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実は二日酔い状態だった! 10年前の完全試合投手の衝撃告白を機に快挙達成の傾向を考える

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
10年前に達成した完全試合は二日酔い状態だったことを明かしたダラス・ブレイデン氏(写真:ロイター/アフロ)

【完全試合達成投手が10年後に衝撃告白】

 先発投手にとって夢の金字塔といえば、やはり完全試合だろう。

 2010年にMLB史上19人目の完全試合を達成したダラス・ブレイデン氏(当時アスレチックス)が5月9日に達成10周年を控え、『サンフランシスコ・クロニクル』紙で長年アスレチックスの番記者を務めている、スーザン・スラッサー記者に当時の秘話を明かしている。

 オリジナルの記事は有料公開になっているため、スポーツ専門サイトの『the Score』の要約記事によると、ブレイデン氏は二日酔いの状態で試合に臨みながら、快挙を達成してしまったという。

【母の日に感傷的になりデーゲーム登板前日に飲酒】

 ブレイデン氏が完全試合を達成した試合は、母の日のデーゲームだった。通常の同氏はデーゲーム登板の前日に飲酒を控えていたのだが、高校時代に母を失っていたこともあり多少感傷的になり、酒に手を出してしまったようだ。

 試合当日の朝は完全に二日酔い状態で、母親代わりに彼を育てた祖母が自宅を訪れた時はまだベッドで寝ている状態だった。ただ登板日のブレイデン氏は家族に対して無口になるらしく、祖母は声をかけることなく1人で球場に向かってしまったという。

 それでも何とかギリギリ球場入りしたブレイデン氏は、大慌てで準備をして試合に臨んでいたと明かしている。

【過去にも同様のエピソードが】

 実は過去にも、ブレイデン氏と似たようなエピソードを持つ人物がいる。

 1998年に史上15番目の完全試合を達成したデビッド・ウェルズ氏(当時ヤンキース)も、後になって当日は二日酔いの状態で登板していたことを明かしている。

 多少横道に逸れてしまうが、ウェルズ氏の完全試合は個人的に非常に思い出深い。

 当時は伊良部秀輝氏が在籍していたこともあり、かなり頻繁にヤンキースの取材に回っていた。さらにウェルズ氏は伊良部氏と非常に仲が良く、彼から伊良部氏のエピソードをいろいろ聞かせてもらう機会があったこともあり、当時の日本人メディアにとって非常に親しみを持てる存在だった。

 また1995年から現場取材を開始する中で、ウェルズ氏の完全試合が最初に経験した快挙だったのも印象を深くしている。残念ながら快挙達成の場面に立ち会うことができなかったが、達成後に取材に回った際に祝福の声をかけたことも鮮明に憶えている。

【1990年以降の完全試合を調べてみると…】

 今回のブレイデン氏のエピソードに触れ、何気なくウェルズ氏とダブらせていたのだが、突如として二日酔い以外にも両者に共通部分があったことに気づいた。ウェルズ氏もまた5月のデーゲームで完全試合を達成していたのだ。

 そこで興味を感じ、過去の完全試合の達成状況をチェックしてみることにした。昔はナイトゲームが一般化していないこともあり、今回は勝手な基準で、1990年以降ウェルズ氏、ブレイデン氏を含め11度達成された完全試合を調べてみることにした。

【デーゲームでの達成は7度】

 現在のMLBでは圧倒的にナイトゲームが主流になる中で、デーゲームでの完全試合達成は何と11度中7度だった。それだけ高い確率でデーゲームに完全試合が達成できていることを示している。

(筆者撮影/作成)
(筆者撮影/作成)

 あくまで個人的な憶測ではあるが、デーゲームは前日がナイトゲームの場合選手の睡眠時間が短くなることもあり、比較的主力選手に休息が与えられ、控え選手が起用される傾向が強い。そのため先発投手が対応しやすいのではないだろうか。

 またデーゲームは週末やカードの最終戦に組まれることが多いので、曜日別での達成状況を調べてみると、やはり週末に過半数の6度完全試合が達成されている。

(筆者作成/撮影)
(筆者作成/撮影)

【特に5月と7月に集中】

 ただカード日別でみると、確かにカード最終戦で最多の5度達成されているものの、決して集中しているわけではなく、かなり均等にばらついているのが分かる。

(筆者作成/撮影)
(筆者作成/撮影)

 一方で非常に興味深いのが、月別達成状況だ。明らかに5月と7月に集中しており、この2つの月で8度も達成されているということだ。

 これも個人的な憶測の域を超えていないが、5月は開幕から1か月が経過しコンディションが上がりはじめ、また気候も徐々に暖かくなるため。投手にとって好条件が揃うからではないだろうか。

(筆者作成/撮影)
(筆者作成/撮影)

 また7月に関しては、正確な日付を調べてみると、4度ともオールスター戦明けのシーズン後半戦がスタートしたばかりの時期に達成されている。シーズン前半戦の疲労を少なからず回復させ後半戦に入ったばかりなので、やはり投手としていい状態で投げられているからではないか。

 いずれにせよ1990年以降はシーズン終盤の9月に完全試合を達成した投手は存在していない。ただし1990年以前であれば、9、10月で5度達成されていることを付け加えておく。

 残念ながら2012年8月15日にフェリックス・ヘルナンデス投手が達成して以来、しばらく完全試合は達成されていない(NPBに至っては1994年5月18日の槙原寛己氏以来達成されていない)。次回はどんな状況で達成されるのだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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