Yahoo!ニュース

カブスがベンチから味方選手に容赦ないブーイング! そのユニークな理由とは?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
カージナルス・ファンの嫌われ者になってしまったクリス・ブライアント選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【打席に立つブライアントに味方ベンチからブーイング】

 カブスが今シーズン初のセントルイス遠征で、カージナルスとの3連戦を迎えた。日本ではカード初戦に先発するダルビッシュ有投手に注目が集まっていたと思うが、米国では別件で大きな関心が寄せられていた。

 カード初戦に「2番・三塁」で先発したクリス・ブライアント選手が第1打席に立とうとすると、案の定ブッシュ・スタジアムに集結したカージナルス・ファンが容赦ないブーイングを浴びせかけた。

 そればかりでない。何と味方であるはずのカブスのベンチからも、ブライアント選手に向けてブーイングが起こったのだ。その様子を、カブス戦中継でレポーターを担当するケリー・クルール氏がツイッターに投稿している。

【ブーイングの原因は1月のファン・イベント】

 元々カブスとカージナルスは、ナ・リーグ中地区内で因縁のライバル関係にあるのは広く知られている。だがその一方で、ブライアント選手はMLB屈指のナイスガイといわれてきた人物だ。そんな彼がカージナルス・ファンから嫌われる“事件”が起こっていた。

 今年1月にカブスが開催した、ファン・イベントでのことだった。MLBネットワークなどで解説者を務める、ライアン・デンプスター氏とのトークショーに臨んだブライアント選手が、以下のように発言したのだ。

 「誰がセントルイスでプレーしたいと思うの?すごく退屈(な街)だよ。よく人から『どこでプレーしたいの?』とか『プレーしたくないところは?』とか聞かれることがあるけど、自分はセントルイスがプレーしたくない場所だね」

【カージナルス主力選手も怒り爆発?!】

 このブライアント選手の発言がSNS等を通じて全国各地に発信されたことで、カージナルス・ファンが怒り心頭になったのはいうまでもないだろう。

そればかりか、カージナルス一筋16年目の主力選手であるヤディア・モリーナ選手も、皮肉たっぷりに以下のような発言をインスタグラムに投稿したのだ。

 「単なる愚か者か敗者が、ブライアントがしたようなコメントをするものだ」

 ブライアント選手からすれば、この発言はちょっと軽率な部分があったのは否めない。だがこれを機に、彼はすっかりカージナルス・ファンの嫌われ者になってしまったというわけだ。

【味方のミスもジョークにしてしまうのがマドン流】

 そんな状況下でカブスが今シーズン初めてブッシュ・スタジアムにやって来たのだ。ブライアント選手に怒りを募らせていたカージナルス・ファンが、一斉に容赦ないブーイングを浴びせたのも当然だろう。

 だが何故、カブスのベンチからもブーイングが起こったのか。答えは至って簡単だ。クルール氏が投稿ツイートで「having some fun(楽しんでいる)」と指摘しているように、ブーイングされているブライアント選手をチームみんなでからかっているのだ。

 カブスには選手のちょっとしたミスさえもジョークに変えてしまうユーモアがあるということは、日本でもすでに知られていることだろう。そんなチームの和やかムードを作り出している人物こそが、名将とうたわれるジョー・マドン監督だ。それを物語るように、動画でもマドン監督自ら率先してブーイングしている姿が映し出されている。もちろん選手たちも一緒になって盛り上がっている。

 今シーズンも中地区で首位争いを演じるカブス。マドン監督の下、チームの団結力は今も健在のようだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

菊地慶剛のスポーツメディア・リテラシー

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3、4回程度(不定期)

22年間のMLB取材に携わってきたスポーツライターが、今年から本格的に取材開始した日本プロ野球の実情をMLBと比較検討しながらレポートします。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

菊地慶剛の最近の記事