コミッショナーをして「レフリーも人間だ」と言わしめたNFL史上最大級の誤審騒動の中身とは?
2019年シーズンのNFL王者を決める米国最大のスポーツイベント「第53回スーパーボウル」が今週末、アトランタで開催される。
3年連続通算11度目の出場となるAFC王者のニューイングランド・ペイトリオッツに対するのは、17年ぶりにNFC王者に輝いたロサンゼルス・ラムズ。両チームともカンファレンス優勝決定戦を延長戦で制しての出場だけに、今から熱戦が期待されるところだ。
だが世紀の一戦を前に例年とは違い、米国内に手放しでスーパーボウルを待ち侘びることができない雰囲気が広がっている。NFC優勝決定戦で巻き起こった誤審騒動が今も大きな関心を集めているからだ。
すでにNFLファンの方々は周知のことと思うが、改めて説明しておくと、ラムズとニューオーリンズ・セインツが対戦したNFC優勝決定戦で、20対20で迎えた第4クォーター残り1分49秒からのセインツの攻撃で“事件”が起こった。
敵陣深くに攻め込んだセインツが「サード(ダウン)&10」から選択したのはパス攻撃だった。セインツQB(クォーターバック)から右ライン上を走るセインツWR(ワイドレシーバー)にパスが投じられたが、パスが到達する前にラムズCB(コーナーバック)が接触し、WRのパス捕獲を妨げているのだ。
もし問題のプレーを直に確認したい方は、lNFLがYouTube上に試合のハイライト動画を配信しているので、そちらをチェックして欲しい(問題のプレーは9分48秒辺りから始まる)。
このCBの行為は明確な反則で「パス・インターフェアランス」に相当する。しかしこのプレーに対してレフリーが反則を宣告しなかったのだ。試合はそのまま続けられ、直後にセインツはFG(フィールドゴール)を決め勝ち越しに成功したものの、第4クォーター終了間際にラムズに同点FGを決められ延長戦に突入。さらに延長戦でも決勝FGを決められ敗れ去っていた。
もしレフリーが反則を宣告していたならば、セインツに反則行為があった敵陣残り5ヤード付近からファーストダウンの権利が与えられ、TD(タッチダウン)を奪う絶好機を迎えられていたのだ。もし仮にそこでTDを奪うことに成功していたならば、ラムズに追いつかれることなくセインツが勝利していたかもしれないのだ。セインツが100%TDを奪えたわけではないとはいえ、彼らにとって納得いかない敗戦になったのは間違いない。
もちろんこの誤審騒動を、メディアが一斉に報じた。スポーツニュースばかりか朝の情報番組等でも話題として取り上げるほどの大騒ぎになった。誰もがレフリーの判断に疑義を呈し、「本当に正しいチームがスーパーボウルに進出できたのか?」という声まで挙がった。また米国ではスポーツ賭博が合法のため、セインツに賭けていた人たちがNFL相手に提訴する可能性も報じられるなど、騒動は鎮静化する様子は一向になかった。
そうした中、遂にロジャー・グッデル=コミッショナーが現地30日、この件に関して発言したのだ。
「ファンのフラストレーションは理解できる。その一方で我々のレフリーが人間であることも分かっている。彼らは難しい局面で瞬時の判断をしなければならない。常に正しい判断ができるわけではない」
その発言からも理解できるように、コミッショナーは反則が宣告されるべきプレーだったと誤審を認めている。NFL規則ではコミッショナーが判定を覆し再試合を実施させる権限を保有しているようだが、その可能性については否定している。このままスーパーボウルは実施されることになる。
だがNFLでは他のプロリーグに先駆けてビデオ検証(チャレンジ制度)を導入するなど積極的に誤審と向き合っており、今回の騒動を受け制度の見直しを検討していく方針だという。
果たしてセインツ関係者やファンは、どんな心境でスーパーボウルを観戦するのだろうか。