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エンジェルス球団社長が明言を避けた来シーズン以降の大谷翔平の二刀流継続

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
来シーズンの大谷翔平選手は最後まで二刀流を続けることができるだろうか?(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【エンジェルスがシーズン総括会見を実施】

 エンジェルスは現地時間の9月30日、ジョン・カルピーノ球団社長とジョー・マドン監督によるシーズン総括会見を実施した。

 エンジェルスはシーズン最終戦終了直後に、ビリー・エプラーGMの解任を発表したばかり。会見でも米メディアから、今後のGM人事に関する質問が相次いだ。

 カルピーノ社長は解任理由について、「(エプラーGMの)5年間で希望通りに勝てなかった」と話し、今後はエンジェルスを勝てるチームに変革してくれる人物を招聘する考えを示した。

 そこで日本人として気になるのが、大谷翔平選手の去就だろう。すでに日本のメディアの中には、大谷選手に二刀流を確約しチームに迎えたエプラーGMが去ったことで、来シーズン以降の二刀流継続は白紙になったと報じているものもある。

 結果的にカルピーノ社長は、会見上で大谷選手の二刀流継続を明言することはなかった。

【球団社長「我々の目標はチームが良くなっていくこと」】

 会見で米メディアから、「今後もショウヘイ・オオタニが二刀流を続けることをサポートするのか」という質問があった。それについてカルピーノ社長はまず「Yes」と答えたものの、「現時点では彼と話し合う価値があると思う」とした上で、以下のように答えている。

「我々の目標は、ショウヘイに限らず、他のすべての選手に関しても、どうすればチームが良くなっていくかだ。チームが勝つためにという点では、ショウヘイも他の選手と変わりはない。そしてチームが勝つために選手ができることは何かということだ。

 さらにポストシーズンでも勝ち、最終的にはワールドシリーズを制覇したいと考えている。ショウヘイと話をすることになったとしたら、彼も『チームが勝つ手助けをするには何をすることができるのか』という姿勢だと思う。

 我々としても、彼の類い希な才能を有効活用する最善策を導き出さなければならないと考えている」

シーズン総括会見に臨むジョー・マドン監督(右)とジョン・カルピーノ球団社長(筆者撮影)
シーズン総括会見に臨むジョー・マドン監督(右)とジョン・カルピーノ球団社長(筆者撮影)

【マドン監督からも来季先発陣構想に名前が出ず】

 もう1つ気になる点があった。来シーズンの先発投手陣について聞かれたマドン監督が複数の選手の名前を挙げたのだが、その中に大谷選手の名前が含まれていなかった。

 マドン監督は、現時点で先発投手陣の主力としてアンドリュー・ヒーニー投手、グリフィン・カニングス投手、ディラン・バンディ投手を挙げた。そして今後更なる成長を期待する投手として、パトリック・サンドバル投手、ホゼ・スアレス投手、ハイメイ・バリア投手を挙げるに留まった。

 さらに来シーズンの先発投手について、マドン監督なりの考えがあることを明らかにする一方で、「来シーズンの投手は皆が競争し、(先発の座を)与えられるのではなく勝ち取っていくことになる」とスプリングトレーニングで競わせていく方針を示している。

【すべては来シーズン開幕後のパフォーマンス次第?】

 ただマドン監督はすでに、来シーズンも大谷選手に二刀流を継続させる意向を示しているのも事実だ。

 大谷選手が今年8月に右ヒジ付近の屈筋回内筋損傷の診断を受け、残りシーズンの登板回避を明らかにした際に、新型コロナウィルスによる変則シーズンの影響を指摘し、「通常のスプリングトレーニングでしっかり準備できた状態でシーズンに臨み、それで彼がどのようなプレーをするかを見極める必要がある」と説明している。

 もちろんそれは、シーズンを通しての二刀流継続を確約してものではない。さらに指揮官は「現時点では彼が二刀流で活躍できると考えているが、負傷などの不測の事態が起こったのなら、考えが変わるかもしれない」とも話し、含みを持たせているのだ。

 大谷選手が二刀流を継続できるのか最大のカギを握るのが、彼のパフォーマンス以上に負傷に他ならない。過去3シーズンのように負傷を繰り返し戦線離脱するようになれば、チームとしても二刀流を継続させるわけにはいかなくなるだろう。

 カルピーノ社長は会見で「ショウヘイが来シーズンはシーズンを通して健康を維持できると楽観視している」と話しているが、すべては来シーズンの大谷選手次第ということだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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