今は彼らの後方から支援する時だ! 全マイナー選手の契約&支払い維持を決めたロイヤルズとツインズの男気

全マイナー選手の契約&支払い維持を明らかにしたロイヤルズのデイトン・ムーアGM(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【支払い保証期間終了でマイナー選手を大量解雇】

 MLB各チームで、マイナー選手の大量解雇が続いている。

 現地時間の5月28日になってMLBの多くのチームが、マイナー選手の大量解雇に乗り出したが、複数の米メディアが報じたところを総合すると、確認できただけでも11チームが同日に解雇を行ってとされている。

 さらにAP通信が報じたところでは、マイナーリーグの公式サイトに掲載されている選手情報には、29日だけで200名以上の選手が解雇されているという。

 なぜこの時期に大量のマイナー選手が解雇されることになったのかといえば、明確な理由があるからだ。新型コロナウイルスの影響で活動休止した3月下旬の時点で、MLBはリーグとして、全マイナー選手に対し5月31日まで週400ドルのサラリー支払いを保証することを発表していた。

 ところが保証期間が終了間際になった現在になっても、MLBは支払い継続を表明しておらず、6月1日以降は各チームの判断に委ねなれることになった。そのため試合が出来ず収入源を奪われているチームは、経費削減を図るためマイナー選手の解雇に踏み切ったのだ。

【13チーム以上が残り選手の6月までの支払いを保証】

 だからといって解雇を免れた選手たちが、決して安閑としていられる状況ではない。

 すでに米メディアで報じられているように、アスレチックスは6月1日以降全マイナー選手の支払いを停止する方針だと言われている。

 また野球専門サイトのBaseball Americaによれば、ドジャースやカブスなど計13チームが残り選手の支払いを継続していくようだだが、あくまで6月いっぱいまで。7月になり状況が改善されなければ、残り選手も解雇される危険性もあるのだ。

 その一方で、マリナーズ、マーリンズ、パドレス、レッドソックス、レッズ、アストロズのように、マイナーリーグの通常シーズンが終了する8月いっぱい(レッズは9月7日まで)の支払いを保証するチームも現れているようだ。

【全マイナー選手の契約&支払い継続を発表したロイヤルズ】

 そんな状況下でありながら、ロイヤルズのデイトン・ムーアGMは5月29日に実施されたメディア向けの電話会見で、同チームはマイナー選手を誰1人解雇せず、8月いっぱいまでサラリーを支払い続けることを明らかにしている。

 スポーツ専門サイトのthe Scoreによれば、ムーアGMは会見で以下のように発言している。

 「彼ら(マイナー選手)はずっと野球を成長させてきた存在だ。彼らはその情熱を持ち続けているからだ。その点からも我々は、この時期だからこそマイナー選手を誰1人解雇しないことが非常に重要なことだと思っている。今は彼らを後方から支える時だ」

 ロイヤルズに限らず、同様の判断を下したチームが存在する。ESPNのジェフ・パッサン記者によれば、ツインズもマイナー選手の解雇を行わず、8月まで支払いを続けていくようだ。

【低予算チームの男気な決断】

 ツインズ、ロイヤルズともに、決して潤沢な予算があるチームではない。2020年のMLBの40人ロースターの年俸総額で、ツインズは30チーム中18位で、ロイヤルズは同22位にランクしていることからも、両チームは低予算チームに分類されるチームだ。

 そうした彼らの資金力を考えれば、全マイナー選手に最後までサラリーを支払うことは相当に痛手のはずだ。

 だがムーアGMが指摘するように、低予算チームだからこそマイナー選手を育成しメジャーで活躍する選手を1人でも多く輩出していかねばならない。彼らにとってマイナー選手は将来の財産であり、簡単に解雇すべき存在ではないのだ。

 もちろんロイヤルズやツインズのような決断を下すのは簡単なことではない。それでも少しでも多くのマイナー選手が路頭に迷わないことを祈るばかりだ。

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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