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NBAコミッショナーが将来的なシーズン途中のカップ・トーナメント戦導入に興味

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
NBAのアダム・シルバー・コミッショナー(写真:ロイター/アフロ)

【米国紙がコミッショナーに電話インタビュー】

 2018-19シーズンを締めくくる『NBAファイナル2019』の開幕を30日に控える中、『ニューヨーク・タイムズ』紙のマーク・スタイン記者が、アダム・シルバー・コミッショナーに電話インタビューを実施し、コミッショナーの将来的な構想を紹介している。

 それによると、元来サッカー・ファンだったというシルバー・コミッショナーは欧州サッカーリーグのように、リーグ王者とは別のタイトルを争うカップ・トーナメント戦をNBAにも導入したい考えがあるとしている。

【コミッショナー「我々は欧州サッカーから学ぶことができる」】

 シルバー・コミッショナーは電話インタビューで以下のように話している。

 「自分の義務として、他の組織を観察しながら彼らから学び、自分たちのリーグをより良くすることが求められる。欧州サッカーのケースを見ても、我々は学ぶことができる。

 もちろん自分の考えについて、伝統を重んじる人たちから反対の声があるのも承知している。わざわざ別のタイトルや大会をする必要はないと考えている。だがそうした意見に対する自分の答えは、組織は新しい伝統を築く可能性を秘めているし、それは一晩で成し遂げられるものではないということだ」

 この発言からも、シルバー・コミッショナーがカップ・トーナメント戦導入にかなり前向きな姿勢だということが理解できるだろう。

【日本でもBリーグ王者と天皇杯の2大タイトル制】

 日本のバスケも2大タイトル制になっている。Bリーグとして公式戦60試合を戦った後、その後プレーオフ(Bリーグでは「チャンピオンシップ」と呼称)でリーグ王者を争うが、これとは別に、日本バスケットボール協会主催の天皇杯・皇后杯全日本バスケットボール選手権大会が存在するため、Bリーグ所属チームにとってはどちらも重要なタイトルになっている。

 厳密にいえば、天皇杯はBリーグ管轄の大会ではないし、Bリーグ所属チーム以外も参加資格がある大会ではあるのだが、結果的にシーズン中に実施される大きなタイトルとして広く認知されており、間違いなくBリーグ・ファンの興味を増加させている。

【障害はシーズン82試合制の過密スケジュール】

 NBAでカップ・トーナメント戦を導入するとなると、やはり最大限の障害になってくるのが試合数だ。1967-68シーズンから現在までシーズン82試合制が導入されているわけだが、現在でも相当な過密スケジュールで、選手はかなりの負担を強いられている。この試合数のままで新たにカップ・トーナメント戦を加えるのは、かなり現実性に欠ける。

 その点についてはシルバー・コミッショナーも重々理解しており、試合数の削減や試合時間の変更(現在の48分から40分に)を含めたリーグ改革について、すでに声を挙げている。もちろんこうした大きな変更はコミッショナーの一存で決めることはできず、最終的にリーグと選手会が合意しなければならない。

【リーグ創設75周年を控えファン目線の改革に前向き】

 こうしたシルバー・コミッショナーの考えの背後には、リーグを取り巻く環境の劇的な変化があるようだ。

 「常にファンの立場から考えるようにしている。急速にメディア市場が変化していく中で、ファンがどんなものを欲しているのかを自ら毎日訴えることができるようになった。そのファンに対し、最高のシーズンと体験をどのように提供できるかを考えている」

 またNBAは2021-22シーズンで、リーグ創設75年目を迎える。記念すべきシーズンを迎えるに当たりさらにリーグの魅力を増すためにも、シルバー・コミッショナーの飽くなき挑戦は続きそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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