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「できれば両方やりたい!」 米国で久々に誕生するかもしれない2競技をこなす二刀流選手の期待感

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
かつて同時にMLBとNFLに在籍していたディオン・サンダース選手(写真:ロイター/アフロ)

 米国でにわかに1人の大学アスリートの発言が注目を集めている。

 アスリートの名はカイラー・マレー選手。オクラホマ大フットボールに所属する3年生QB(クォーターバック)で、今シーズンはパス、ランともに卓越したオールラウンド選手として大活躍をみせた。チームはすでに今シーズンの公式戦すべてを戦い終え、チームはマレー選手の活躍もあり12勝1敗で全米ランキング4位(現在)で終了。今月29日に行われる『オレンジ・ボウル』で、大学王座を決める『大学フットボール・プレーオフ・ナショナル・チャンピオンシップ』(1月7日開催)への出場権を賭け、同1位のアラバマ大と激突することが決まっている。

 さらにマレー選手個人の目覚ましい活躍も評価され、大学フットボールの年間最優秀選手に与えられる『ハイズマン賞』の最終3候補の1人に選ばれている。同賞は毎年最終3候補を集め、ニューヨークで受賞者発表と授賞式を実施しているのだが、受賞者発表前日(12月7日)に行われたメディア会見で、マレー選手は以下のように発言したのだ。

 「可能であるならば、自分は両方やってみたい」

 この“両方”が何を意味するかといえば、フットボールと野球の2競技を指している。実はマレー選手は今年6月に実施されたMLBドラフトで、アスレチックスから1巡目指名(全体で9番目)を受けており、すでにアスレチックス入りで契約合意しているのだ。だが彼はアスレチックスから許可をもらい大学に残り、フットボール選手としてプレーし続けていた。そしてフットボール選手としても輝かしい成績を残し、できればフットボールにおいてもプロレベルでやりたい気持ちを明らかにしたというわけだ。

 このマレー選手の発言に対し、MLB公式サイトも関心を示し記事にまとめている。果たして2競技をこなす二刀流選手が誕生するのか、やはり関心が集まるところだ。ちなみに同記事でも紹介しているのだが、これまで同時期にNFLとMLBの両リーグに在籍していた選手はすでに存在している。中でも有名な2選手はボー・ジャクソン選手とディオン・サンダース選手だろう。

 ジャクソン選手はフットボール選手として1985年にハイズマン賞を受賞した逸材でありながら、野球選手としてもそれ以前の1982年にヤンキースから2巡目でドラフト指名を受ける有望選手だった。もちろん大学卒業年の1986年にはNFLでもバッカニアーズから全体の1位指名を受けている。

 プロのキャリアをスタートさせたのはMLBからだった。1986年にドラフト指名されたロイヤルズと3年契約を結び、同年シーズンにMLB昇格を果たすと、翌年に今度はNFLのレイダーズからドラフト指名を受け、フットボール選手としてのキャリアも同時進行させることを決めた。その後左臀部の負傷でフットボールからの撤退を余儀なくされるが、4年間は二刀流選手として活躍している。

 二刀流としての実績では、ジャクソン選手よりサンダース選手の方が上だ。1988年にヤンキースから30巡目でドラフト指名(自身2度目のドラフト指名)を受けた後、翌年にファルコンズから全体の5番目でドラフトされ本格的に二刀流をスタートさせる。ドラフト指名順位が示しているように、当時のサンダース選手はフットボール選手に比べ野球選手としての評価は決して高くなかった。

 評判通りフットボール選手としてはCB(コーナーバック)として非凡な才能をみせ、3年間の引退時期を挟み5チームを渡り歩きながら計14年間NFLに在籍し、2度のスーパーボウル王者、8度のプロボウル(NFLのオールスター戦)出場を果たしている。また野球選手としても1989年にMLBデビューを果たして以降、2001年まで9年間(一時フットボール選手に専念)で計4チームに在籍し、公式戦に計641試合に出場するなど、長期に渡って二刀流を続けていた。彼らの例もあるように、マレー選手の才能からすれば十分に二刀流選手として活躍できるだろう。

 ただMLB公式サイトによれば、マレー選手の代理人を務めるスコット・ボラス氏は、来年のスプリングトレーニングからマレー選手がフル参加することを明らかにしており、さらにマレー選手自身も以前のインタビューで「自分はNFLでもプレーできると思っているけど、現時点ではそれ(NFL挑戦)を諦めるというのがプランだ」と話しているという。

 今回マレー選手が二刀流挑戦の希望を明らかにしたことで、NFLが彼ほどの逸材を放っておくことはできないだろう。あとはアスレチックスが彼の希望を叶えるためにどこまで譲歩・協力してくれるかにかかってくる。

 シーズンが重なる時期があるMLBとNFLで二刀流に挑戦するのは決して簡単なことではない。だが久々に2つの競技で活躍する二刀流選手を見てみたいという個人的な欲求はかなり強くなっている。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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