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Bリーグで起こった見過ごしてはいけないアクシデントについて考える

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
3日の滋賀戦で左目尻を負傷しながらプレーするジュリアン・マブンガ選手(筆者撮影)

【レフリーがファウルを宣告しなかったプレーが処分対象に】

 滋賀レイクスターズは敵地7日、新加入のヘンリー・ウォーカー選手がBリーグから1試合の出場停止と5万円の罰金処分を受けたと発表した。

 チームが発表したリリースによれば、処分対象となったのは3月3日の京都ハンナリーズ戦で、第2クォーター残り8分28秒ごろ、ジュリアン・マブンガ選手に対して、その頭部へ肘を接触させる行為だと説明している。この試合は現場で取材しており、扉写真にあるようにマブンガ選手は左目尻を切り流血するほどの負傷をしたのを目撃している。ウォーカー選手の行為が故意でなかったとしても、処分は妥当といえるだろう。

 だが指摘しておかねばならないのが、処分を受けるような危険行為があったにもかかわらず、この試合で笛を吹いていたレフリーはこのプレーを見過ごし、ファウルを宣告していなかったのだ。この行為があった直後、マブンガ選手は目尻を押さえながらコート上に倒れ込んだ。明らかに何かが起こったことは間違いなかった。そのため試合は中断したのだが、レフリーはファウルを宣告することはなかった。

 フリーの対応に疑問を持ち、マブンガ選手、浜口炎HCはレフリーに確認を求め抗議した。その一方で、試合会場のハンナリーズ・アリーナに今シーズンから新設されたコートビジョンでは、鮮明な画像でウォーカー選手の肘がマブンガ選手の目尻に当たっている動画が流された。言うまでもなく、ブースターからも不満の声が挙がった。

 もちろん試合はそのまま続行されたのだが、マブンガ選手も治療の後プレーを続けることはできた。選手が流血するほどのプレーであり、レフリー3人の誰か1人がこのプレーを確認できてさえいれば、100%ファウルが宣告される行為だったはずだ。それを確認できなかったこと自体に問題があるはずだ。常にレフリーに正しい判定を求めるのは不可能なのは理解しているが、結局試合終了後もモヤモヤ感が残ったままだった。

【年々レベルアップする試合にレフリーは対応できていない?】

 Bリーグが誕生して3シーズン目を迎えるが、実績ある外国籍選手が続々参戦するようになり、試合のレベルは着実に上がってきている。だがその試合を裁くレフリーたちが、同じテンポでレベルアップしているのだろうか。今シーズンもほぼ毎週のようにBリーグを取材しつけているが、時には明らかに経験不足だと思えるレフリーがコートに立っていることに驚かされることもあった。

 本欄では昨シーズンもプロのレフリーが1人しかいない状況も含め、レフリーの現状について考察している。当時もBリーグの大河チェアマンは「リーグが発展していくことで全体がレベルアップしていきたい」と説明しているが、現場で取材をしていて選手のレベルアップに今もレフリーが追いついていないように感じられる。

【レフリーも重要な試合の要素、判断1つで試合を壊すことも】

 レフリーは試合を構成する上で、選手、コーチと同じくらい重要な要素だ。彼らの判断1つで面白い試合になることもあれば、ブースターも含め皆が不満を持つ試合になることもある。彼らは試合をコントロールするコンダクターなのだ。

 レフリーの判断が間違えば、今回のマブンガ選手のように選手を負傷させてしまうこともある。選手たちはレフリーの裁量の中で最大限のプレーをしようとしている。レフリーに十分な技術が伴っていなかったり、笛を吹く判断があやふやになれば、それだけ選手たちは負傷をするリスクも増してくるのだ。

 バスケットは非常にフィジカルなスポーツで負傷するリスクが高い競技であるのは確かだが、選手たちがプレー中にコートに倒れ込む場面が多かったりする場合、ある程度レフリーの責任でもある。ファウルの線引きを明確にすることで、選手たちは必要以上に激しいプレーをしないように意識するようになるからだ。

【改善策は必ずあるはずだ】

 すぐにでも着手できる改善策はあるはずだ。Jリーグ創生期のように、レフリーのレベルアップを図るため外国人レフリーを複数人採用するのもいいだろう。現在Bリーグを担当するレフリーはリーグ所属ではなくJBA所属なので、現状では制度上、Bリーグが外国人レフリーを採用するのは難しいのかもしれない。また資金的な問題もあるかもしれない。

 だがJBAで採用してもらい、彼らのサラリーをBリーグが補填するようなかたちにすればいいだろう。その分試合のない日は彼らに全国各地で他のレフリーたちに向けた技術講習会を任せれば、外国人レフリーをフル活用できるはずだ。

 またB1リーグの試合に限って少数精鋭のレフリーで臨み、彼らをBリーグ所属に変更するのもいいだろう。現在のようなすべてのチームが同じ日に試合をするのではなく、平日を含め試合日をずらすようにしてけば、ある程度の人数で対応できるはずだ。B1の試合を他案トウできるレフリーを差別化することで、他のレフリーの目標にも成り、レベルアップのモチベーションになるのではないか。

【日本バスケ界に追い風が吹く今だからレフリー改善は待ったなし】

 日本バスケ界には今、間違いなくかつてない追い風が吹き始めている。男子日本代表がFIBAワールドカップのアジア予選で4連敗から8連勝を飾り、自国開催での出場を除き21年ぶりに自力で出場権をもぎ取った。この結果を受け、FIBAから来年の東京五輪に開催国枠としての参加を承認されることも確実視されている。

 さらには日本代表に名を連ねる渡邉雄太選手が田臥勇太選手以来日本人2年目のNBA選手となり、さらに今や日本のエース的な存在になっている八村塁選手が今年6月のNBAドラフトで、日本人選手初の1巡目指名を受ける可能性が高いと言われている。まさに好材料が目白押しだ。

 それを物語るように、日本代表がワールドカップ出場を決めて以降、Bリーグの試合に多くの人たちが会場に足を運ぶようになっている。そうした新たなファン層が固定化してもらうためにも、Bリーグで彼らを満足させる質の高い試合を提供していくしかない。繰り返しになるが、それを実現させるためには選手、コーチだけでなく、レフリーも重要な責務を負っているのだ。

 今は日本バスケ界が迎えたまたとない好機だ。まさにレフリーのレベルアップは待ったなしの状況と言っていいだろう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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