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再び34億円超えの攻防か? クレイトン・カーショーの契約延長が今オフFA市場に与える影響力

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
ドジャースと3年間の契約延長に応じたクレイトン・カーショー投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ドジャースは現地2日、エース左腕のクレイトン・カーショー投手と総額9300万ドル(約105億円)で3年間の契約延長に合意したと発表した。

 カーショー投手は2013年に総額2億1500万ドル(約243億円)の7年契約を結んだ際に、2018年シーズン終了後に契約解除できるオプション権を得ていた。今回ドジャースと契約交渉した結果オプション権を行使せず、残り2年を残す現行契約を破棄し、新たに2021年までの3年間の契約延長に合意したものだ。

 現行契約は残り2年で総額6500万ドル(約73億5000万円)が保証されるものだったが、新たに契約延長を結んだことで、カーショー投手が受け取る1年当たりの年俸は150万ドル減額されることになった。だがMLB界屈指の辣腕記者、ケン・ローゼンタール記者がツイートしているように、登板試合数やサイヤング賞投票結果によるインセンティブが加わっており、それらをクリアすれば現行契約の年俸を上回ることができるようだ。

 「今も変わらず自分にとって最も重要なことは勝つことだ(他チームへ移籍するのではなくドジャースに残留することを指している)。また今回の合意で、多くの人たちに誤りをただす機会を与えられた。特に今シーズンは、多くの人から自分は下降線を辿っており、もう昔のような投球はできないと言われた。そうした意見が間違っていたことを証明できるのを楽しみにしている」

 契約延長に合意した後、メディア対応したカーショー投手は以上のように話しているのだが、彼が認めるように、ここ数年は故障にも泣かされ、3度のサイヤング賞に輝いた(2011、13、14年)当時のような投球ができなくなっていた。特に今シーズンは明らかに球威が落ち、8年連続で記録してきた二桁勝利も途絶えてしまう中での契約合意だった。

 そこで重要になってくるのが、ここ最近は厳しい評価を受けていたカーショー投手に、ドジャースが向こう3年間にわたり年俸3100万ドル(約35億円)を保証したということだ。この契約延長は間違いなく、今オフのFA市場に大きな影響を及ぼすことになるだろう。

 読者の方もご記憶の通り、昨年のオフはFA選手にとってかなり厳しいオフになった。2016年12月に発効した統一労働協約の下で迎えた初めてのオフということで、チーム側は高額契約を提示することに慎重になり、大物FA選手たちの契約が例年以上に遅れた。昨オフ一番の大型契約を結べた1人はダルビッシュ有投手で、契約が合意したのもキャンプイン直前のことだった。

 しかもダルビッシュ投手の契約は、総額1億2600万ドル(約142億円)の6年契約で、1年当たりの年俸は2100万ドル(約24億円)に留まるものだった。それまでは大物FA選手といえば、年俸3000万ドル(約34億円)前後の大型契約が相場になっていたMLBで、昨オフは年俸高騰化を是正する方向にシフトチェンジしているかに見えた。

 だが今回ドジャースが懐疑的な見方が多くなっていたカーショー投手に高額の年俸を保証したことで、再びその基準が上がってしまった。大物FA選手に対してある程度の大型契約を提示しないと、獲得できなくなったことを意味している。特にこのオフは、ともに26歳のブライス・ハーパー選手、マニー・マチャド選手という2大FA選手が控えており、間違いなく彼らを獲得するために、年俸3000万ドル前後の攻防が繰り広げられることになるだろう。

 まさに今回のカーショー投手の契約延長合意は、今オフのFA市場を高騰化へと導く役目を果たしているのだ。昨年煮え湯を飲まされることになった選手会とエージェントは、さぞや喜んでいることだろう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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