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21歳で四大大会連覇を成し遂げた大坂なおみは女子テニス界のタイガー・ウッズになれるか?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
四大大会連覇と世界ランキング1位を同時に成し遂げた大坂なおみ選手(写真:ロイター/アフロ)

 大阪なおみ選手が昨年の全米オープンに引き続き全豪オープンでも初優勝を飾り、四大大会連覇と世界ランキング1位を同時に成し遂げた。

 もうすでに世界中のメディアが賞賛とともに詳細について報じているので、今さら大坂選手の偉大さをこの場で論じる必要はないだろう。ただ優勝後にツイッターのトレンドワードで世界一に輝いたことからも理解できるように、世界中のファンが大坂選手という新たなスター誕生を諸手を挙げて迎え入れているのだ。

 人々が大坂選手にスター性を見出している理由の1つは、21歳という若さと彗星のごとく表舞台に登場した将来性なのではないだろうか。すでに報じられているように、四大大会初優勝から連覇を達成したのは2001年のジェニファー・カプリアティ選手以来のことだが、当時の彼女は24歳で選手としてピークに近い状態だった。それだけ21歳での四大大会連覇はとんでもない偉業といっていい。

 実は大坂選手に決勝で敗れたペトラ・クビトバ選手は21歳で四大大会(全英オープン)初優勝を経験しているのだが、2度目の優勝を飾るまでに3年を費やしている。試合後の記者会見で当時の精神状態を聞かれ、以下のように答えている。

 「自分にとっては若くしてとてつもない大きなことが起こったという感じでした。実際すべての状況を把握できていませんでしたし、驚きでしかありませんでした。正直にいえば、たぶんまだ優勝する段階ではなかったと思いますし、準備もできていなかったと思います。(その状況に)慣れるまで時間もかかりました。

 (優勝後は)外部から、そして自分自身からも常に大きなプレッシャーがありました。もっといいプレーをしたい、すべての試合に勝たなきゃいけないと…。だってグランドスラムで優勝したのですから。いつもそんな風に考えるようになりました。自分自身で必要以上に大きなプレッシャーをかけていました。

 人々の注目にも慣れる必要があります。コートに立てば、いつでもその試合のお気に入り選手になります。そして相手選手は自分を倒すことを目指しています」

 たぶん大坂選手も、当時のクビトバ選手と同じような精神状況の中で全豪オープンを迎えていたはずだ。それでも彼女はすべてを克服し、頂点に登り詰めたのだ。その姿に多くのファンがスター性を感じずにはいられないだろう。

 昨夜の決勝後、全豪オープン主催者がYouTubeに配信している大坂選手の優勝セレモニー動画をチェックしていたら、ある視聴者が英語で以下のようなコメントを投稿していた。それを見た瞬間、これこそが世界中のファンが大坂選手に抱いている大きな期待なのだと実感する思いだった。

 「自分はナオミがテニス界で女性版タイガー・ウッズになるだろうと感じている」

 ウッズ選手といえば、大学を中退し20歳で鳴り物入りでプロ入りすると、翌年には史上最年少の21歳でグラウンドスラム(マスターズ)に初優勝を飾ることに成功。しかも2位に12打差をつけるという史上最大差でも圧勝劇だった。この衝撃的勝利を皮切りにゴルフ界を席巻し続け、世界中で一大センセーションを巻き起こすことになったのは誰もが周知のことだろう。

 すでにファンの中には大坂選手の若さと将来性に、そんなウッズ選手と重ね合わせるほどの期待感を抱いているのだ。これからも彼らの期待に応えるような活躍を続けていけば、大坂選手は近い将来、日本スポーツ界史上最強のアスリートとして世界中で認知されることになるだろう。

 ただクビトバ選手の発言からも理解できるように、四大大会連覇を果たしたことで21歳の大坂選手にはこれまで以上のプレッシャーがのしかかることになる。待ち受けているのは常に期待を背負い続ける茨の道だ。だが全豪オープンでメンタル面の急成長ぶりを見せつけた大坂選手なら、そうした困難も乗り越えていけると信じたい。

 まだシーズンは開幕したばかりだ。果たして大坂選手がどこまでテニス界を席巻することになるのか、ファンならずとも高揚感を抑えることができない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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