程とかなり類似しているのが分かるだろう。

 そして今シーズンの山本投手は、セール投手が大成した23歳を迎えようとしているのだ。

【シーズンに向け体調は万全】

 我々が期待しなくても、山本投手自身がシーズンを通して先発ローテーションを守り切るという、断固たる覚悟を持っている。球団施設で行った自主トレ後に報道陣に対応した彼は、以下のように話している。

 「トレーニングは2ヶ月間しっかりやったので、それと食生活だったり、そういう部分も含めてすべてちゃんとしないと(ローテーションを守り切ることが)できないと思います。

 今年は先発として3年目のシーズンになるので、1年間余力を残して終われるくらいにやりたいと思っています」

 報道陣の質問に答え続ける中、山本投手は何度も「身体がいい状態にある」という言葉を繰り返しており、盤石の状態でキャンプ、そしてシーズンに臨めそうだ。

【投球自体も更なる進化を見据える】

 山本投手がここまで順調に成長できているのは、オフシーズンに着実に課題を克服し、投手としての技術を向上させているからに他ならない。彼自身も「過去の自分と比べたらいい球を投げられていると思います」と確信を得ている。

 すでに球速や、変化球を含めた球のキレに関しては、球界屈指の存在になっているが、それでも今も進化を続けようと前を見据えている。

 「自分のフォームというものを固定しすぎず、よりいいものを求めていて、まだまだ模索中というか、自分の感覚になっていません。

 体重移動がスムーズに決まるフォームはボールの強さや伸びが違うので、より体重移動がしやすいフォームというか、力を入れずに速い球を投げられるフォームを探しているというか、試している感じです」

 山本投手が理想とするフォームに辿り着いた時、果たしてどんな投球を披露してくれるのか、高揚感を抑えることができない。

 そして今シーズンの山本投手は、すべてにおいて球界一番を目指そうとしている。

 「一番になりたいという気持ちはすごく強いです。僕は負けず嫌いなので、誰にも負けない成績を残したいですね」

 これまで有言実行を貫き通してきた男の言葉に、頼もしさを感じずにはいられない。改めて今シーズンの山本投手に注目したい。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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