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マリナーズで“内野手兼投手”の二刀流に挑戦することになった大谷翔平元同僚の実力は?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
新天地のマリナーズで二刀流に挑戦することになったカレブ・コワート選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ウィンター・ミーティングが開幕し、チーム解体&再建に取り組んでいるマリナーズが最初にとった行動が、二刀流選手の獲得だった。

 MLB公式サイトが現地10日に報じたところでは、マリナーズはエンゼルスからウェーバー公示されていたカレブ・コワート選手をピックアップするとともに、ジェリー・ディポトGMは同選手にスプリングトレーニングから、“内野手兼投手”として二刀流に挑戦させる考えを明らかにした。

 コワート選手は2010年にトップランキング高校選手としてエンゼルスからドラフト1巡目指名(全体で18番目)を受けた。高校時代は野手と投手の二刀流として活躍をしていたが、プロ入り後は野手に専念し、マイナー、メジャーを通じて登板経験は一度もない。だがマリナーズは投手としての素質に注目し、プロの世界でも二刀流に挑戦させたいと考えたようだ。

 もしコワート選手が本格的に二刀流選手になった場合、その幅の広さでは大谷翔平選手を超えることになるだろう。大谷選手はあくまで先発投手と指名打者の二刀流だが、コワート選手はエンゼルスでユーティリティ選手として内野すべてのポジションと左翼の守備についている他、さらに打撃は高校時代からスイッチ打者を続けている。すでに野手としてマルチな活躍をしていたところに、投手にも挑戦することになるわけだ。

 そこで気になるのがコワート選手の二刀流としての実力だが、結論からいえば素質的には大谷選手と比較するようなレベルではない。だが彼とは違ったタイプの二刀流選手になれる可能性は十分にある。

 まず打撃に関してだが、野手として頑張ってきたエンゼルスからウェーバー公示されたという時点で、ここまで期待通りの活躍ができなかったことを意味している。2015年にメジャー初昇格を果たし昨シーズンまでの4年間、メジャーに定着することはできなかった。通算成績も162試合に出場し、打率.177、6本塁打、33打点しか残せていない。

 3Aでは2017年に打率.311、12本塁打、57打点を残し、昨シーズンも打率.287、6本塁打、45打点を記録していることを考えれば、現時点では打撃面はまだメジャーレベルに達していないといっていい。

 続いて投手に関してだ。高校時代のスカウティングレポートを確認してみると、高校時代は豪腕投手との評価を受けていたようだ。真っ直ぐの球速は94~95マイル(151~153キロ)を計測し、さらに鋭い曲がりをみせるカットボールとチェンジアップを投げていたようだ。確かに高校生投手として十分な素質を披露している。

 プロ生活9年を経て体格的には高校時代を凌ぐ筋力をつけており、ある程度球速アップの可能性がある。さらに190センチという身長を考えると、確かに投手として面白い存在になりそうだ。あとは10年ぶりの投手復帰でどこまでフォームを固めることができるかだろう。

 もしスプリングトレーニング中に投手として使えると判断された場合、マリナーズがコワート選手をユーティリティ選手としての役割に加え投手としてどのように起用していくのか実に興味深い。あくまで個人的な考えではあるが、普段はユーティリティ選手役をこなし、先発ローテーションの谷間にブルペンデーを採用した際に先発で1、2イニング投げるという起用法なら十分に対応可能ではないか。それができるようになれば選手としての幅が広がり、多少の打撃力不足でもメジャーに定着できるようになるだろう。

 いずれにせよ大谷選手の登場で、MLB内で二刀流に対する考え方が変わってきているのは間違いない。今後も様々なタイプの二刀流選手が誕生していくかもしれない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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