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悪者イメージを拭い去ったアレックス・ロドリゲスにとってジェニファー・ロペスは幸福の女神だった?!

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
ジェニファー・ロペスさんとの婚約を発表したアレックス・ロドリゲス氏(写真:ロイター/アフロ)

【米国の注目カップルが遂に婚約を発表】

 米国で注目を集めてきたカップル、アレックス・ロドリゲス氏とジェニファー・ロペスさんが婚約を発表した。「J-Lo」という愛称で慕われ、世界を舞台に活躍するエンターティナーであるロペスさんの婚約とあり、このニュースは米国はもとより世界中を駆け巡り、日本でのスポーツ芸能の枠を超え一般紙のサイトでも大きく報じられることになった。

 ただそれらの報道は「ロペスさんが元ヤンキースのロドリゲス氏と婚約」と、どうしても彼女メインだった感がある。スポーツライターの立場としては、ちょっとロドリゲス氏から今回の婚約を考察してみたくなった。

 最近のロドリゲス氏はMLB界でも引っ張りだこの存在になっていた。ESPNでも解説者を務め、その軽快で絶妙なトークからすっかり視聴者の人気をものになっている。だが現役生活を終えた頃の彼は、明らかに社会から悪者として扱われていた。

【MLB界屈指の悪役だった?A-Rod】

 ロドリゲス氏といえば「A-Rod」という愛称で知られ、MVP受賞3回、オールスター戦出場14回を数え、右打者として歴代2位の697本塁打を記録するなど、MLB史上類い稀なスラッガーとして活躍したが、グラウンドの去り方は寂しいものだった。2016年のシーズン途中に、当時所属していたヤンキースからリストラされたのだ。

 当時のロドリゲス氏は2007年オフにヤンキースと10年間総額2億7500万ドル(約303億円)の長期大型契約で結んでいたのだが、成績不振もあり年俸に見合った活躍ができないこともあり、“不良債権”として契約を1年半残しながらヤンキースから解雇された。手厳しいヤンキース・ファンからも、チームの判断が好意的に受け取られるほどだった。

 そもそもロドリゲス氏はFAとして2000年オフに10年間総額2億5200万ドル(約278億円)でレンジャーズに移籍した頃から、世間の彼に対するイメージが悪くなっていった。前所属先のマリナーズ・ファンは、大型契約を選んだ彼がシアトルに戻ってきた際に球場内に偽のお金をばらまき(そんなにお金が欲しいのならくれてやるという皮肉)容赦のない罵声を浴びせた。

 さらに当時薬物問題が球界を揺るがす中、ロドリゲス氏も使用を疑われた人物の1人に名を連ねていたのだが、最初は使用を真っ向否定する態度をとりながら、薬物使用が厳密に罰則化されると急きょ過去の使用を認めるなど一変する態度をとり、そのイメージは輪をかけて下がっていった。結局彼の周りで薬物問題は消えることはなかった。

【悪者イメージをJ-LOが完全払拭?】

 それだけに現在のロドリゲス氏の人気ぶりは隔世の感がある。彼が現役当時のヤンキースではロドリゲス氏が悪者で、デレック・ジーター氏が“ミスター・ヤンキース”として絶大な支持を得ていた。だが一昨年オフにジーター氏のグループがマーリンズ買収に成功し、彼がCEOとして主力選手を次々に放出して大胆なチーム改革を断行すると、ジーター氏のイメージも急激にダウン。今ではロドリゲスとの間で完全なる逆転現象が起こってしまったようだ。

 こうしたロドリゲス氏のイメージアップに間違いなく手助けになったのがロペスさんだ。2人の交際が公になってからは、2人揃って表舞台に登場する機会が増え、さらにロドリゲス氏、ロペスさん双方がSNSを通じて仲むつまじい姿を公開したことで、ロドリゲス氏の爽やかさがどんどん拡散されていくことになった。

 もしロドリゲス氏がロペスさんと交際していなかったから、こんな短期間で彼のイメージを一変できたか疑わしい。まさにロドリゲス氏にとってロペスさんは幸福の女神だったのだ。少し昔の表現を使わせてもらえば、ロペスさんは“アゲマン”といっていいだろう。

元々は超ナイスガイだった?A-Rod

 それではロドリゲス氏のイメージはどちらが正しいのかといえば、現在の好感イメージの方が彼の本質に近いと思う。というのも個人体験で、彼が超ナイスガイだという実感をしているからだ。

 ロドリゲス氏がまだマリナーズに在籍していた当時、佐々木主浩投手の取材で何度もマリナーズの取材に回っていた。すでにロドリゲス氏は押しも押されもせぬチームの若き大黒柱であり、メディアからも常に関心を集める存在だった。

 そんなロドリゲス氏にある日の遠征試合で、個人的に取材をお願いしたことがあった。恐縮ではあったのだが、彼のことではなくマイナーリーグ時代に数ヶ月間だけ一緒にプレーしたことのあるマック鈴木投手について聞きたかったからだ。そうした事情を説明した上で、彼は「時間ができたら問題ない」と即答で引き受けてくれたのだ。

 だが上手くタイミングが合わず試合前の練習が始まってしまったので、半ば諦めかけていた。というのも、遠征チームの試合前練習が終了すると、メディアはクラブハウスへの入室が禁止されるため取材機会がなくなるからだ。

 ところが、だ。ロドリゲス氏は練習終わりに自分を見つけると「今からなら大丈夫だよ」と声をかけ、自らセキュリティの確認をとってくれクラブハウスに招き入れてくれたのだ。そこからお互い着席した状態で10分ほどのインタビューに応じてくれたのだ。ロドリゲス氏の余りに紳士的な対応に、すっかり感激したのを今でも忘れることができない。

 ようやく彼らしい本来のイメージを取り戻した、ロドリゲス氏の幸せを願いたい。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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