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ラプターズの最終兵器? コートサイドから相手選手に“口撃”を仕掛ける人気ラッパーの地元チーム愛

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
ラプターズ戦のコートサイドで常に大盛り上がりしているドレイク氏(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【ファイナル第1戦終了直後にウォリアーズ選手といさかい?】

 2018-19シーズンの最後を飾る『NBAファイナル2019』が、30日に開幕した。今回は5年連続出場を果たし3連覇を目指すウォリアーズに対し、1995年のチーム創設以来初のファイナル進出を決めたラプターズが対決している。

 ラプターズは現在、NBA唯一のカナダ(のトロント)を本拠地にするチームで、第1戦はラプターズの本拠地アリーナで行われたため、米国以外で初めてファイナルが実施されるという歴史的な日となった。

 そんな記念すべき第1戦は、カメルーン出身のパスカル・シリカム選手がチーム最多の32得点を叩き出す活躍もあり、ラプターズが118対109で勝利した。一方ウォリアーズにとっては、過去4年間一度も初戦に敗れたことはなく、厳しいスタートになったといえる。

 そんな大勝利で盛り上がるアリーナ内で、終了直後にロッカーに引き上げようとするウォリアーズのドレイモンド・グリーン選手が、コートサイドのファンと言い合いをする姿が中継カメラに映し出された。後から来たステフィン・カリー選手がすかさず割って入り、その場は収まった。

【ラプターズ戦の名物?コートサイドに陣取る人気ラッパー】

 このグリーン選手とやり合った人物が、トロント出身の人気ラッパー、ドレイク氏だ。彼は熱烈なラプターズ・ファンとして有名で、ホーム試合ではコートサイドに陣取り熱い声援をかけ続け、時には相手選手にトラッシュトーク(いわゆる“口撃”)を仕掛け迷惑がられたりしている。

 カナダの地元TV局の報道によると、ファイナル第1戦でも試合前にカリー選手と言葉を交わした際にカリー選手の髪の毛を触る仕草をみせ、その後に自身のインスタグラムで、髪の毛が付着した自分の右手の画像と、以下のようなメッセージを公開したという。

 「自分のeBayでステフィン・カリーの髪の毛を販売する。ユーザーネームは『DraymondShouldntWear23(ドレイモンドは23番を使うべきでない)』だ」

 ということで、すでにSNSを通じて試合前からグリーン選手に、トラッシュトークを仕掛けていたのだ。

【第1戦前のコミッショナー定例会見でも話題に】

 すでにドレイク氏のコートサイドでのパフォーマンスは有名かつ人気を博し、プレーオフ期間中も多くのメディアが取り上げてきている。

 さらにファイナル第1戦前に実施されたアダム・シルバー・コミッショナーの定例会見でも、ドレイク氏のやりたい放題ぶりのパフォーマンスを例に挙げながら、アリーナ内でファンと選手との間で問題が起こらないような環境整備の必要性について質問が飛び出すほどだった。

 だがシルバー・コミッショナーをはじめ、リーグ関係者やOBたちは、ドレイク氏のパフォーマンスがNBAを盛り上がる極上のエンターテインメントとして、彼を擁護する立場の人が大多数を占めている状況だ。

 ドレイク氏に限らず、ニックスやレイカーズの試合を熱心に観戦に来るセレブは多く、彼らの存在もNBA人気を支えているといっていい。

【実はドレイクもウォリアーズ・ファン?】

 ドレイク氏も人気セレブとして、多くのプロアスリートたちとも深く交流している。カリー選手もその1人だ。

実はドレイク氏は、カリー選手と同じくウォリアーズのケビン・デュラント選手の背番号をタトゥーにするほど、彼らの大ファンでもあるのだ。ただ今回のファイナルに限っては、それ以上に地元愛が強いため、今回は2人の敵に回っているというわけだ。

 第1戦終了後に言い争いを演じたグリーン選手も、試合後のインタビューで「喧嘩ではない。お互い殴ったわけでもないし、押し合いもしていない。ただ言葉を交わしただけだ」と気にする様子を見せなかった。

 しかもグリーン選手は翌日に、ドレイク氏のパーカーを来てトロントの街を笑顔で歩く姿を自撮りし、SNSで公開する茶目っ気ぶりを披露している。

 いうまでもなくドレイク氏は、今回のファイナルを盛り立てる貴重な存在になっている。今後もコートサイドの彼から目を離せそうにない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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