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データも実証! 今季ライアン・ロシターが見せるシューターとしての成熟

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
シューターとして安定感を増したライアン・ロシター選手(筆者撮影)

 Bリーグ初代王者の栃木ブレックスがシーズン開幕から順調な戦いを続けている。昨シーズンは序盤戦につまずきシーズン途中でHCの交代劇にまで発展していたが、安齋竜三HCが就任以降チームは徐々に立ち直りワイルドカードでチャンピオンシップ進出に成功。今シーズンは安齋HCの下、盤石の態勢で開幕を迎え、ここまで千葉ジェッツと並んでリーグ最多の21勝を記録している。

 チーム好調の理由はいろいろ考えられると思うが、その1つに挙げられるのがライアン・ロシター選手の“躍進”だろう。NBL時代の2013-14年シーズンからブレックス入りして以来、常にチームの主力であり続けたロシター選手だが、Bリーグ3年目を迎え明らかな変化を見せている。

 これまでロシター選手に関しては、強力なリバウンダーというイメージが強かったが、今シーズンは重要な局面でボールを預けられる、信頼できるシューターという新たな表情を加えている。

 それはデータも実証している。過去2シーズンと比較して、シューターとしての安定感は抜群に増しているのだ。FG成功率(括弧内は3Pシュートの成功率)とFT成功率を見てみると、2016-17シーズンはFGが50.7%(28.4%)で、FTが44.5%で、2017-18シーズンはFGが46.5%(33.9%)で、FTが42.6%──だったのに対し、今シーズンはFGが53.3%(65.1%)で、FTが65.1%──といずれの数値も飛躍的に向上しているのが分かる。

 もちろんシュートが安定すれば、自然と得点力も上がってくる。ここまでの平均得点は自身最高(NBL時代を含め)の23.8得点を記録し、得点部門でダバンテ・ガードナー選手に次ぎリーグ2位にランクしている。12月8日の琉球ゴールデンキングス戦では52得点を記録し、リーグ最多得点記録を塗り替えるような爆発力も披露している。

 果たして今シーズンのこうした変化について、ロシター選手自身はどう感じているのだろうか。

 「試合には常に積極的な姿勢で臨んでいるだけだ。コーチも自分に信頼を置いてくれているし、チームメイトもいつも『どんどんアタックしてシュートを打て』と声をかけ続けてくれている。そうした環境が自分をアタックするように仕向けてくれているんだ」

 今シーズンのチーム内ではロシター選手がより積極的にシュートを狙っていける環境が整っているようだ。だがどんどんシュートを打てるからといって自然と安定感が増すわけではない。その点に関しては常にコーチと一緒に個別でシュート練習を欠かさずに続けながら技術向上に努めているという。

 また前述のデータが示す通り、特に飛躍的に向上しているのが3Pシュートの成功率だ。長距離シュートが決まるようになりシュート範囲が拡大したことで、より相手チームがマークしにくい選手になり、チームとしても攻撃の幅が広がったという相乗効果ももたらしている。

 例えば12月22日の大阪エヴェッサ戦では、ロシター選手は前半無得点に終わり、チームも22対33と大差をつけられていたが、後半に入りロシター選手を中心に猛反撃に出て、74対70と逆転勝ちを果たしている。ロシター選手の後半だけのFG成功率は実に71.4%(2Pシュートが11本中8本成功で、3Pシュートが3本中2本成功)と、完全に手がつけられない状態だった。結局チーム最多の24得点を記録している。

 「我々は常にオープンショットを創出できる素晴らしいチームだ。自分はどんな時でもボールを回して欲しいと思っているし、積極的にシュートを打っていくことに自信を持っている。

 とにかく皆でボールを回しながらシュートを狙っている。ジェフ(ギブス選手)はインサイドに強いし、エンドウ(遠藤祐亮選手)も素晴らしいシューターで積極的にアタックしている。そうしてスペースを作りながら最高のシュート機会を見つけ出している。

 もし(マッチアップする選手が)大きくて強靱な選手だったらややプリメーターからシュートを狙い、相手が小さい選手だったらポストを多用するようにしている。そうしたミスマッチをうまく利用して攻撃するよう心がけている」

 今シーズンのロシター選手は明らかにシューターとして成熟を見せている。ただ安齋HCは彼が時折見せる不安点を指摘している。

 「チームでやっている時はいいと思います。ただ52点とった時は1人でやっちゃってて、(12月12日の)東京戦ですかね。33点とった時も、東京さんは逆にそこ(ロシター選手の攻撃)はOKというディフェンスをしてきて、そこだけになってしまったり…。

 (22日のエヴェッサ戦も)前半とかに得点が欲しいから自分で勝手に1対1でいっちゃったりしていて、まったく(相手を)崩したオフェンスになっていない時に、それで逆に流れが悪くなったりするので、そこは反省して後半はしっかり流れをつくったりだとか、球離れも良かったですし、そういうのをやれば点数が伸びるというのを本人が自覚しないと、彼が得点しないとチームも下がってしまうので…。

 自分が点数をとるために何をしなければならないかというのを、もうちょっと把握して試合に入ってほしいなというのはあります」

 これは安齋HCがロシター選手に期待し、攻撃面でも彼に託しているからこその提言でもある。彼が安齋HCが期待する通りのシューターの域に達した時には、ブレックスはさらに安定した強さを発揮することになるのだろう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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