エースと呼ぶに相応しい投球を続ける日本ハム新加入のニック・マルティネスが抱くこだわり

MLBでも主に先発として活躍していたニック・マルティネス投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 MLBでは先発投手の活躍度を評価する指標として重要視されるのが、登板試合数、投球イニング数、クオリティ・スタート(6イニング以上3失点以下)数になる。勝敗にかかわらず年間を通じて故障せずどれだけ安定した投球を続けたのかを理解することができるからだ。そしてチームのエース格として期待される投手たちは「30試合以上、200投球イニング以上」というのが最低ノルマとなっている。

 一方NPBはというと、現在の主流は各チームともに先発陣を6人揃え、週1回登板が定着している。公式戦数もMLBより19試合少ないこともあり、今や登板数が30試合を超えることはほとんどない。直近では2014年にランディ・メッセンジャー投手と則本昂大投手が達成しているのが最後だ。もちろん投球試合数が減れば投球イニング数も減少してしまう。ここ最近は200投球イニング達成者もかなり減っている。2015年に前田健太投手、大野雄大投手の2人が到達して以来誰も到達していない。

 そんな中、200投球イニングを目標に掲げ、開幕から好投を続ける投手がいる。今シーズン日本ハムに新加入したニック・マルティネス投手だ。MLBでも主に先発として活躍し(88試合中68試合に先発)、通算17勝の実績を誇る同投手は、まさに典型的なMLBタイプの先発投手だ。

 勝敗こそ1勝2敗だが、ここまで中5日間隔で3試合に登板し、全試合でクオリティ・スタートを達成するとともに、そのうち2試合で完投している。投手分業制が定着した現代野球の中で、確実にリリーフ投手陣に休養を与えることができる投手といえる。

 「ここまで捕手、投手コーチとしっかりゲームプランを立てた上で、それをしっかり遂行できている。チームとして練習を重ねながら準備してきたからね。(来日前は)日本の野球スタイルなど多少知識は得ていたけど、実際に経験を積みながら学んでいる最中だよ」

 マルティネス投手は相手打者をパワーで圧倒するタイプではない。ヒットを許しながらもしっかり投球術を駆使しながら最少失点に抑えていくのが心情だ。その分本人が話しているように、ゲームプラン、捕手の要求通りに投げ切れる投手としての高い資質が求められる。

 「自分のスタイルは思い通りに制球しながら、どんどんストライクを投げていくことだ。日本の打者はミートがうまく、辛抱強く打ってくる。こちらとしては自分の狙い通りにストライクを投げ、打者にどんどんバットを振らせたいと思っている。自分ができることはゲームプランをしっかり遂行することだけだ。それで抑えられれば嬉しいし、打たれたとしても次の打者に向かっていくだけだ。

 個人的な最大の目標は200投球イニングを投げることだ。もちろん日本では試合数が少ないことは知っている。でも少しでも200イニングに近づけるように頑張りたい。それは毎試合長いイニングを投げないと不可能だし、長いイニングを投げるということは常にチームに勝つチャンスを与えることを意味している。それこそが先発投手にとっての究極の目標だからね」

 安打を打たれようとも恐れずにストライクを投げ続ける積極性を失わない。そうすることで球数を抑え長いイニングを投げることが可能になってくる。もちろん自分の投球ができなければ滅多打ちにあう危険性も孕んでいる。だからこそ調子に左右されず、ゲームプラン通りに自分の投球ができる高い技術力と精神力が必要になってくる。

 だからと言ってマルティネス投手は長いイニングを投げることを意識しているわけではない。結果として長いイニングを投げられるようにするための準備に最大限の努力を続けている。

 「常に9イニングを投げようなんて意識していない。ただ登板前に9イニング投げるだけの体調とゲームプランをきちんと準備をするようにしている。その中で9イニング投げられる状況をつくれるのであれば、しっかり投げ切るつもりだよ」

 まだシーズンは開幕したばかりだ。チーム数が少ない日本では同じチームと何度も対戦しなければならず、それだけ相手チームに手の内も読まれてしまう。マルティネス投手もこれから研究されていくことになる。その中でどれだけ自分の投球を続けられるかが成功のカギになってくるだろう。

 果たしてマルティネス投手は3年ぶりに200投球イニングの大台に乗せることができるのだろうか。彼が米国で培ってきた投球術に注目してみたい。

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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