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早くもMLBがシーズン打ち切りか? コミッショナーが選手会専務理事に可能性を通達

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
選手会専務理事にシーズン打ち切りの可能性を伝えたマンフレッド・コミッショナー(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【ESPNが衝撃の報道】

 シーズンが開幕してから1週間しか経過してないMLBが、早くも残りシーズンをキャンセルする可能性が出てきた。

 ESPNが現地時間の7月31日に報じたところでは、ロブ・マンフレッド・コミッショナーが選手会のトニー・クラーク専務理事に対し、このまま選手たちの間で新型コロナウイルスの感染が広がるようであれば、残りシーズンをキャンセルすることになると通告したという。

 ちなみに同コミッショナーは、自らの判断でシーズンを打ち切る権限を有している。

【カージナルスでも複数人の感染を確認】

 開幕カードを終了したばかりの7月27日に、マーリンズでチーム内クラスターが発生したことが判明し、マーリンズと開幕カードで対戦したフィリーズを中心に、公式戦が延期される事態を招いた。

 現時点でフィリーズから選手から陽性反応者は確認されていないが(ただしチームスタッフ2人の陽性反応を確認)、マーリンズの感染者は20人(選手18人、コーチ2人)まで拡大している。

 さらに7月31日なって、マーリンズとはまったく無関係のカージナルスで2人の陽性反応者が確認されたため、同日実施予定だったカージナルス対ブルワーズ戦も延期になった。

 米メディアによれば、カージナルスは遠征先のホテルで自主隔離措置がとられ、改めてチーム全員のPCR検査が実施されたようだ。この検査結果で新たな陽性反応者が出なければ、8月1日から同カードは再開され、7月31日分の試合は8月2日にダブルヘッダーで消化される予定だ。

【わずか1週間で8チームが試合延期に】

 この結果、わずか1週間で8チームが試合延期に追い込まれた。フィリーズ担当のスコット・ローバー記者がツイートしている通りだ(ヤンキースとオリオールズは延期されたカードの代償として、両チームで2試合を戦っている)。

 特にマーリンズとフィリーズは7試合の延期を余儀なくされ、過密日程の短縮シーズンの中で相当に厳しい戦いを強いられることになる。

 またマーリンズは感染した18人の選手がバスでマイアミに搬送されることになったが、彼らはフロリダ州の規則に従い現地到着後に2週間の隔離措置がとられるため、しばらくは満足に練習できない状態に置かれる。

 そうなると選手たちは隔離明けでもすぐに試合復帰するのは難しく、マーリンズはほぼ1ヶ月近くを主力選手無しで戦わなくてはならなくなる。

 もし新たなチームでマーリンズのようなクラスターが発生してしまえば、間違いなくシーズン運営は困難になり、マンフレッド・コミッショナーも苦渋の決断を下さざるを得なくなるだろう。

【選手が規則を守らないことを行政機関が危惧】

 ESPNによれば、州政府や地方行政から選手たちが新型コロナウイルス対策のプロトコル(計画表)を遵守していないとの指摘が出ているという。

 確かに試合中継を見ていても、ベンチ内でマスクをしていない選手がいたり、ハイタッチを交わしたり、ツバを吐くなど、プロトコルで禁止されている行為が行われる姿が映し出されている。

 そのためマンフレッド・コミッショナーはクラーク専務理事に対し、プロトコルの徹底を呼びかけたようだ。

【時期尚早だった?ホーム&アウェイ方式】

 もちろんプロトコルに反する行為は、チーム内で感染者を広げる可能性はある。だがそれはあくまで二次的要素でしかない。もし選手たちが外部からの感染に確実に守られる環境に置かれれば、必然的に選手間の感染は防げるはずだ。

 それ以上に問題なのは、やはり通常シーズン通りのホーム&アウェイ方式を採用したことだろう。試合を地区ごとに分けたとはいえ、過密日程で何度も移動を余儀なくされる。

 しかもフロリダ州などの米国南部地域やカリフォルニア州の西部地域では、現在でも感染が拡大し、死者数も日増しに増えている。そうした地域を移動することだけでも必然的に感染リスクは高まってしまう。

 マーリンズもクラスターが確認されるまで、短期間でマイアミ→アトランタ→フィラデルフィアの移動をしていた。

 ちなみにフロリダ州のウォルト・ディズニー・ワールド(WDW)の1カ所だけでシーズンを再開したNBAでは、選手たちがWDW内に移動し、リーグの徹底管理下に置かれてからは、2週間にわたり1人の陽性反応者も出していない。

 選手たちがプロトコルを徹底したとしても、移動を続ける限り彼らは常に感染リスクに晒されている。果たしてMLBはこれ以上のクラスター発生を防ぐことができるのか。すでに待ったなしの状況だ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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