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苦肉の策? 通常開幕目指すNFLが全チームに対しオフ練習のバーチャル化を義務づけ

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
通常通り9月のシーズン開幕を目指しているNFLのグッデル・コミッショナー(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【NFLがバーチャルプログラムを導入へ】

 米国内で新型コロナウイルスのパンデミックが広がる中、通常通り9月のシーズン開幕を目指すNFLが選手会の同意の下、各チームのオフシーズン活動についてバーチャルプログラムの導入を決めた。ESPNなどの主要メディアが報じている。

 また選手会も今回の合意についてツイート上で発表している。

 NFLのオフシーズンの活動は6月に実施されるミニキャンプまでチーム主導ではなく、選手が自主的に行われるものだが、4月20日以降であればチームごとの判断で個別の選手を呼んで指導することができた。

 だが今年に関しては、こうしたチームの活動に対しチーム施設やグラウンドの使用を禁止するとともに、ミーティングや講習を含めたすべての活動をオンラインで実施することを義務づけた。とりあえず期間は4月20日から5月15日までとなっている。

【NFLの独特な年俸支払いシステム】

 なぜNFLがこんな決定を下したかというと、リーグの独特な年俸支払いシステムも影響しているようだ。

 というのもNFLには、オフシーズンにチームが実施しているプログラムに参加することで、特別ボーナスを受けとる契約を結んでいる選手が数多く存在しているのだ。

 ESPNでNFL番組のホストを務めるフィールド・イエイツ氏によれば、特別ボーナスをもらえる契約を結んでいる選手は250人以上存在し、中には75万ドル(約8300万円)の高額ボーナスを受け取る選手もいるという。

 そうした選手たちの収入を確保する意味もあり、オンラインを使用することでオフシーズンの活動を実施していくことになったのだ。ある意味苦肉の策といえるだろう。

【当面グラウンド練習は禁止】

 とりあえず今回の決定に伴い、バーチャルプログラム期間中は全32チームの施設が使用できるようになるまで、グラウンド練習は禁止となった。つまり国内でパンデミックが終息方向に向かわない限り、5月15日以降もバーチャルプログラムを継続していくことを意味している。

 ちなみにバーチャルプログラムには、特別ボーナスを受け取る契約を結んでいない選手も参加できるが、そうした選手に対してもチームは1日当たり235ドル(約2万6000円)を支払わなければならない。

 またバーチャルプログラムで必要になってくる器具などは、チームが選手1当たり1500ドル(約17万円)まで負担することになった。

【バーチャルでどこまで対応できるのか?】

 通常のオフシーズンでは、新HCを迎えたチームは4月6日から、それ以外のチームは4月20日からオフシーズンの活動を開始できることになっていた。新しい指導者の下では作戦やプレーが大きく変わるため、他チーム以上に準備期間が必要になってくるための措置だ。

 だが今年はNFLと選手会がオフシーズンの活動について協議が続いていたため、結局全チームが4月20日からの始動になってしまった。その分新HC下のチームは、厳しい準備を強いられることになった。

 またどのチームにとっても共通していることだが、果たしてバーチャルだけで選手たちにプレーさせる準備を整えることができるのか、あまりに未知数が多過ぎる。

 果たしてNFLは、9月にシーズンを開幕することができるのだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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