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長年の相棒を失った名将ジョー・マドンの采配に変化の可能性は?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
今やMLB屈指の名将と謳われるジョー・マドン監督。相棒無しで迎える今季の采配は?(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 MLBの2018年シーズンがいよいよ開幕した。日本でも大谷翔平選手、平野佳寿投手、牧田和久投手──の3選手が新たに加わり、興味が尽きないところだ。個人的にも様々な点に関心を寄せているのだが、中でも注目しているのがカブスのジョー・マドン監督の今シーズンの采配だ。

 マドン監督について多くの説明は必要ないだろう。エンゼルスで長年マイナー監督やメジャー・コーチを務めた後、2006年からレイズの監督に就任。既成概念に囚われないユニークな指導法、人心掌握術で若手有望選手を育て上げレイズを強豪チームに変貌させることに成功。そして15年にカブス監督に就任し、16年にはチームを108年ぶりのワールドシリーズ制覇に導いている。今や誰もが認める名将の1人だ。

 だが今シーズンからマドン監督は長年タッグを組んでいた“相棒”を失った。08年から彼の下でベンチコーチを務めていたデーブ・マルティネス氏がナショナルズ監督に就任したためチームを去ったのだ。実はマルティネス氏がベンチコーチに就任するまでレイズは2年連続で負け越していたが、彼が加わった1年目でワールドシリーズ初進出に成功し、結局タッグを組んだ10シーズンで負け越しはたった1度だけ。それ以外は常にプレーオフに進出するという輝かしい成功を収めている。

 ベンチコーチは日本ではあまり馴染みのない役職だと思うが、MLBではすべてのチームが置く重要なポジションで、コーチ陣の中で最上位に位置するコーチだ。普段は監督の補佐役として副参謀を務め作戦を決める上でのよき相談者となり、また監督に不測の事態が起こった際は自ら指揮をとらねばならない。1990年代後半から監督してヤンキースの黄金時代を築き上げたジョー・トーリ氏は、自身の下で長年ベンチコーチを務めたドン・ジマー氏を「精神安定剤」と評しているほど、監督にとって欠かせない存在なのだ。

 作戦面ばかりではない。監督と選手たちとの間に入り、監督の考えがチームに浸透するように常に選手たちと交流し、チームのまとめ役も担っているのだ。ある意味で監督の評価を影から支えている存在といっていいだろう。

 これまで岩村明憲選手、川崎宗則選手の取材でレイズ、カブスでマルティネス氏と接する機会を得たが、とにかく選手たちから愛される人物だということが解った。我々メディアにも気さくに接してくれるナイスガイだった。マドン監督は選手同士の時間を大切にし普段はあまりクラブハウスに顔を出さないタイプだったが(あくまでメディアが入室できる時間内でのことだが…)、その代わりマルティネス氏は多くの時間を選手たちと過ごし、常に彼らとの対話を絶やすことがなかった。今考えてみても、選手たちのよき理解者であり理想的なベンチコーチだったと思う。

 マドン監督はそんな最高の相棒を失い、今シーズンから一塁コーチだったブランドン・ハイド氏がベンチコーチを引き受けることになった。同氏はマーリンズやカブスでもベンチコーチの経験があり実績は申し分ないが、もちろん人物が違うのだから性格や対応も違ってくる。マルティネス氏とまったく同じというわけにはいかないだろう。

 このオフにはダルビッシュ有投手をはじめ投手陣の補強に成功し、カブスが今シーズンも地区制覇の最有力候補に上がっている。また選手たちを盛り上げプレーに集中させるマドン監督の人心掌握術も健在だ。しかしそれを現場で取り仕切っていたマルティネス氏はもういない。長いシーズンは様々なことが起こるものだ。果たしてマドン監督はマルティネス氏抜きでどこまで選手をまとめていけるだろうか。今シーズンの采配ぶりが気になって仕方がない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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