MLB2020年シーズンの注目点! 濡れた布の携行許可で投手の投球が変わる?

今シーズンは菊池雄星投手もボールの滑りを気にせず投げることができる?(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【2020年シーズンの特別ルール】

 いよいよ現地時間の7月1日に、MLBの全30チームがサマーキャンプの集合日を迎える。

 すでにダルビッシュ有投手がツイッター上でシカゴ入りを報告しているように、他の日本人メジャー選手たちもキャンプが実施されるそれぞれのチームの本拠地に移動することになる(山口俊投手だけはチーム事情でキャンプ地のあるフロリダ州に集合)。

 新型コロナウイルスの影響で活動休止を余儀なくされ、その後はMLBと選手会の労使交渉がスムーズに進まず、最終的にシーズン60試合という短縮シーズンに決着したが、現在も米国南部地域を中心に感染が急激に拡大しており、不安を抱えたままの船出となりそうだ。

 キャンプ開始後にリーグ内で感染が広まるような事態になれば、シーズン開幕すらも危うくなりかねないため、MLBとしても新型コロナウイルス対策に細心の注意を払っているところだろう。

 すでに日本のメディアでも報じられているように、今シーズンは試合前のメンバー表交換を廃止、試合中のツバ吐き禁止、試合中のタバコ、ひまわりの種の使用禁止等々、様々な特別ルールが設定されているのも、その一つだ。

【MLBも“滑る”公式球を認めた?】

 そうした特別ルールの中で、個人的に一際注目しているのが、登板中の投手に濡れた布の携行を許可したことだ。

 ツバ吐き禁止と同様に、投手たちが指先を湿らすために指を舐める行為により、唾液が拡散するのを避けるための措置だが、これが今シーズンの投手に大きな影響を及ぼすことになるかもしれないのだ。

 以前から日本人投手がMLBに挑戦する度に指摘されてきたことだが、MLBの公式球の表面はかなり滑りやすく、手にしっくり馴染む日本のボールに慣れてきた日本人投手が、その違いに適応するのは難しいと言われ続けてきた。

 実際レッドソックス時代の田澤純一投手は左腕に滑り止めを塗っていたとTV解説者から指摘され物議を醸したことがあるし、昨シーズンの菊池雄星投手も帽子のツバに松ヤニをつけているのを指摘され、メディアで騒がれたのを記憶している方も多いはずだ。

 つまり今回MLBが決定した濡れた布の携行許可は、MLBが公式球は滑ると認めた上で、何とか投手たちに指を舐める行為を控えさせようとしていることに他ならない。

【滑り止め対策は公然の秘密だった】

 もちろんMLBの公式球が滑ると感じているのは、日本人投手ばかりではない。すべての投手たちが感じてきたことだ。野球規約上、選手が故意にボールの表面に異物をつけるのは明確な違反行為だが、投手たちが表に出てこない部分で、ボールが滑らないように対策を講じてきたことは公然の秘密だった。

 前述の田澤投手や菊池投手も騒ぎになっただけで、相手チームから抗議の声は上がっていないし、何の処罰を受けていないのは、リーグ全体で投手たちが滑らない工夫をしていることを、誰もが理解しているからだ。

 しかし今シーズンに関しては特別ルール採用により、投手たちは周囲の目を気にすることなく、堂々と濡れた布を使用し、ボールの滑りを抑えることができるようになったのだ。投手の負担を相当に軽減することになるのではないか。

【ここ数年の本塁打量産傾向が変わる?】

 ここ数年のMLBは現場の投手たちから“飛ぶボール”疑惑が噴出するほど、本塁打量産傾向が続いている。昨シーズンの年間本塁打数はMLB史上最多の6776本を記録しているほどだ。

 だがその一方で、年間三振数も毎年のようにMLB記録を塗り替えるような上昇傾向にある(昨シーズンは4万2823を記録)。飛ぶボールを抜きにしても、打者、投手ともに年々パワー化している表れではないだろうか。

 そうしたパワー化した投手たちがボールの滑りを気にせずボールを扱えるようになったなら、果たして彼らはどんなボールを投げるようになるのだろうか。今から気になって仕方がない。まずは濡れた布を使用した、投手たちの反応に注目したいところだ。

 たった3週間のサマーキャンプでシーズンに臨まなければならないことを考えれば、準備という点では圧倒的に打者有利という面は否めない。それでも今シーズンの投手たちに、えも言われぬ期待感を抱いてしまう。もしかしたら、これまで以上の奪三振ショーが見られることになるかもしれない。

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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