Yahoo!ニュース

サイン盗み問題に納得できていない選手たちを更に憤慨させたコミッショナーの問題発言とは

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
自らの問題発言で選手たちを憤慨させてしまったロブ・マンフレッド・コミッショナー(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【コミッショナーが問題発言で謝罪へ】

 バッテリー組に次いで野手組も合流し、いよいよ本格的にスプリングトレーニングが始動する中、アストロズのサイン盗み問題絡みで騒ぎが収まる気配がまったく見られない。

 それどころかロブ・マンフレッド・コミッショナーがTVの単独インタビュー中に、余りに軽率な発言を行ったことで選手たちの怒りを買い、「自分の発言について謝罪したい。何の言い訳もできない」と謝罪に追い込まれる事態に陥っている。

【事の発端はESPNの単独インタビュー】

 事の発端は、ESPNが実施した単独インタビューで行ったコミッショナーの発言だった。

 インタビュアーからサイン盗み問題に関するアストロズの処罰について2017年のワールドシリーズ王者の剥奪が含まれていないことについて尋ねられ、マンフレッド・コミッショナーは以下のように応えたのだ。

 「彼らの功績がまがい物だという考え方や金属ピース(a piece of metal)を戻せという疑問は無意味なように思える

 マンフレッド・コミッショナーが話す“金属ピース”とは、ワールドシリーズ王者に与えられる優勝トロフィーのことを指したものだ。

 MLBの象徴ともいえる優勝トロフィーを見下すような発言をコミッショナー自らがしたことに対し、選手たちが黙っていられるはずもなく、すぐに一斉攻撃が始まった。

【コミッショナー発言は選手への侮辱】

 例えばMLB公式サイトでカブスの番記者を務めているジョーダン・バスチャン記者はツイッター上に、3度のワールドシリーズ制覇を達成したジョン・レスター投手の発言を投稿している。

 主な内容は以下の通りだ。

 「それこそが自分たちがプレーしている理由だ。金属ピースのためにプレーをしているのだ。私はそれを3度獲得できたことを誇りに思っている。もし彼(マンフレッド・コミッショナー)がそのように感じているのなら、トロフィーから彼の名前を削除すべきだ。

 間違いなく(コミッショナーの発言は)多くの選手たちを傷つけた。特に長年にわたりそれを獲得するために頑張りながらも未だに届いていない選手たちは尚のことだ

 レスター投手が発言している通り、選手たちは誰もがワールドシリーズを制覇し、優勝トロフィーを獲得するために努力を積み重ね、チーム一丸となって長いシーズンを戦っている。今回のコミッショナーの発言は、そうした選手たちの努力を踏みにじるものだと受け取られても仕方がないものだ。

【背景に選手内に燻り続けるアストロズのサイン盗み問題】

 結局マンフレッド・コミッショナーはアリゾナのスプリングトレーニング視察中に記者会見を行い、冒頭で紹介したように謝罪の言葉を口にしている。だが今回の発言は結果的に、アスロトズへの処罰に関するコミッショナーへの不信感をさらに増長させてしまった。

 というのも彼の発言が、現地時間の2月13日にアストロズが実施した記者会見が、選手たちのみならずメディアから猛批判を受けている最中だったからだ。

 この会見でアストロズのジム・クレイン・オーナーは謝罪する一方で、「選手たちは処分を受けるべきではない」や「サイン盗みの行為は試合にインパクトを与えていない」などと発言したことで、すっかり世間から反感を買ってしまい、コミッショナーの処罰が甘すぎるという批判も巻き起こっている状況だったのだ。

 完全に逆風が吹き荒れる中、マンフレッド・コミッショナーはこの局面を収拾することができるのだろうか。今後の言動次第では、自身の進退問題へと発展しかねないほど危険な状態にあるのは間違いなさそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

菊地慶剛のスポーツメディア・リテラシー

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3、4回程度(不定期)

22年間のMLB取材に携わってきたスポーツライターが、今年から本格的に取材開始した日本プロ野球の実情をMLBと比較検討しながらレポートします。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

菊地慶剛の最近の記事