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23年ぶりに復活するリリーフカートはこのままMLBに浸透していくのか?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
今シーズンからダイヤモンドバックスが採用するリリーフカート(チーム提供)

 ダイヤモンドバックスは現地6日、今シーズンから本拠地球場でブルペンから交代投手を運搬するリリーフカートを導入することを明らかにした。

 チームが発表したニュースリリースによれば、ダイヤモンドバックスのみならず両チームの投手をカートで運搬する予定だ。もちろん今シーズンから同チームに加入した平野佳寿投手も登板する際はカートに乗って登場することになる。

 チームのデレック・ホール球団社長は数年前からリリーフカートの導入を検討していたようだが、球団創設20周年を迎える記念すべき年に正式採用を決めたようだ。

 MLBリリーフカートが登場したのはインディアンズが導入を決めた1950年のこと。その翌年にホワイトソックス、さらに1955年にアスレチックスが採用を決め、1960年代以降はMLB全体に浸透していった。しかし1995年を最後にブルワーズがサイドカー付きバイクでの投手運搬を廃止したことで、リリーフカートはMLBの球場から姿を消していた。

 ということで、ダイヤモンドバックスが正式採用したことで23年ぶりにMLBの舞台にリリーフカートが復活することになったのだが、まだまだ他チームにも波及していく可能性がある。このオフは各地でリリーフカートの復活が囁かれていたからだ。

 すでに本欄でも報告しているが、今シーズンから新しい時短ルールが採用されることになったためだ。その中には投手交代から投球を開始するまでに制限時間の設定が含まれているのだ。

 現在レイズの本拠地球場の『トロピカル・フィールド』以外、残り29球場はすべてブルペンが外野に設置されている。昨シーズンまでは投手自らブルペンからマウンドまで移動してきたわけだが、制限時間が設けられるとなればその移動時間もカウントされてしまう。移動が遅くなれば交代した投手のウォーミングアップ時間が削られてしまうし、急いで移動しようとするとマウンドに到着する前に投手に無駄な労力を使わせてしまう可能性がある。

 もしダイヤモンドバックスがリリーフカートにより時短ルールに合わせて効率的に投手を運搬できることが判明するようなことになれば、やはり他のチームも導入に踏み切る方向にシフトしていくことだろう。いろいろな意味で球界全体から注目される存在になる気がしている。

 果たしてMLBにリリーフカート全盛時代が再び訪れることになるのか?今後も注目していきたい話題になりそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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