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開幕1ヶ月でHC交代劇を経験した島根スサノオマジックが中盤戦で期する更なる飛躍

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
大阪エヴェッサ戦で円陣を組む島根スサノオマジックの選手たち(筆者撮影)

【B1リーグがシーズンを再開】

 開幕からシーズン1/4に相当する15試合を戦い終え、約2週間のバイウィークに入っていたB1リーグ。いよいよ12月2日からシーズンを再開する。

 新型コロナウイルスの影響で外国籍選手の合流が遅れ、ほとんどのチームは戦力が揃わないまま開幕を迎え、シーズン序盤戦の戦いを強いられてきた。

 各チームともようやく全陣容が揃い、今回のバイウィークで本格的にチームとしての戦術やシステムを確認することができたはずだ。これから始まる中盤戦から、各チームの真の実力を確認できるのではないだろうか。

【中盤戦で真価が問われる島根】

 新型コロナウイルスの影響で昨シーズンはシーズン途中での中断を余儀なくされたため、今シーズンのB1は計20チーム、2地区制を採用している中、序盤戦は東地区に10勝以上のチームが5チームいる一方で、西地区はわずか2チームに留まっている。

 また勝率5割以上のチームも、東地区が7チームに対し、西地区は3チームと、ここまで“東高西低”の傾向を色濃くしている。

 中盤戦も東地区では、強豪チーム間で激しいチャンピオンシップ(いわゆるプレーオフ)争いが展開されることが予想される一方で、西地区は、勝率5割以下のチームがどこまで巻き返し、上位陣に迫れるかに期待がかかる。

 そんな西地区にあって、ここまで7勝8敗とまずまずの健闘をみせている島根スサノオマジックこそ、中盤戦で真価を問われるチームの1つになるだろう。

急きょチームの指揮をとることになった河合竜児HC代行(筆者撮影)
急きょチームの指揮をとることになった河合竜児HC代行(筆者撮影)

【わずか1ヶ月で鈴木HCが退任】

 シーズン開幕から1ヶ月が経過した11月3日、それまで5勝5敗とまずまずの成績を残していた島根は、鈴木裕紀HCの退任を発表。急きょ後を引き続く河合竜児HC代行の下、新体制にシフトせざるを得なくなった。

 鈴木前HCは島根がB1に初昇格した2017-18シーズンから指揮をとってきた人物だが、昨シーズンはチーム内でパワハラ行為を行っていたことが発覚し、Bリーグから2ヶ月間の職務停止処分が科せられていた。処分後に再びHCに復帰したものの、チーム発表によれば自らの意思で退任をすることになったようだが、突然のHC交代劇は少なからずチームに影響を及ぼしたはずだ

 河合HC代行になってバイウィークまで残り5試合は2勝5敗に終わったが、1勝は強豪シーホース三河相手に101-82に圧勝したもので、今シーズンのチームの可能性を窺わせている。

【河合HC代行が加えようとしている新たなスパイス】

 前述通り西地区は、強豪チームが限定され、下位チームが上位に食い込めるチャンスがある。島根は間違いなくその1チームであり、まさに中盤戦の戦いがカギを握っている。このバイウィークで、河合HC代行がどこまでチームを仕上げることができたのか注目されるところだ。

 バイウィーク前に河合HC代行は、現在のチームについて以下のように述べている。

 「急きょ自分が代行というかたちで代わった中で、選手たちは一生懸命自分がやろうとしていること、自分の言葉に耳を傾けてくれて、その中で1つになって戦おうとする姿勢を示してくれました。彼らが一番大変だったでしょうし、彼らの頑張りで(三河戦のような)戦いができたんじゃないかなと思います。

 なかなか多くの時間がとれていなかったので、このバイウィークの中でいろいろなところを修正ですとか、新しいものを入れる準備の時間に充てられるので、休み明けに成長したかたちでゲームを迎えられるようにしたいです」

 河合HC代行としては、鈴木前HCが築き上げた足を生かしたディフェンスを土台にして、さらに河合HC代行が気づいたディフェンス、オフェンス両面の良さを新しいスパイスとして加えながら、さらにプレーの幅を広げようとしている。

【北川主将「うちはどこにでも勝てるしどこにでも負ける」】

 今回のHC交代劇に関して、選手たちもいろいろ思うところがあるはずだ。だが今は河合HC代行の下で、目前の試合に勝つことに集中していくしかない。キャプテンの北川弘選手は、選手の気持ちを代弁する。

キャプテンを務める北川弘選手(筆者撮影)
キャプテンを務める北川弘選手(筆者撮影)

 「何がきっかけになるかは誰にも分からないですが、(HC交代を)1つのきっかけにするべきだと思うし、これをなあなあにすべきではないと思います。今回はコーチが代わるというかたちになりましたが、うちみたいなチームは、勝ったらみんなのお陰だし、負けてもみんなの責任だというのを1人1人が理解すべきだと思います。

 今シーズンは去年より五分で戦えるケースもいっぱいあります。でも勘違いしてはいけないのが、うちはどこにでも勝てる可能性があるけれど、ただどこにでも負ける可能性もあるチームです。どことやるにしても挑戦者という気持ちを忘れてはいけないと思います」

 果たして新生島根は、中盤戦で躍進することができるのか。その疑問に答えてくれるのは、今後の彼らの戦い方次第だ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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