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Bリーグ最強の鉄人選手! 京都のデイヴィッド・サイモンが抱くコートに立ち続ける覚悟

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
ここまでリーグ1位の出場時間を誇るデイヴィッド・サイモン選手(右・筆者撮影)

 Bリーグは現在、全チームがシーズンの2/3に当たる40試合を戦い終え、代表活動のため3週間の小休止に入っており(B2とB3は現在も続行中)、チャンピオンシップ進出を賭けた終盤戦は3月2日から始まる。

 シーズン3年目を迎えたBリーグは外国籍選手及び帰化選手の起用ルールが変更になったこともあり、過去2シーズンと違い明らかに外国籍選手偏重傾向が色濃く表れている。それに伴い、強力な外国籍選手が揃っている新潟アルビレックスBBや富山グラウジーズなどが、例年以上に素晴らしい成績を残していることからも明らかだろう。

 その分外国籍選手たちがコートに経つ時間は長くなるので、彼らの出場時間も飛躍的に伸びている。今シーズンここまでの総出場時間をチェックしてみると、上位10選手中日本人選手はわずか2人しかいない状況だ(7位の五十嵐圭選手と10位の川村卓也選手)。

 中でも毎試合ほとんどの時間をコートに立ち続け、大車輪の活躍をみせる鉄人ぶりを発揮しているのが、京都ハンナリーズのデイヴィッド・サイモン選手だ。ここまで全40試合にすべて先発出場し、総出場時間は1498分21秒でダントツの1位に躍り出ている。2位にランクインしているレオ・ライオンズ選手でも1440分43秒なので、1試合以上分余計にコートになっている計算になるほどだ。

 これまで過去2シーズンで最長出場時間を記録しているのは、2017-18シーズンに宇都直輝選手が記録した2035分18秒だが、サイモン選手がこのまま故障なく現在のペースで全60試合に出場すると、計算上は2247分になり難なくリーグ新記録を樹立することになる。

 元々今シーズンの京都の浜口炎HCは、開幕前から外国籍選手の負担増を予告していた。日本人ビッグマンの永吉佑也選手が1年間の出場停止処分を受け、外国籍選手とローテーションを組める選手が存在しないための苦肉の策だった。浜口HCは「試合が壊れない限り外国籍選手は38分は出てもらう」と発言していた通り、サイモン選手の平均出場時間は37分27秒で、もう1人の外国籍選手のジュリアン・マブンガ選手も37分58秒に達している。

 そうした状況の中で週3試合の過密日程を戦ってきたのだ。さすがのマブンガ選手も負傷や疲労のため33試合の出場に留まっているのにもかかわらず、チーム最年長36歳のサイモン選手が全試合出場を貫いているのだから脱帽するするしかないだろう。

 「ずっと試合に出ていれば、必ず疲れは出てくる。それは仕方がない。ただしっかりシーズンに臨めるように、夏にトレーニングを積んできたし、自分も長時間出場するつもりでいた。コーチたちも自分の体調を気遣ってくれ、うまくコントロールしながら起用しようとしてくれている。

 シーズンの中盤を過ぎてもいい感じできていると思う。もちろん選手として誰もがどこかに痛みが出てきたりしているものだ。だがそれを抱えながらプレーを続け、休日にしっかり体調を整えていくのが重要になってくる」

 今シーズンはBリーグ初参戦だったサイモン選手。しかも開幕直前で京都入りが決まったため、チーム練習はほとんどできないままシーズン開幕を迎えた。プレースタイルや試合日程が変わる中で本来なら微調整期間が必要になってきてもおかしくないところだが、それでも開幕から期待通りの活躍を披露。昨シーズンは韓国リーグで得点王に輝いた実績に偽りはなく、ここまで得点部門で2位(1試合平均24.1得点)、ブロックショット部門2位(同2.2ブロックショット)にランクインし、しっかりチームの大黒柱を担っている。

 何とも頼もしいサイモン選手だが、浜口HCも彼の献身ぶりに賞賛を惜しまない。

 「いつも練習の際に(選手たちは)その日の体調とメンタル面の数字を0から10に表して提出するんですけど、彼はいつも基本的にはメンタルは10で体調も高い数字を書く選手で、ハイメンテナンスではないというか、自分で身体を大切にする選手で基本(体調について)聞くとOKなので…。でも(最近の)動きを見ると、すごくいいと思います」

 浜口HCが説明しているように、サイモン選手がここまで出場し続けられるのは長年海外リーグを渡り歩き、彼なりに培ってきた経験に裏付けされた体調管理があるからだ。

 「韓国リーグでも37分とか38分とか出場していたからね。まあ慣れている部分はあると思う。自分の中でルーティンも確立しているつ、どんな時に自分は何をしたいのかも分かっている」

 その一方で、この3週間の小休止はサイモン選手にとって大きな休養期間になり、マブンガ選手とともに心身ともにリフレッシュして残り20試合に臨むことができるだろう。

 年末年始は5連敗と一時は勝率5割を切る厳しい戦いを強いられたが、サイモン選手がラストスパートをかけてきそうな京都が終盤戦にチャンピオンシップ進出争いに絡んでくるのは間違いなさそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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