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今オリックスに必要なのは選手に寄り添い現場を盛り立てる名参謀の存在

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
長年ベンチコーチとしてジョー・マドン監督を支え続けたデイブ・マルティネズ氏(左)(写真:ロイター/アフロ)

【唐突に訪れた西村監督の辞任劇】

 8月20日の西武戦終了後に、オリックスが西村徳文監督の辞任を発表した。チームの発表によれば、チームから辞任を要請し西村監督がそれを受諾したもので、スポーツ各紙が「事実上の解任」と報じているように、チーム主導による人事だった。

 辞任、解任どちらにせよ、ファクトは西村監督が現在のチーム状況に責任を感じ、辞任を受け入れたということだ。シーズン開幕前の評判とは裏腹に、チームは開幕直後にロッテに同一カード6連敗を喫するなど、厳しいスタートを強いられた。

 その後一時は勝率5割を狙える位置まで調子を上げてきたように思われたが、7月24日に借金4まで迫ったのを境にして、どんどん借金を膨らませ、リーグ内で1チームだけペナントレースから取り残される存在になっていた。

 チームは明らかに現在の流れを変える変化を必要としていたし、フロントが考えた変化こそが監督の交代だった。

【福良GMが説明する「ベンチを元気に明るくしたい」】

 すでに各紙が報じているように、西村監督の辞任に伴い中嶋聡2軍監督が監督代行を務め、それに合わせてコーチ陣の大幅な入れ替えも断行された。

 こうした大幅な人事刷新に至った経緯について、緊急会見を開いた福良淳一GMが以下のように説明している。

 「どうしても打率は良いんですけど、得点能力というところ。もう少しベンチを元気に明るくしたいというのがありました」

 つまりコーチ陣を大幅に入れ替えることで、チーム内の雰囲気を変えたいという狙いからだ。

 今シーズン現場でチームを観察してきて感じていたことなのだが、オリックスの試合前の練習風景を見ていても、MLBの現場で見てきたようなコーチと選手が和気藹々と談笑し、じゃれ合ったりする場面に遭遇したことがほとんどなかった。

 もちろんNPBとの文化の違いがあるし、西村監督の生真面目な性格がそのままチームの雰囲気に反映されていたのかもしれないが、とにかくオリックスには大人しいイメージしかなかった。

 それだけに主力選手にも若手が多いオリックスが必要しているのは、選手たちに寄り添い彼らを盛り立てながら、のびのびプレーさせる環境づくりをしてくれるコーチ、名参謀の存在なのではないかと密かに感じていた部分があった。

【岩村、川崎両氏が絶大な信頼を寄せた名参謀】

 長年MLBの取材を続けてきた中で、素晴らしい名参謀に出会ったことがある。長年ジョー・マドン監督のベンチコーチを務めてきたデイブ・マルティネス氏(現ナショナルズ監督)だ。

 すでにマドン監督は日本でも名将と謳われる人物だが、彼の功績を裏で支えたのは間違いなくマルティネス氏だといっていい。

 マドン監督がレイズ監督に就任して2年間は地区最下位に沈んでいたのだが、マルティネス氏がベンチコーチに加わった2008年に、チームは初めてワールドシリーズ進出を決め、その後レイズは強豪チームの仲間入りをすることになる。

 マドン監督がカブスに移籍してもマルティネス氏は道を共にし、2106年にはチームを108年ぶりのワールドシリーズ制覇に導いている。そうした2人が指揮したレイズ、カブスは、将来を嘱望された若手選手で満ちあふれ、まるで現在のオリックスのようなチーム構成だった。

 マルティネス氏と時間を共有した経験のある岩村明憲氏と川崎宗則氏にマルティネス氏の存在について話を聞かせてもらったことがあるのだが、両氏ともにマドン監督に勝るとも劣らない絶大な信頼を寄せているのが理解できた。

 マルティネス氏が2018年にナショナルズ監督に就任しコンビを解消してからは、マドン監督が地区優勝できなかったのも、決して偶然ではなかったとさえ思っている。

【常に選手に寄り添う気遣いとチームの潤滑油】

 岩村、川崎両氏から話を聞き、さらにマルティネス氏本人とも話をさせてもらい確認できたのは、彼が最高に陽気な人物であり、周りの人々を明るくさせる才能があるということだ。

 そしてクラブハウスでは常に選手との対話を欠かさず彼らとの時間を大切にし、時には選手の気持ちを確認し、時には監督の考えを選手に伝える役目を担うなど、まさにチームの潤滑油のような存在だった。

 岩村、川崎両氏に限らず、とにかく選手たちはマルティネス氏と一緒にいる時間を楽しんでいた。それに尽きる。

 マルティネス氏のエピソードについては枚挙にいとまがないのだが、ナショナルズ監督就任1年目のスプリングトレーニングでのことだ。選手全員をグラウンドに集め、サヨナラ本塁打でチームが勝った後の祝福法を予行練習したニュースを知り、いかにも彼らしいと微笑ましくなったのを今でも鮮明に憶えている。

 果たして中嶋監督代行と新しいコーチ陣の中から、マルティネス氏のような存在が現れるのだろうか。新生オリックスの雰囲気がどう変わっていくのかを、観察していくつもりだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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