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MLBを捨てNFL入り!? アスレチックスのドラフト1位選手がNFLドラフトの申請手続きへ

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
マレー選手のNFLドラフト申請を報じるMLB公式サイト(MLB公式サイトより)

 MLB公式サイトをはじめ米複数メディアが現地9日に報じたところでは、昨年9月にアスレチックスからドラフト1巡目指名を受けた後、チームから許可をもらい昨年12月まで大学に残りフットボール選手を続けていたカイラー・マレー選手が、今年4月に実施されるNFLドラフトへの申請手続きを行う予定だという。

 マレー選手に関してはすでに本欄でも昨年12月に紹介しているが、ドラフト指名後オクラホマ大に残った彼は同大フットボールチームのQB(クォーターバック)として大活躍し、昨年12月に大学フットボールの年間最優秀選手に与えられる『ハイズマン賞』を受賞。授賞式の場でMLBとNFLの二刀流挑戦に興味を示していた。

 第一報を報じたオークランド地区の地元紙『サンフランシスコ・クロニクル』紙によれば、マレー選手はまだ学年が3年(成績不十分で1年間公式戦出場できなかった「レッドシャツ・ジュニア」)のため、卒業前の学生がNFLドラフトの対象選手になるためには13日までに申請手続きをしなければならず、その意思を固めたという。

 元々マレー選手と彼のエージェントを務めるスコット・ボラス氏は、2月から始まるスプリングトレーニングからアスレチックスで本格的に野球選手として始動することを表明していたが、もしNFLドラフトへの申請手続きをすると、スプリングトレーニングに予定通り参加できなくなってしまう。というのも、NFLのドラフト対象選手は2月26日から開催するリーグ主催のショーケース『NFLコンバイン』に参加しなければならず、スプリングトレーニングと重複してしまうためだ。

 さらにNFLからドラフト指名された場合、チームの司令塔を務めるQBというポジションからNFLチームとしてはMLBとの二刀流に否定的な姿勢をとられることが予想され、マレー選手はMLB、NFLのいずれかを選択せざるを得ない可能性が高くなってくる。前述の地元紙の報道によればその場合、関係者はマレー選手がMLBよりNFLでプレーしたい方向に向いていると話している模様だ。

 以上の事情からマレー選手がNFLへ専念する道を選択したとなると、アスレチックスは大きな痛手を被ることになる。すでにマレー選手と契約合意しており、支払われた契約金(460万ドル)は全額返金されるものの、マレー選手のドラフト指名権はそのまま残り、補充のドラフト指名権を受け取ることはできないため、マレー選手がMLBに戻ってくるのを待たなければならなくなるのだ。

 ただ現時点ではQBとしては身長が低い(178センチ)マレー選手がNFLから確実にドラフト指名を受けるのか、また指名されたチームからNFL専念を求められるのか等々、あまりにも不確定要素が多すぎる。またNFLとMLBの二刀流ができる可能性も決してゼロというわけではない。

 個人的には久々に2競技の二刀流選手が誕生するのを期待したいところだが、もう少し行方を見守るしかない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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