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Bリーグと代表の掛け持ち生活 33歳の竹内譲次が休むことなくコートに立ち続ける理由

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
A東京と代表で献身的なプレーを続ける竹内譲次選手(右端・筆者撮影)

 昨年のリーグ覇者、アルバルク東京が開幕から順調な戦いを続けている。ここまでシーズン第6節が終了した時点で8勝2敗と、東地区で栃木ブレックスに1ゲーム差の2位につけている。

 だが順調に勝ち星を積み重ねている一方で、チーム状態は決して盤石なものとは言い切れない。開幕前からの過密日程に加え、竹内譲次選手、田中大貴選手、馬場雄大選手の主力3選手が代表活動のため、なかなかチーム練習にも参加できないまま開幕を迎えており、開幕前に十分な準備ができたわけではなかった。

 過密日程の最大の要因が、開幕直前に実施されたFIBAアジアチャンピオンズカップにリーグ代表として参戦したことだ。残念ながら準優勝に終わったものの、日本勢として久々に同大会に出場し、見事決勝進出を果たしている。シーズン開幕前に国際大会の舞台で5試合もの真剣勝負を戦っているのだから、心身ともに選手に大きな負担をかけているのは疑いようのない事実だ。

 第6節に敵地で京都ハンナリーズと戦い、1勝1敗に終わったルカ・パヴィチェヴィッチHCは、チームの現状について以下のように話している。

 「本来なら開幕3日前に(FIBAアジアチャンピオンズカップで)6日間で5試合戦うようなスケジュールはあってはならないことだ。こうした日程は本来、代表チームが夏場で戦うようなものだ。またそうした過密日程の後は、1週間の休みがあり、チームとして準備する時間が与えられる。今回の影響はこれからも我々につきまとうことになるだろう。だが我々はそれを受け入れた上で、全力でたたかっていくことを決意している」

 そうした状況下で、特に負担が強いられているのが代表活動を続けている上記3選手だ。彼らはすでに代表でも常連組であり、フリオ・ラマス代表HCにとっても必要不可欠な存在だ。シーズンが開幕しても年内にFIBAW杯のアジア地区2次予選が控えており、今後もアルバルクと代表活動を両立していかねばならない。

 中でも3選手中最年長33歳の竹内選手の負担は相当なものだ。アルバルク、代表いずれにおいても、貴重な日本人ビッグマンとして彼が果たしている役割を担える存在は他にいないといっても言い過ぎではない。もう長く代表活動を続け、休まずコートに立ち続ける生活を過ごしていることに、当の竹内選手自身はどのように感じているのだろうか。

 「ずっとコーチから『厳しい日程はあるけどそこを言い訳にするな』といわれていて、僕自身はポジティブに捉えられているというか、やはり個人のレベルアップとしては長いスパンで見たら、リーグへの調整という意味では、他のチームより厳しい部分はあったとは思いますけど、それ以上に海外のトップのチームの選手とやれる経験というのはなかなかないものでして、その中でそういう経験が得られたので…。

 もちろん体力的には厳しい部分があるかもしれないですし、ケガのリスクも…、今日もけが人が出てしまった(26日のハンナリーズ戦でミルコ・ビエリツァ選手が負傷退場している)という意味では、そういう蓄積疲労とか、そういう部分がもしかしてあったかもしれないですけど、けが人が出たとしても他のメンバーでカバーできるように、去年から引き続いて同じメンバーでやれているという利点があると思います」

 今シーズンの竹内選手が特筆すべきなのは、昨シーズンより出場時間が増えている(平均出場時間が昨シーズンの20分55秒から24分39秒に増加)ことだ。今シーズンから外国籍選手と帰化選手の出場ルールが変更になり、すべてのクォーターで外国籍選手は2名、さらにそこに帰化選手1名も同時出場できるようになったことで、各チームの外国籍選手の出場時間が増している中で、同じポジションの竹内選手が出場時間を延ばしていることこそ、パヴィチェヴィッチHCの信頼感、チーム内での存在感の大きさを表しているのではないだろうか。

 「自分としてはコーチから評価を得られているか、自分で判断したくない部分であるんですけど、やはり自分自身33歳から34歳になる年で、コーチからは、まだ成長できる、33、4歳でまだ終わりだと思うな、そのためには毎日やり続けることが大事だ、毎日1つの練習、1つのポゼションをしっかりやり切ることが大事だといわれているので…。

 結果として今20分以上試合に絡めているという意味では、チーム戦力として思ってくれているとは思うんですけど、そこで満足するというか、そこがベースではなくて、(出場時間の)分数に関係なく、1つの試合、1つのポゼションで自分がやるべきことを集中してやることがその先にある自分のレベルアップになると思っています。

 アルバルクとしての竹内譲次と、代表での竹内譲次の役割は違いますし、代表でやっていることがすべてアルバルクに還元できるかは分からないんですけど、いろんなバスケットを経験して、いろんな状況に対処していく能力というのは…。もちろんバスケットというのは目まぐるしく状況が変わるスポーツで、まして今日みたいに5番の選手がケガで出られなくなって、そういった時に代表で5番をやっていた経験が今日の試合で少なからず生きたと思いますし、どういう状況であれ与えられた仕事というのを地道にこなしていくというのが大切だというのを、ここ1、2年ですごく痛感しているので、それがもしかしたらそういった面を評価してくださる方がいるのかなと思います」

 竹内選手がこれだけ真摯な姿勢でバスケに向き合えているのは、今彼自身が日本国内におけるバスケの価値観が変わり始めているのを実感できているからに他ならない。

 「やっぱりモチベーションは高いです。今日本のバスケットが変わろうとしている状況で、明るい兆しも見えて、ファンの皆さんの会場でのリアクションもまったく違います。

 代表でいえば(W杯)予選が4連敗で始まって、そこからオーストラリアに勝って4連勝っていう意味で、すごく日本のバスケットは勢いに乗っているというか、明るい兆しが見えてきている中で、もっと代表が強くなる、その一端を担えることが今のモチベーションなので…。

 今は体力的にキツいとか思わないというか、やはりやりがいの方が上回るので、引退してあの時キツかったなとかは思うかもしれないですけど、今はすごく楽しめている状況ですね」

 現在の竹内選手が背負っているものは計り知れないほど大きいものだ。とにかく負傷なくアルバルクと代表の活動を両立して欲しいと願うばかりだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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