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エンゼルスが戦々恐々?! ブライス・ハーパーのマイク・トラウトへの勧誘発言がタンパリング疑惑に

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
マイク・トラウト選手のフィリーズ入りを熱望するブライス・ハーパー選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 MLB史上最高額の13年総額3億3000万ドル(約363億円)でフィリーズと契約したブライス・ハーパー選手が最近放った発言が話題になっている。

 問題となった発言はフィラデルフィアのラジオのインタビューに答えたもので、現在MLB随一の選手とされるマイク・トラウト選手について「(トラウト選手がFA選手になる)2020年に自分がマイク・トラウトにフィリー(フィラデルフィアの愛称)に来るよう声をかけないと思うんだったら、それは正気ではないだろう」と話したものだ。

 さらにハーパー選手は以下のように話している。

 「トラウトだろうが誰だろうが、フィリーに来たいと考える大物FA選手なら誰にでも声をかけるだろう。そしてこここそが来るべき場所だ。ファンは最高だし、オーナーは理解ある人たちであり、監督も素晴らしいと伝えるだろう」

 その内容がトラウト選手をフィリーズに勧誘するかのようなものだったため、敏感に反応したのがエンゼルスだった。というのも現在のエンゼルスにとって、2020年で契約が満了するトラウト選手との契約延長が最重要課題となっている。ハーパー選手が大型契約でフィリーズ入りが決まってからは、エンゼルスがトラウト選手に10年総額3億5000万ドル(約385億円)を提示していると報じられている。

 エンゼルスはこのハーパー選手の発言を受け、彼の発言がタンパリング・ルールに違反しているのではないかとMLBを確認を求めたようだ。ビリー・エプラーGMは地元紙に対し「我々はMLBに連絡をしている。現時点ではこれ以上のコメントはできない」と話し、MLBに連絡をしたのを認めている。

 エンゼルスがここまでナーバスになるのは理由がある。トラウト選手はフィラデルフィア郊外のニュージャージー州ミルビル出身で、現在もフィラデルフィアを本拠地とするNFLイーグルスの大ファンであり、小さい頃からフィリーズが憧れのチームだったことで知られている。そうした背景がある中で、フィリーズに新加入し、トラウト選手とも親交のあるハーパー選手からの勧誘とも受け取れる発言が飛び出したことで、契約延長交渉に悪影響を及ぼすのではと戦々恐々となったと見るべきだろう。

 ただ大方の米メディアはエンゼルスに対し、冷ややかな見方をしている。仲の良い選手同士でそれぞれの所属チームの情報交換をするのは当たり前のことで、今回の発言がタンパリングには当たらないという意見が多い。ESPNのジェフ・パッサン記者は以下のようなツイートを投稿し、すでにMLBはエンゼルス、フィリーズと話し合いを行っており、近々何からの判断がなされる模様だが、罰金程度で大きな処罰はないと予測している。

 当のハーパー選手は改めて地元メディアの取材に応じ、今回の発言について「多少言われたが、MLBからはなかった」とし、「本気でなかったら、あんな発言はしていない。その時が来てFA選手になり、何が起こるのかを見守りたいと思う」と気にしている様子はなかった。その模様をフィリーズの番記者の1人が動画を以下のような動画をツイートしている。

 また一方の当事者のトラウト選手も「もちろん(ハーパー選手の発言を)見ている。彼は今のチームに興奮しているんだろう。自分が彼の発言についてコントロールできない」と冷静に受け止めている。果たしてハーパー選手の言葉は、トラウト選手の胸に響いているのだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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