「また戻ってきます!」 3年ぶりに来日した元阪神マートンがみせた日本への無償の愛と神への忠誠

茨木市の子供たちを集め野球教室を実施したマット・マートン氏(筆者撮影)

 2010年から阪神に6年間在籍し、昨季限りで現役を引退したマット・マートン氏が、大阪北部地震や台風21号で被害を受けた関西圏の被災地を支援するため3年ぶりに来日し、チャリティ・イベントを実施するなど地元の人たちと精力的に交流した。

 今回のマートン氏の来日は、彼が敬虔なクリスチャンであることがその根底にある。実はマートン氏は阪神に在籍した頃から、『Fellowship of Christian Athletes(以下、FCA)』という組織を通じて日本国内で様々な慈善活動に従事していた。FCAとは1954年に米国で設立された組織で、イエス・キリストの導きによりスポーツを通じて世界中のアスリート、コーチたちを繋ぐことを目的に、世界各地で様々な慈善活動を展開する。FCAの日本代表を務めるウィル・トンプソン氏も、今回のマートン氏の支援活動に深く関与している人物だ。

 「7年前にFCAが日本に開設してから、マットは積極的に我々の活動に携わってくれていました。彼のお父さんもコーチとしてFCAの活動に参加しており、マットもFCAの活動に理解がありました。彼が日本に来ることになった際に他のスタッフから紹介してもらい、それ以来の付き合いで、今では仲のいい友人でもあります。

 マットとは米国に戻ってからもずっと連絡を取り合ってきましたが、彼はいつも日本に恩返しする機会を模索していました。そんな中で今年6月に地震が起きた時に、彼らから『自分が何かできることはないか』という連絡が入り検討を続けてきました。それから約1ヶ月前に『9月になら来日できそうだ』という話になり、そこから関係者と話を進めながら神のご加護もあり、こうしてスケジュールを調整することができました」

 トンプソン氏が説明しているように、今回の来日はマートン氏が6年間滞在した関西圏が地震、台風で被災したことが経緯になっているのは確かだ。だが同じくトンプソン氏が指摘するように、彼は2015年に日本を離れてからも、ずっと日本に恩返しする機会を模索し続けていた。仮に被災していなかったとしても、遅かれ早かれ間違いなく、マートン氏は日本の地を踏んでいたはずだ。それは本人も認めている。

 「自分の家族も6年間過ごした日本を常に恋しく思ってます。日本での生活は私たちを成長させ、人生を変えてくれた経験になりました。その感謝の気持ちを表したかったのです」

 このように自分と家族の人生を変えるような経験をさせてくれた日本に恩返ししたいと考えていたマートン氏。滞在中は交流する人たちに同じメッセージを送り、励まし続けた。

 「個々では困難なことでも、一緒になれば乗り越えられるものです。一緒に頑張りましょう!」

 マートン氏といえば、阪神1年目の2010年シーズンに年間214安打を記録し、当時イチロー選手が保持していた年間安打数を塗り替えたことで一躍有名になった。結局阪神在籍6年間で通算打率.310を残す活躍をみせ、チーム史上でもファンから最も愛された外国人選手の1人だろう。その人気ぶりは今も衰えることがなく、訪れた先々で大歓迎を受けることになった。

 「(今回の日本の人たちの対応に)圧倒され、感動しています。こうした気持ちはお互いが感じていると思います。それは家族も同じ思いだからこそ、自分は今ここにいます。

 米国に戻ってからもずっと日本との絆を失ったことはありません。今も生活しているテネシー州ナッシュビルで日系社会とお付き合いしています。我々にとって(日本は)一部なのです」

 18日に茨木市で実施された子供向けの野球教室には、平日にもかかわらず市内の小さな公園を埋め尽くす見学者が殺到した。教室が終了した後も、わざわざ足を運んでくれた見学者にも感謝するように、マートン氏自らベースボールカードを手渡しする気配りをみせた。そして公園を離れる前に彼らに向かい、こう語りかけた。

 「わざわざ来てくれてありがとうございます。今回初めて日本に戻ってこられましたが、これが最後ではないと思っています。また戻ってきます!」

 マートン氏と日本はこれからも永遠に繋がっていくのだろう。

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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