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京都に緊急加入後すぐに結果を出したシャキール・モリス 実はあのシャキール・オニールの愛弟子だった!

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
京都ハンナリーズに緊急加入しすぐに結果を出したシャキール・モリス選手(筆者撮影)

 6日に京都ハンナリーズに緊急加入したシャキール・モリス選手が、翌7日に行われた大阪エヴェッサ戦でいきなり先発出場し、17得点、8リバウンド、5アシストを記録する活躍をみせチームの勝利に貢献。チーム合流後1度だけの練習にもかかわらず、見事にチームの期待に応えてみせた。

 モリス選手にとって本当に慌ただしい数日間だった。前所属先の三遠ネオフェニックスから契約解除の発表があったのが11月2日のこと。当初の予定では7日に帰国する予定になっていた。ところが同じ2日にハンナリーズに異常事態が発生していた。チームの要ともいえるジュリアン・マブンガ選手がライジングゼファー福岡戦で右手首を負傷。翌3日のリターンマッチには出場できず、そこまでシーズン未勝利のライジングゼファーに47対100と大敗していたのだ。

 そこでマブンガ選手の長期欠場が確定したハンナリーズは急きょモリス選手の獲得に乗り出し、5日に彼との接触に成功(チームによると米国契約の携帯電話しか持っておらず、Wi-FiがつながるLINEでしか連絡がとれない状態だった)。何とかその日の夜に京都入りさせ、翌6日の午前中に慌ただしくメディカルチェックを済ませることに成功し、エヴェッサ戦の出場登録を間に合わせることができた。浜口炎HCも「メディカルチェックから登録まで本当にギリギリでした。フロントの人たちが凄く協力してくれたことが今日の勝利に繋がったと思います」と本音を漏らしている。

 チーム練習に1回参加しただけで、まだチームメイトの名前もほぼ知らない状態でいきなりの実戦。それでも34分30秒に出場し、上記のように即結果を残している。経験豊富なハンナリーズのベテラン日本人選手たちがモリス選手の能力をうまく引き出した面もあるとは思うが、間違いなく彼のバスケIQと順応性の高さがあったからこそだ。浜口HCは今後も外国籍選手としてフル回転させることを明言し、以下のように説明している。

 「アンダーサイズですけどリバウンドに絡んで1人でとる力がありますので、(エヴェッサ戦は)オフェンスリバウンドも4つ絡んでいます。ハッスルプレイヤーだなと試合中に感じたので、うちのチームにフィットするんじゃないかなということと、あとはパスが上手です。カットしている選手によくパスを通していたので、マサ(片岡大晴選手)であったり、達哉(伊藤選手)であったり、カットが得意な選手には非常によく合う選手だと思います」

 もちろんモリス選手も急きょ舞い込んできたハンナリーズからのオファーに喜びを表すとともに、わずか1試合の出場ながらハンナリーズのチームカラーにフィットできそうだと実感しているようだ。

 「本当に慌ただしかった。1回の練習だったけど、コーチが我慢しながらしっかり説明してくれた。今日の試合もミスコミュニケーションがあってもおかしくなかったけど、みんながしっかりコミュニケーションがとれ、自分たちのゲームプランを遂行でき、勝利を挙げることができた。

 コーチを含めてチームシステムが素晴らしいと感じた。(新入りの)自分も含めチームのみんなが一緒になってまとまってプレーしている。自分にとってそこに入っていくのがすごく楽だった。まだすべてのチームオフェンスを理解しているわけではないが、コーチもチームメイトも自分を信じてくれ、すべてが機能してくれるようにしてくれている。自分にとっては完璧なフィットだと感じている。

 (出場時間が長いのも)嬉しいことだ。コートに立ち続けて少しでもチームの勝利を助けることができるんだからね。(今日も)少し疲れているけど(笑)、だがプレーし続けることは本当に楽しいし、それによってさらにチームメイトと深く繋がることができる」

 ところでモリス選手のファーストネーム「シャキール」は米国でもかなり珍しい。ただこの名前は米国で広く浸透している。殿堂入りを果たしているNBA界で伝説的な選手の1人、シャキール・オニール氏の存在があるからだ。やはりモリス選手も、オニール氏にあやかって命名されたものだった。

 「祖母が名付け親なんだ。自分が生まれた1994年当時シャキール・オニールは誰もが知るビッグな選手だったからね。祖母の願いが叶ったのか、自分も大きく育っていったよ(笑)」

 モリス選手とオニール氏の繋がりは名前だけではなかった。実はオニール氏から直接バスケの指導も受けているというのだ。

 「今もシャックの電話番号を持っている。凄く仲のいい友人だ。自分がNCAAトーナメントに出場した時に彼が自分のプレーを観に来てくれ、自分もいいプレーができていたんだ。そしたら彼からコンタクトしてくれて、わざわざ会って話をしてくれたんだ。その後も一緒に時間を過ごしたり、一緒に練習したこともある。今の自分にとって本当に大きな師匠のような存在だ」

 モリス選手はウイチタ州立大1年の2014年に、全米大学王座を決めるNCAAトーナメントに出場している。その際にオニール氏が試合会場まで足を運びモリス選手のプレーに興味を抱いたことを機に、現在も親交が続いているのだという。

 そしてモリス選手はさらに衝撃的なプランを明かしてくれた。

 「実はシャックに自分のプレーを観に日本に来てくれないかと話をしているところなんだ。それが実現できたから最高だね」

 現在のオニール氏はTV局でNBA解説者を務めるなど、引退後も超多忙な生活を送っている。果たしてモリス選手の夢が実現し、オニール氏は来日してくれるのだろうか。彼がBリーグのコートに現れただけで、間違いなく日本のバスケファンたちは大騒ぎになることだろう。

 

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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