韓国リーグの好条件オファーを蹴りデイヴィッド・サイモンが京都残留を決めた理由

京都ハンナリーズ残留を決めたデイヴィッド・サイモン選手(中央・筆者撮影)

【浜口炎HCが切望した外国籍2選手の残留】

 9月14日から3日間の日程で行われたBリーグのアーリーカップ関西地区で、同大会初出場の京都ハンナリーズが、3連覇を狙う琉球ゴールデンキングスを73-61で下し、初優勝を飾った。

 すでに本欄でも報告しているように、今シーズンの京都はかつて無いほどの大型布陣を揃え、強豪チームとも渡り合える高さを手に入れることに成功。今回のアーリーカップ優勝は、京都の潜在能力を十分に感じさせるものだった。

 そんな今シーズンのロースターを揃える上で、浜口炎HCが最も切望していたのが、デイヴィッド・サイモン選手とジュリアン・マブンガ選手の残留だった。

 「彼ら2人ともう一度やりたいというのが一番だったので、彼らが戻ってきてくれて非常に嬉しく思っています」

【昨季の最長出場時間&最長平均出場時間コンビ】

 昨シーズンのサイモン選手とマブンガ選手は、まさにフル回転の活躍でチームを支え続けた。シーズン開幕前に永吉佑也選手の1年間の出場停止処分が決まったことで、浜口HCは両選手をほぼフル出場させることで、脆弱になったフロントコートを凌ぐ決断を下した。

 その結果、サイモン選手は昨シーズンの出場時間が2163分19秒でリーグ1位、マブンガ選手も1試合平均出場時間が38分15秒で同じくリーグ1位と、両選手ともにシーズンを通してコートに立ち続けた。

 特にサイモン選手はシーズン開幕直前に獲得した選手で、Bリーグで実績十分のマブンガ選手とは違いBリーグに初参戦。しかも年齢はチーム最年長の36歳であり、未知数な部分が多かったが、見事なまでに浜口HCの期待に応え続けた。

 浜口HCが今シーズンも彼らをチームの軸に置きたいと考えたのは、当然の流れといえるだろう。

【韓国からもオファーが届いていたサイモン】

 サイモン選手が京都入りするきっかけになった理由の1つが、昨シーズンに韓国リーグが採用した、外国籍選手に対する身長制限(2メートル以下)だった。

 京都入りする前のサイモン選手は2017-18シーズンまで4年連続で韓国リーグに在籍し、2017-18シーズンには得点及びブロックショットでリーグ1位に輝く実績を誇っていた。しかし204センチの彼はプレーする場を失い、Bリーグに参戦してきたというわけだ。

 ところが韓国リーグは昨シーズン途中に、わずか1年で身長制限撤廃を決定。すぐに韓国メディアも反応し、古巣チームがサイモン選手の復帰を望んでいると報じていた。

 サイモン選手は実際に韓国リーグからのオファーが届いていたことを認めた上で(自分が確認したところでは、韓国リーグの方が京都よりも好条件だったようだ)、京都残留を決めた理由を以下のように話している。

 「またジュリアンと一緒にプレーしたかったのも理由の1つだが、もう1つの大きな理由は彼(浜口HC)のためにもう一度プレーしたかったんだ。

 チームも京都という街もすべてにおいて満喫することができ、チームメイトも素晴らしい選手ばかりでこのチームにいることがすごく心地良かった。

 こんな素晴らしい環境が揃っていれば、京都に戻る決断を下すのは難しくなかった」

【サイモンを京都に惹きつけた浜口HCとの信頼関係】

 サイモン選手の言葉からも理解できるように、浜口HCとの間には確固たる信頼関係が築き上げられていた。

 昨シーズン終盤のことだが、チャンピオンシップ進出がかかった大事な試合で、浜口HCは前日の試合で右ひじを負傷していたサイモン選手を、「左手一本でもいいから試合に出て欲しい」と強行出場させる決断を下し、ネット上では浜口HCの起用法に懐疑的な意見や反対意見が噴出したこともあった。

 だがそうした起用法が成立できたのも、浜口HCとサイモン選手双方がお互いを信頼し、その起用法に納得していたからに他ならない。

 もし浜口HCの起用法に少しでも疑問を抱いていたなら、サイモン選手が京都に戻ってくることはなかったはずだ。

【京都残留の唯一の条件とは?】

 ただ浜口HCが打ち明けてくれたところでは、サイモン選手は京都残留に1つだけ条件をつけていたという。それはオフに家族と過ごす時間だった。

 サイモン選手には、上は9歳から3人の息子がいる。シーズン中はどうしても大切な家族と離ればなれの生活を余儀なくされる。そのためオフの間は少しでも長く家族と時間を過ごしたいとの考えからだった。

 京都としてもサイモン選手の意思を尊重し、他のチームの外国籍選手たちが8月から来日し、チーム練習に参加している中、サイモン選手の来日を9月4日まで待っている。これも浜口HCのサイモン選手に対する信頼の表れでもある。

 実はサイモン選手の京都残留に、彼の家族も一役買っていたようだ。

 「家族会議を開いて、来シーズンは京都にするか、それとも韓国にするかを話し合った。すると家族全員が迷わず京都を選んだんだ。まさに京都残留は、家族全員にとって喜ばしいことだった」

 京都残留を決めたサイモン選手にとって今シーズン最大の目標は、昨シーズンあと一歩のところで届かなかったチャンピオンシップ進出だ。

 「昨シーズンは大事なところで試合に敗れ、チャンピオンシップ進出を逃してしまった。今シーズンはそうした大事な試合で勝っていきたいと思っている。それを成し遂げ、チャンピオンシップに進出することが我々の目標だ」

 今シーズンのサイモン選手も、京都、浜口HCにとって間違いなく頼もしい存在であり続けるだろう。

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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